ザ・リッツ・カールトンに「すし匠」誕生 江戸前鮨職人、最高峰がハワイに降り立つ理由

今秋、あの「すし匠」が、ハワイにオープンする。江戸前鮨を極めた職人が挑む、ハワイでの新たなステージとは。

江戸前鮨の“最高峰”、ハワイ進出の勝算

いよいよ完成! その全貌とは? ザ・リッツ・カールトン・レジデンス ワイキキビーチはカラカウア通り沿い、ラグジュアリー・ロウに隣接。38階建てのホテル・コンドミニアムは、全室オーシャン&パークビュー。

 ザ・リッツ・カールトン・レジデンス ワイキキビーチ、工事が終わったプールサイドに佇む、鮨職人。江戸前鮨の最高峰ともいわれた四谷の「すし匠」がこの秋、ハワイのリッツ・カールトンに誕生する。店主の中澤圭二氏は東京とハワイを往復する日々だという。

 「鮨は本来職人の世界。しかし、最近では高級素材を競い合って仕入れどれだけ贅を極めるか、ビジネスとしての風潮が強くなってきた。一億総グルメ化が進み美食の戦場となった東京でこのまま仁義なき戦いに身を投じるのか、それとも後進に夢のある仕事だと背中を見せるのか。今後を考えた時に後者を選び、挑戦を決めました。ハワイ行きも含め、手に職をつければ可能性が広がることを若い職人にも示したかった」と中澤氏。

魚と同じように鮨職人にも旬がある

 鮨への情熱は人一倍。知識や技術はもとより、お客様に対してのもてなしや気遣いまでも惜しみなく伝承し、優秀な弟子たちを数多く輩出してきた中澤氏らしい決断といえるだろう。

 「魚と同じように鮨職人にも旬がある。僕が思うに、35~45歳が一番脂がのっている時。謙虚で、元気があり、身体もよく動く若い子が握ったほうが旨いですよ(笑)。鮨はお客様の目の前で握る"さらし"の仕事。緊張を強いることなく、いかに気持ちよく食べていただけるかが肝心です。そうした鮨の本質の部分も海外に広げていきたい。僕も50代後半。何かを始めるにはこれが最後のチャンスだと思っています」

ハワイの「すし匠」のこだわりとは?

 8階ロビーフロアに展開される「すし匠」。カウンター10席の店内には、夜景が望める空間も確保。また「ハワイの魅力は風」と中澤氏が言うように、8つある窓を開放できるよう空間デザインにこだわった。肝心の魚についても調査に余念がない。

 「世界的な鮨ブームですが、流通システムが完全に確立しているため、シンガポールや香港、ニューヨークでも流行っている店はどこも日本の魚を使っています。このままのペースでは、将来的に日本人が日本の魚を食べられないほど高騰してしまう。活け締めに代表されるように、締め方や扱い方をもっと浸透させて、西海岸やヨーロッパの魚のレベルを引き上げれば日本の魚を使う必要はなくなります。ハワイでやるからにはハワイでしか食べられない素材で勝負したい。海外で旨い魚を探すこともやりがいになっています」

右腕となる最強のパートナーを帯同

 今回、中澤氏には右腕となる最強のパートナーが帯同(たいどう)する。ともにつけ場に立つのは、「西麻布 拓」の佐藤卓也氏。海外経験もある頼れる存在だ。

 「ぜひ参加したいと手を挙げました。西麻布でも海外のお客様は多く、こちらの意図をきちんと伝えれば江戸前鮨を理解して召し上がってもらえます」と自信のほどをうかがわせる。

工事中の「すし匠」で、理想の空間を追求するべく奮闘する中澤氏と佐藤氏。晴れの舞台の完成は間もなく。オープンの日を心待ちにしたい。

 「軌道にのるまでに半年はかかると見込んでいます。だから、お客様には来年になってから来ていただきたい(笑)。正直、現地で始めてみないことにはわかりませんが、日本では食べられない魚を日本で食べるのと同じくらい美味しい鮨にしたい」と、意気込みを新たにする中澤氏。

待望のオープンは目前。ハワイの食シーンを揺るがす名店の誕生を見守っていきたい。

中澤圭二(Keiji Nakazawa)
全国各地の鮨店で修業を重ね、1989年、二番町に「すし匠さわ」を開店、93年に四谷「すし匠」の暖簾を掲げる。現在グループで15店舗を展開。
佐藤卓也(Takuya Sato)
銀座「久兵衛」、六本木「蔵六鮨」、白金台「箒庵(そうあん)」と数々の名店で研鑽を積み、2005年に「西麻布 拓」を開店。ミシュラン二つ星を獲得し続ける。

Text=粂 真美子 Photograph=内田 恒

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