1億円超えのクラシックポルシェで被災地支援ラリー【吉田由美の世界のクルマ見聞録⑰】

カーライフエッセイスト・吉田由美は、日本列島だけでなく世界中のさまざまな国にひとりで飛び、クルマの最先端を肌で感じ続ける"現場主義者"である。ゲーテWEBでは『吉田由美の世界のクルマ見聞録』と題し、彼女が実際に現地に出向き「見て、聞いて、乗って、感じた」ことを独占レポート。第17回は、クラシックポルシェで参加した東日本大震災の復興イベントについて。

上品な1957年式「ポルシェ356スピードスター」 

春の足音がぐっと近づいてきた日、茨城県ひたちなかで開催された「プロスペクト・アベニュー・クラシック2020」に参加してきました!このイベントは東日本大震災の復興支援イベントとして、2012年から開催。年に1~2度ほど行われ、今回で10回目。ひたちなか周辺は東日本大震災の際に津波被害をうけたもののあまり報道されず、被災直後でも支援物資が届かなかったり、来てくれるボランティアの数も少なく「忘れられた被災地」と言われていたそう。

そんな時に始まったのがこのイベント。地元で特別養護老人ホームなどを経営する「森田記念会」の森田隆先生が声を上げ、地元の人たちを少しでも元気づけようと当初はクラシックカーのパレードで始まり、その後は毎回コースを変えてラリー形式になったそう。参加条件は1990年より以前に販売された車。会場の都合があり、今年選ばれた37台+賞点外の車の1台でひたちなかを駆け抜けました。と言ってもこのイベントはスピードを競うのではなく、いかに設定されたタイムに近く走ったり、ゴールできるか。しかも一般道を走行するので、信号待ちや渋滞も考慮され、さらに法定速度内、しかし安全に楽しめます。

今回私は、このイベント開催当初から後援と取材を続ける、元カーグラフィック編集部K氏にお声がけいただき参加することに。これまではもう少し早い時間からスタートしていたそうですが、今回は一日の中でも一番気温が高いお昼前後に開催。朝11時のスタートです。今回、私が乗ったのは艶消しオレンジのボディカラーがとても上品な1957年式「ポルシェ356スピードスター」。事前に「オープンカーに乗るので温かい服装で」という連絡がありましたが、まさかこんなに素敵な車とは!

この車は主催する森田先生のコレクションの中の一台で、ポルシェワークスが開発用に使っていた貴重な車。エンジンは356最終型をワークスが使っていたそのままの状態でレストア。130馬力とのこと。そして聞きたくなるのがお値段。おそらく1億円以上ではないかと!?

安全運転に務めます!(笑)

ほかには森田先生が1960年のポルシェ356スパイダーで参加するほか、ポルシェ8台、MG3台、トライアンフ2台、オースティン・ヒーレー2台、ロータス5台、ボルボ2台、AMC1台、ジャガー1台、VW4台、マセラティ1台、アルファロメオ1台、メルセデスベンツ2台、サーブ1台、バンデンプラ1台、ケータハム1台、バンデンプラ1台、日本車もトヨタ2000GT、ホンダS800、いすゞ117クーペ、などなどいろいろな車種が大集合!

ちなみに参加車両で最も古いのは1950年式「ヒーレー シルバーストーン」。お値段は2億円という声も!? すでに販売していないお宝車ばかりなので、程度の良いクラシックカーは希少性が高く、お値段も高いのです。

そして私は今回、ドライバーではなく、助手席でコマ地図を見ながら道案内をする「コドライバー」役。当日に地図を渡され、そこには目的地までの距離と目印が表記されているので、それをドライバーに伝えながら目的地を目指します。しかも、これを競技にするため、いくつかに分けた通過地点までの時間をそれぞれ計測。設定タイムに近い人が勝ち。途中、一か所の時間調整のポイントと、スタンプを押してもらうポイント、設定速度と時間を計測するセクションもありました。

今回のコースはスタート間もなく美しい海沿いの道でしたが、かつて津波で大きな被害を受けた場所でもあり、まだ所々から傷跡が伺えます。しかし、そこから立ち上がって人々の生活が営まれている、そんな光景が拡がり、胸が熱くなります。そして街のあちこちで手を振ってくれたり、カメラを構えて応援してくださる人たち……。

スタンプポイントは「森田記念会」の老人ホームでしたが、寒い中、入居しているおじいちゃん&おばあちゃんたちが笑顔で手を振りながら迎えてくれたのにまたまた胸アツ。その時、スタンプと一緒にいただいたのが「干し芋」でした。ひたちなか市の特産品だそうですが、そういえば街中にたくさんの石像があり、その中に「干し芋」の石像が!なるほど、こういうことでしたか(笑)そして私たちが乗った4号車は、約110㎞を約3時間15分で走り、なんと6位入賞を果たすという快挙!これには当の私たちがビックリ!ここだけの話、私たちは時間を気にせず、ミスコースだけはしないように走行し、さらに1か所、コンビニによるという……。

しかしむしろそこでの時間調整がピッタリだったようで、これのおかげで設定タイムに近い状態でゴールできたよう。ある意味、これも私のタイムマネージメント力!(笑)実は私、めちゃめちゃ晴れ女なのですが、今回はオープンカーで、しかも数日前まで雨予報だったのが直前には暖かな曇りの予報に変更。この時期にしては温かく直射日光の被害も受けないまさにオープンカー日和に。6位の入賞商品はワイン。3位以上の入賞者は、それに加えて老人ホームのおじいちゃん&おばあちゃんが作ってくれたカップとネズミ年にちなんだ手作りのネズミのぬいぐるみ。

今年は第10回記念ということで、ラリー終了後には懇親会も開催されましたが、リピーターの方がほとんど。こういうイベントにしては参加費がリーズナブルということもありますが、(ほとんど費用に関しては「森田記念会」が福利厚生として負担)、スタッフも森田記念会&ボランティアスタッフで行っているそう。

手作りでとても素敵なイベントなので、リピートしたくなる気持ちがわかります。クラシックカーで誰かを勇気づける、こういう形で誰かのお役に立てるなんて素敵!これからも続けてほしいイベントです。実は、少しだけこの「ポルシェ356スピードスター」を運転してしまいました!第一印象は「ハンドルが細い!(笑)」。そしてポイントはクラッチとアクセル。サイドブレーキを外すのもかけるのにも気を使いますが、でも走り出すとエンジン音に癒されます。1957年の世界を今、こんなに快適に体験できるなんて素敵すぎます。皆さん、ありがとうございました!


Yumi Yoshida

岩手県生まれ。カーライフ・エッセイスト。自動車評論家(日本自動車ジャーナリスト協会理事)。短大時代からモデルを始め、国産メーカーのセーフティドライビングのインストラクター経て「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の視点で自動車雑誌を中心に、テレビ、ラジオ、web、女性誌など広く活動中。3つのブログを展開し、中でも「なんちゃってセレブなカーライフ」は、ピーク時で1日約20万アクセスを誇る。持っている資格は、普通自動車免許、小型船舶1級、国内A級ライセンス、秘書検定、ECO検定、カラーセラピー。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本ボートオブザイヤー選考委員。