モーターショーの"ツウ"な楽しみ方「ZF」編~吉田由美の世界のクルマ見聞録⑫

女性カーライフエッセイスト・吉田由美は、日本列島だけでなく世界中のさまざまな国にひとりで飛び、クルマの最先端を肌で感じ続ける"現場主義者"である。ゲーテWEBでは『吉田由美の"世界のクルマ"見聞録』と題し、彼女が実際に現地に出向き「見て、聞いて、乗って、感じた」ことを独占レポート。第12回はモーターショーのツウな楽しみ方「ZF」編


サプライヤーを見れば、クルマの未来がわかる!?

2019年も残り1ヵ月弱。今年をもろもろ振り返ってみるとまだまだ世の中に出していない、取材での面白いお話があるのですが、インプットが膨大すぎて私のアウトプットが追いついきません……。

そんな中のひとつで、今年9月に開催されたドイツ・フランクフルトモーターショーの時の話。私は今回のフランクフルトショーは、アウディの試乗会の流れで行きましたが、ショー会場ではアウディ関連のインタビューがなくてフリー。とはいえ、異国ではメーカー広報さんが誰が来ているかもわからないので、使用したのがFacebookの力。そこに「フランクフルトショーに来ています。現地にいらっしゃる方は連絡してください」というメッセージを載せたところ、連絡をくださったのがドイツの大手トランスミッションなどのサプライヤー「ZF」のコーポレットマーケット・バイスプレジデント稲蔭洋一さん。

しかもFacebookでもともとお友達だったわけではなく、共通のお友達がいただけ。でもこの稲蔭さんの勇気ある(?)行動のおかげで、私は最新ZFのお話を聞けることになったのです。しかも日本語で!(笑)

自動車メーカーなどに比べると「ZF」という社名や仕事内容もご存じない方も多いかもしれません。モーターショーに出展していても、サプライヤー(部品を供給する会社)は自動車メーカーとは違う場所のことも多く、会場が混んでいたり、会社のことを知らないとなかなかそこまで足を運べないのが実情です。しかし、実は‘ツウ’の方やクルマ好きにとっては、こちらのほうが重要だったりするのです。なぜなら……「サプライヤーを見ると、次にどんな技術が車に搭載されるかがわかるから」です。

「ZF」のコーポレットマーケット・バイスプレジデント稲蔭洋一さんと私。

ちなみに「ZF」といえば、ドイツの大手サプライヤーで、主にトランスミッションなどで有名な会社。ちなみにトランスミッションとは、自動車を動かすためにエンジンからの力を車輪に伝えるための装置のこと。今年春には「12速ATを生産し、その工場を中国に開設した」という話や、「電気自動車用の新開発2速トランスミッションを発表」するなどがニュースになっていました。特に商用車でのシェアが高く、乗用車でも2015年にアメリカの世界有数の自動車部品メーカー「TRW」を買収し、現在は安全運転関連のシステムを開発・製造なども行っているようです。

スカイラインやBMWの先端技術も

稲蔭さん曰く「動くもの全部に関わるものを作っています」とのこと。

「もちろん自動運転のためのコンポーネント(部品)も作っていて、見る、処理する、指示を出すという作業を行っています。中でも注目は、3眼カメラ。先日、日産スカイラインに搭載されている"プロパイロット2.0"にも、BMW 3シリーズに搭載されている"ハンズ・オフ・アシスト"にも使われています」とのこと。

ちなみに「プロパイロット2.0」とは、高速道路上の複数の車線をナビ連動でドライブし、さらに同一車線内であればハンズオフ(手放し)運転が可能。しかも高速道路の車線の合流もできるし、ナビと連動して分岐や追い越しもできます。カメラ、レーダー、ソナー、GPS 、高精度地図データの組み合わせでリアルタイムに正確に情報を得ることができ、そこにドライバーモニターカメラで運転する人を監視します。

一方の「BMW3シリーズ」に搭載されている「ハンズ・オフ・アシスト」は、渋滞時(時速60㎞/h以下)で渋滞ということをクルマが検知したときに、手を放して運転してもOKです、という状態にしてくれます。

とはいえ、どちらも何かあればすぐドライバーが運転の主体となるので、そう油断するわけにもいきませんが。

この先進技術のキーになっているのが「Tri-Cam」という3眼カメラ。同時に長距離、中距離、短距離の広い範囲を検知し、現在、市販されているアプリケーションの中で最高のパフォーマンスを誇るとのこと。そこに「モービルアイ」の先進認知技術「EyeQ4」との組み合わせで最先端の高速道路での運転をアシストしてくれるそうです。

「ZF」の社名は、歯車工場の略

ほかにも「ZF」のブースには、ZFが提案するCo2排出量を減らすための電動化技術の展示、都市向け自動運転電気シャトルバス「ロボシャトル」、自動運転向けの次世代コックピットコンセプト「セーフ・ヒューマン・インタラクション・コックピット(SHIコックピット)」が展示されていました。展示方法はスケルトン(透明)にして仕組みをわかりやすくしたり、体験することもできます。

マニアックなサプライヤーの世界。しかし、覗いてみるとこれからの自動車の少しだけ未来がわかるかも。

ちなみに「ZF」の社名は、歯車工場の略で、会社も1915年にツェッペリン飛行船用の歯車メーカーとして創業したとか。今年のフランクフルトモーターショー期間中も、飛行船を飛ばしていたらしく、私もあと一日多く滞在していたら…(笑)。と言いつつ、数年前に日本でツェッペリン飛行船には乗ったことがありますが。

Yumi Yoshida
岩手県生まれ。カーライフ・エッセイスト。自動車評論家(日本自動車ジャーナリスト協会理事)。短大時代からモデルを始め、国産メーカーのセーフティドライビングのインストラクター経て「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の視点で自動車雑誌を中心に、テレビ、ラジオ、web、女性誌など広く活動中。3つのブログを展開し、中でも「なんちゃってセレブなカーライフ」は、ピーク時で1日約20万アクセスを誇る。持っている資格は、普通自動車免許、小型船舶1級、国内A級ライセンス、秘書検定、ECO検定、カラーセラピー。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本ボートオブザイヤー選考委員。


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