リヒターはなぜ"現代アーティストの最高峰"と呼ばれるのか?

現存する作家として、世界レコードの落札額を記録した過去をもつゲルハルト・リヒター。作品ひとつひとつに哲学が満ちているリヒター作品は、その難解さゆえにカルト的人気を誇る。彼が“生ける芸術の最高峰”に位置づけられる由縁を探る。


高額だが、手が届く巨匠

86歳を迎えた現在も精力的に作品を発表する一方で、すでに美術史のなかで"巨匠"と語られるゲルハルト・リヒター。旧東ドイツのドレスデンで生まれ、1960年代から活動を開始した。

「正直、リヒターほど、その魅力を具体的に言葉にしにくい作家はいません。彼は長い間、具象と抽象を行き来し、両カテゴリーの作品を並行して制作し続けました。そのため時代ごとに表現様式を当てはめることは難しく、作品ひとつひとつに、単純に読み解けない哲学が満ちています」

オークションハウス、クリスティーズの大胡 玄氏はこう語る。

どんな言葉も無力とさえ感じるリヒターの世界に、多くの美術ファンが虜になった。「なんとしてでも、リヒターの作品を手に入れたい」という想いが、オークションで高値を呼ぶ。2012年、エリック・クラプトンが所有していた抽象画が、生存する作家として最高額となる約27億円で落札され、世界的なニュースとなった。その2年後の’14年には、「AbstraktesBild」にクリスティーズ史上最高額の約36億円の値がつく。

超高額だが、リヒターは決して手の届かない巨匠ではない。

「小さいサイズの作品なら、1000万円以下で購入できます。ギャラリーは購入希望者が多く出品待ちの状態。オークションへの参加がお薦めです」

小さなサイズでも、そこはリヒター。画面からインテリジェンスの上澄みのみをすくったような、上質な刺激が伝わってくる。リヒター作品が「小さくても強い」と評されるゆえんだ。

「リヒターを所有すると、周囲の目も変わります。社交界で一目置かれる存在になり、海外の経営者と思わぬ交流が始まったという話も耳にしますよ」

Gen Ogo
1975年生まれ。クリスティーズ ジャパン ヴァイス・プレジデント シニア・クライアント・リレーションシップ・マネージャー。2004年クリスティーズ入社。アジア、NY、ロンドンの現代アートを担当。個人コレクターを中心に美術品全般の出品・落札に携わる。


Text=川岸 徹  All artworks: ©Gerhard Richter 2018(0247)