冨山和彦、髙嶋郁夫、滝川クリステルの自己改造

ゲーテ連載人による

冨山和彦 

当時32歳。アメリカ留学帰りのコンサルタントに、ゴリゴリの現場仕事が任されることになった。
人はインセンティブと性格の奴隷、と怜悧(れいり)に見つめるのも、この時の経験があってこそ。

 留学から戻った年、大阪の携帯電話会社の立ち上げ実務支援にアサインされました。その会社の幹部は、出資している複数の伝統的大企業からの出向者。繰り広げられていたのは、まさに半沢直樹的な社内政治ドラマで、物事が何も決まらない。僕の話は誰も聞かない。戦略構築者として、どうすれば物事を前に進められるか苦闘の日々でした。この頃、毎夜藤沢周平や池波正太郎を読んでいます。主人公が家族と藩命の板挟みに苦しむ姿は会社運営と同じ。いつの世も変わらないと思いました。そこで“MBA帰りのインテリ”がとった行動は、たばこ部屋に通い、飲み会は三次会まで絶対に付き合って彼らの本音を知ることでした。一方、現場は中途採用者や若い派遣社員。彼らなしでは、実際には何も動きません。代理店構築の営業に同行して一緒に靴をすり減らし、休日も遊園地などに一緒に遊びに行きました。後に産業再生機構で再生の修羅場をくぐれたのは、この経験が大きかった。

 2014年は中国語かスペイン語をマスターしたい。言語には文化の投影がある。相手の思考の本質を知るにはその母国語を理解することが絶対的に有効だと、交渉の経験で痛感しています。

KAZUHIKO TOYAMA
経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO。スタンフォード大学でMBA取得後の、コーポレートディレクション時代の話。後に同社社長就任。


髙島郁夫 

起業後、ギラギラした社交に顔を出していた頃。ストライプのスーツは「もう持ってない」。
ハワイにて。トライアスロン、サーフィンに目覚め、Tシャツが似合う肌の色と身体になった。

 大学を卒業し、長男としていずれ地元に帰ろうという思いもあり、福井本社のマルイチセーリングに入社。大阪での営業職にも飽きた頃、「一度は東京に行くか」と異動希望を出したんです。東京で自分の今までの仕事は“家具屋”であって、“インテリア”が何かを知り愕然としました。そこで上司に頼みこんで、仕事にかこつけてミラノサローネに行かせてもらったんです。さらにパリ、ニューヨークと出かけ、展示会視察だけでなく、時には上司をまいて(笑)現地で遊び、センス磨きに勤しみました。これが僕にとっての自己改造かな。
 起業後は経営に専念してギラギラした社交にも顔を出していましたが、世界中を自分の足で歩き、センスを磨く労力は惜しまなかった。そうして培った感覚や経験をアウトプットしてもいいかな、と思うようになったのが、40歳の頃。それがAGITOやライフスタイル事業へと発展していったと思います。
 2014年は58歳。若い連中と同じトレーニングをするより、今の自分がやるべきは体幹を鍛えることだと思うんです。だからヨガをやろうかと。体幹と呼吸を整えてこそ、新しい発想が生まれる気がするんですよね。

FUMIO TAKASHIMA
バルス代表取締役社長。13年はメルボルンでアイアンマンレースに初出場し、完走を果たす。現在は香港在住で日本や各国を飛び回る。


滝川クリステル 

スタジオでの仕事には誇りを持っていたが、忙しすぎて自分から行動を起こす余裕はなかった。
アリスに背を押されるように愛護活動を開始。「Everchris」初のデザインのヒントは、迷子札。

 2013年、以前から計画していた動物愛護活動「プロジェクトゼロ」を開始しました。名前は動物虐待ゼロ、殺処分ゼロの祈りを込めたもの。啓蒙イベントのほか、私がデザインするアクセサリー「Everchris」の販売収益を全額、きちんと収支報告してくれる動物保護団体に寄付する仕組みを作ったのです。
 こうしたライフワークを始めたのは、フリーになってスタジオを飛びだし、世界中を歩くなかで生物多様性の重要性を実感したからです。特に、動物たちの悲惨な問題はあまり目を向けられず放置されている。動物も植物も人間も、生命は共生しているのに。誰もやらないのなら、自分がやろうと決意しました。
 共生といっても難しい話ではなく、活動報告には、殺処分を逃れた犬が訓練を受け、慢性的に不足している聴導犬・セラピー犬として活躍する例もあります。私自身、被災地から迎えた大切な家族アリスに、たくさんの思いやりや勇気をもらいました。信じる道を進んだ結果、その先にある出会いが、私を変えてくれたのかもしれません。
 2014年は、オリンピックに向け、英語とフランス語をブラッシュアップさせ、さらなる素敵な出会いに備えたいと思います。

CHRISTEL TAKIGAWA
幅広い活動のなか、生物多様性を守るための啓蒙活動、動物愛護活動に尽力する。詳しくはhttp://ameblo.jp/takigawa-christel/まで。


Text=上阪 徹(冨山、宮本)、今井 恵(髙島)、藤崎美穂(滝川)

Photograph=有高唯之(冨山)、TOMMY(髙島)
*本記事の内容は13年12月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい