欧米の新常識!「パットイズマネー」より「飛距離イズマネー」

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム80回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

パターよりドライバーの腕を磨け

スコアアップのために最も必要なスキルは何か。これはプロ、アマ問わず頭を悩ます問いだろう。どんなに素晴らしいショットを打って、絶妙のアプローチでグリーンにのせても、パットが入らなければスコアはまとまらない。「パット・イズ・マネー」という言葉がある通り、パッティングが最も重要だと思っている人が多いのではないだろうか。実際に「パッティングの精度を磨けば、スコアはよくなる」と教わった人も多いだろう。

ところが近年の欧米ゴルフ界では、ドライバーの飛距離を伸ばすほうがスコアを縮める近道であるということが常識となっている。これは、米コロンビア大学ビジネススクールのマーク・ブローディー教授の研究で、2014年、「ゴルフデータ革命(原題 Every Shot Counts)」という著書で発表した。

ブローディー教授は、2003年から2012年までの米PGAツアーのほぼ全ショットを分析。ドライバーからパターまで、どのクラブを使ったショットが、どの程度スコアに貢献しているかを数値化する方法を開発した。現在PGAツアーでは「ストロークスゲインド(SG)」という新しい指標として導入されている。

その結果わかったのは、PGAツアーに出場した選手のスコアに対しするパッティングの貢献度は平均して約35%。トップ40の選手に限れば、約15%でしかなかった。つまり、パットではスコアにあまり差が出ず、よりよいスコアを出すには、ドライバーやセカンドショットなどパット以外のショットのほうが重要だということだ。「規定打数の半分はパットだからスコアに直結するのはパッティングである」というロジックは崩壊し、「パットイズマネー」という格言は「ショットが飛んで曲がらない場合」という前提条件が付くものとなった。実際にPGAツアー2018-19シーズンのSGパッティング上位10 人のうち、シーズン終了時にワールドランキング40位以内の選手は0人、100位以内の選手もわずか4人だった。

一方で平均ドライビングディスタンス上位の選手には、ドライバーの1打当たりのスコアに対する貢献度も高いという傾向が見られる。つまり、ドライバーを飛ばせば、スコアがよくなる可能性があるということになる。確かに、世界ランキング1位のローリー・マキロイ(平均313.5Y、2018-19シーズン2位)、2位のブルックス・ケプカ(309Y、2018-19シーズン10位)、5位のダスティン・ジョンソン(312Y、2018-19シーズン4位)など飛ばし屋といわれる選手が上位を占めている。ブローディー教授の研究結果を裏付けるように、それらの選手は際立ったパター巧者ではないが(2018-19シーズン・SGパッティング、マキロイ24位、ケプカ48位、ジョンソン74位)毎年優勝を重ね、安定して上位に顔を出している。

ボールを飛ばせばスコアも上がる

スコアやパーオン率、パット数などの今まで用いられてきたデータに代わって、ストロークスゲインド(SG)という新たな指標が用いられることで、ツアープロは自分のラウンドを自身の主観ではなく、「1打当たりのスコアに対する貢献度」という客観的な数字で分析できるようになった。実際に多くのPGAツアー選手が専門家を雇って自身のラウンド分析を行っている。私もクライアントのラウンドでSGの分析することがあるが、今まで本人が気づかなかった強みや弱点が明らかになることが多い。

さて、飛距離の伸びとスコアの関係について、ブローディー教授は膨大なデータをもとに興味深い結論を導き出した。それは、PGAツアーのプレーヤーは飛距離が20ヤード伸びると、1ラウンド当たりスコアが「0.75打」縮まるというものだった。20ヤード飛距離が伸びると、短い番手でグリーンを狙うことができるため、パーオン率やピンに近寄る確率が高まりスコアが縮まるのだ。

スコアの波の大きいアマチュアだと「0.75」という数字にはピンとこないかもしれないが、1打を争うプロにとっては「0.75」は大きい。3ラウンドで2打、4ラウンドで3打違ってくるのだから、明らかに飛ばすプレーヤーのほうが有利ということになる。

「飛んでも曲がったら意味がない」と思う人がいるかもしれないが、飛距離を出すためには理にかなったスイングをしなければならない。適切なプロセスでスイング構築をすれば、飛距離を追求する過程でスイングも洗練され方向性も高まる。力任せにクラブを振っても、ボールは飛んでくれないのだ。

アマチュアの場合は飛距離が伸びることで、プロ以上に恩恵を受けるという。アマチュアがラウンドするコースはプロよりもラフが短いため、多少のドライバーショットの曲がりが許容される。そして、ドライバーで20ヤード飛距離が伸びた場合のセカンドショットを想像してみてほしい。パー4のセカンドショットが7番アイアンから9番アイアンになれば、グリーンオンする確率は大きく違ってくるだろう。グリーンに乗らずアプローチやバンカーでトラブルになるより、グリーンに乗せることができれば2パット、悪くても3パットでおさめることができる。

スコアアップを目標とするゴルファーは、飛んで曲がらないドライバーショット打つために、どのようなスイング技術が必要なのかを考えてみてほしい。

Text=吉田洋一郎 Photograph= 松川 忍  Cooperation=取手桜が丘ゴルフクラブ

吉田洋一郎
吉田洋一郎
欧米のゴルフスイング理論に精通するゴルフスイングコンサルタント。世界4大メジャータイトル21勝に貢献した世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターを2度にわたって日本へ招聘し、世界一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。また、欧米の一流インストラクター約80名に直接学び、世界中のスイング理論を研究。海外ティーチングの講習会、セミナーなどで得た資格は20以上にのぼる。シングルを目指すアマチュア、トップアマ、ツアープロまでアスリート志向のゴルファーを指導。2019年ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。
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