ユニバーサルミュージックの秘書の才覚「私にしかできないことを!」vol.04

所属アーティストAIが2008年に発表したシングルに「大切なもの」がある。  常に変わらぬひたむきさを持つ身近な存在に気づき、勇気づけられ、優しさや笑顔を取り戻していく作品は、AIの所属するレコード会社、ユニバーサルミュージックのレーベル担当デスクがモチーフになった。  そのデスクがユニバーサル ミュージックの藤倉尚社長の現秘書、菊池仁奈さんである。目立たず、でも情熱を持ち働く菊池さんの姿に、AI自身が勇気づけられていた。

社長 兼 最高経営責任者 藤倉 尚(写真右) 経営推進本部 秘書グループ マネージャー 菊池仁奈(写真左) キティ・エンタープライズから合併統合によりユニバーサル ミュージックへ。邦楽レーベル・ユニバーサル シグマのデスクから2014年、正式に秘書グループに所属。

時間、感覚を共有する秘書

菊池さんがモチーフになったAIの「大切なもの」 2008年、ライブや楽曲制作でハードなスケジュールをこなしていたAIは、当時ユニバーサル シグマのデスク担当で、堅実に、音楽への愛情をこめて働く菊池さんに勇気づけられたことを、歌詞につづった。

「人を愛し、音楽を愛し、感動を届ける」
 2014年1月、藤倉氏が社長就任とともに明確にしたメッセージだ。その藤倉氏と菊池さんは、14年にわたり会社の大きな変化やビジネスモデルの変遷、時間を共有してきた。
 外資系レコード会社最大手のユニバーサルは合併統合を重ねてきた。1990年代にポリドール、マーキュリー、キティなどが合併。2000年にはユニバーサル ビクター、'13年にはEMIミュージック・ジャパンと合併。ザ・ビートルズもザ・ローリング・ストーンズも、ユーミンもドリカムも扱う“王国”に成長した。
 '00年に元マーキュリーの藤倉氏は元キティの菊池さんと同じレーベル(部門)で働くことに。レコード会社はエンタテインメントを売るビジネス。アーティストに関わる仕事は華やかに見えることも多い。そのなかで菊池さんは「佇まいも仕事ぶりも堅実」な印象だった。一方、菊池さんは藤倉氏に「そこにいるだけで、職場の空気を明るくしてしまう人」という第一印象を持った。
 そして菊池さんが秘書になったのは'14年。藤倉氏が社長に昇格した時である。

会社も秘書業務もエンタテインメント

レコード会社ゆえ社長はアーティストと会う機会も多い。
 来日したオノ・ヨーコに藤倉社長が会う際のプレゼントの品に、菊池さんは黒い扇子を用意し、とても喜ばれた。テイラー・スウィフトの来日時はティアラだった。テイラーは「ユニバーサル ミュージック ジャパンの社長は素晴らしい!」と喜び、藤倉社長への信頼度が高まった。
 菊池さんの持つ感覚のよさや配慮が、そのまま会社のイメージにつながることもある。
「扇子は、京都のものです。ティアラは、プライベートファッションもとてもお洒落な方なので似合うと思い用意しました。プレゼントはオーソドックスなお菓子などはもちろん、TPOに合わせてちょっと変化球的な品を選ぶこともあります」
 秘書が社長の仕事の一部を請け負っている好例である。
 また、藤倉社長はミーティングや作品の試聴、コンサート現場の訪問など多忙を極める。社長がいかに効率よく時間を使うことができるのかを工夫するのも、菊池さんの腕の見せ所だ。
「スケジュールについては常に考えています。ライブを訪れることは、社長にとって活力のひとつでもあります。アーティストとファンの方がつくりだす空間を実際に見るだけではなく、会社にとって大切なゲストがいらっしゃる大事なビジネスの場でもありますから。スケジュール調整には、ジグソーパズルを完成させるような喜びがあります。でも、私があまりにも隙間なく埋めてしまって、さすがに藤倉自身の時間がなくなってしまうことがあり、反省しています」
 ビジネスとプライベートに境界線をもうけない。それが菊池さんの仕事のスタイルだ。
「コンサートを観るのはもちろん仕事でもありますが、純粋に楽しんでもいます。通勤途中や街中で弊社のアーティストの楽曲が流れているのを聴くことがあると嬉しいです。同じように、プレゼントのセレクトやスケジュール管理といった仕事のなかにも、エンタテインメント企業らしさを忘れないように心がけています」


Text=神舘和典、上阪 徹 Photograph=星 武志、岡村昌宏

*本記事の内容は14年8月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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