【玉袋筋太郎】ビジネスパーソンのためのスナックミシュラン<プロローグ③応用編>

全日本スナック連盟会長、玉袋筋太郎さんのスナック連載。前回のお店の選び方入り方に続き、今回は応用編として、店内でのママや常連さんとのコミュニケーションの取り方、スナックに欠かせないカラオケなどについて語ってもらった。  


ママで壁打ち

さてさて、店に入ってカウンターに座ってさ、カウンターの中にいるママは話しかけてくれるでしょ。そしたら、今度ママは自分の隣にいる常連さんに話をするよね。で、ママと常連さんが例えば、相撲の話をしてたとして、自分が相撲のこと知ってたらママに相撲の話をするのよ。常連さんんじゃなくて、1回ママを介すわけ。その壁打ちを繰り返して、そこから徐々に常連さんと話すようになるのよ。いきなり常連さんに話すのはダメね、向こうも構えちゃうからさ。

壁打ち理論を熱っぽく語る。

上級者は役になりきる

何年前だったか、山形のど田舎のスナック行ったわけ。前回も話したけど、当然旅館の浴衣で行って値踏みはされたよね(笑)。で、「どっから来たのー?」なんて、俺の顔がわからなかったみたいだから、ひとつ芝居してみようと思ってね。

「ママ、実はね、オレ、日本全国のパチンコ屋を回ってる流しの釘師なんだよ」って言ったのよ。そしたら、それまで俺のこと無視してた常連客のオヤジたちが、一斉に「どの店だ、何番の台だ」ってさ(爆笑)。その時点で、その日は俺の勝ちー! てね。知り合いの噺家さんなんか、5年も通っているスナックで郵便局員で通してたからね(笑)

インタビューは基本くつろぎながら。

歌には合いの手を入れて敵じゃないことを伝える

初めて入ったお店で常連さんが歌ってるよね。そしたら、歌に拍手すんのよ、「パン、パパン」とか「パンッパンッ、よっ!」とかね。そしたら、常連さんも「あいつ敵じゃねえな」と思うわけじゃん。常連からするとさ、「なんか外来種が入ってきちまったぞ」ってことだからね。それを手拍子することよって、敵じゃねえんだとわかってもらえると、こっちが歌うチャンスができてくるよね。そうしたら、こっちが歌う時に「さっき手拍子してくれたから返してやるか」と、向こうも手拍子を返してくれる。そうやって徐々に関係ができあがってくるよね。

「知らない人でも"パンッパンッ、よっ!"ってするのが重要なんだよ」

カラオケは潮目を見る

じゃあ、カラオケでどんな曲を歌うのかってなるよね。それは、お客さんの歌の流れを見るんだよ、リモコンの履歴でね。ああ、この店はこういう歌を歌っているのかってね。いきなり歌ったちゃダメだよ、EXILE(笑)。なんとなく曲の流れ、潮目を見るっていうかさ。

ちょっと一服。

安パイは昭和歌謡曲

履歴を見ても、古くて知らない曲ばかりだったり、年配のお客さんが多いってあるよね。でも、だいたい共通項はあるのよ。女の子だったら松田聖子とか山口百恵だとかさ。あの当時の夜のヒットスタジオでやっていたような昭和歌謡曲だったら知ってるからさ。要は'90年代以降のカタカナの曲じゃなけりゃいいよ。'90年代以降の曲は長いのよ、5分あるじゃん。昔の曲は3分半でしょ。野口五郎の「私鉄沿線」なんか、3分ちょっとで、ちゃんと起承転結入ってんのよ(笑)。そういうのは喜ばれるよね。

マイクで繋ごう 日本の未来

スピードラーニング効果

俺だって52だけど、地方に行ったら若いわけですよ。スナックには70過ぎのお爺ちゃんとかも多いからね。で、そこで違和感あるなと思いながら過ごすよね。お爺ちゃんやお婆ちゃんたちが、自分の知らない年代の曲を歌ってるわけだから。でも、通っているうちに段々鼻歌でそれが歌えるようになってくるんだよ。そうすると自分の心の中のiTunesのトップレートがどんどん増えてくる。そうやって聞き流しながら覚えていくことを、スピードラーニング効果と呼んでるんだけどね。その自分が知らなかった時代の歌を覚えられるってさ、ドラクエで呪文を覚えていくのと一緒なわけですよ。最初はホイミだけど、何回か通っているとベホマズンとかいけるわけよ(笑)。

スピードラーニング効果でベホマズン???

部下と行くスナック

そうやって馴染みのスナックが出来たら、部下を連れて行ってほしいよね。スナックがナイトビジネスの真ん中じゃなくなってから、失われた何十年ってあるんだけどさ。それって、上司が部下を連れて行かなくなった何十年なんですよ。例えばさ、部下を連れていってさ、会社では威張ってんだけどさ、ママには頭上がんないとこを部下に見せるってのはさ、上司が部下に「俺は威張ってるだけじゃねえぞ」ってさりげなく見せてくれるってことだと思うんだよ。会社じゃ威張っているけど、ママにも頭上がらないし、常連のオジさんにも頭上がんないだ、ということを、言葉はなくても態度で見せると部下も「上司も人間だね」ってなるわけだよね。そういう、部下と上司のパッキン的な存在でもあったと思うんだよね、スナックって。

スナックは、部下と上司のパッキン的な存在。

下戸でもいい、人間観察の宝庫

あと、お酒が飲めない人でもいいと思うよ。店からすれば、席をあけとくよりいいだもん。うちのお客さんでもお酒飲めない人いるしね。雰囲気が好きだとか言ってくる人もいるよ。逆にシラフだからいろいろんなことを観察できるから羨ましいよ。だって、スナックは人間観察の宝庫だもんね。

スナックってさ、自分に起こった嫌なこととかさ、悩みとか、心に刺さったトゲを抜いてくれる感じがあるんだよね。

「俺なんか3回会社潰してるぞ、そんなことどうってことねえよ」とか。「俺は3回離婚してるぞ」とかね。

ママだけじゃなく、お客さんにも人生の経験者が多いし、そういう人の話の聞き手として行くだけでもおもしれえとこなのよ。

「スナックは、心に刺さったトゲを抜いてくれる場所なんだよ」

※次回からは『玉袋筋太郎のスナックミシュラン』本編を開始します。全日本スナック連盟会長である玉袋さんがお薦めのスナックを電撃訪問。ママと会話をしながら、① MAMA(ママのキャラ、接客、聞き上手度) ② SEAT(内装や雰囲気) ③ FOOD&DRINK(お酒やつまみ) ④ HISTORY(スナックをやる経緯や思いなど) ⑤ SOUND(カラオケ時の店の雰囲気、チーママのノリなど)など、各項目ごとに★の数で評価を下します。

Composition=河合昇平(コレロ) Photograph=吉田タカユキ



玉袋筋太郎
玉袋筋太郎
1967年6月22日、東京都新宿区生まれ。実家はスナック。高校卒業後にビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。社団法人全日本スナック連盟会長も務め、『浅草キッド玉ちゃんのスナック案内』などの本を手がける。
気になる方はこちらをチェック