"新たな日産"をアピールする「新型キックス」の実力やいかに?【吉田由美の世界クルマ見聞録㉚】

カーライフエッセイスト・吉田由美は、クルマの最先端を肌で感じ続ける"現場主義者"。そんな彼女が「見て、聞いて、乗って、感じた」クルマの最新事情とはーー。 

リーフ以来、10年ぶりのニューモデル  

新型コロナウイルスは、自動車業界にも大きな影響を与えています。私たちメディアの人間が仕事のために試乗する「メディア試乗会」のスタイルも大きく様変わりしています。

少し前までは試乗会自体も開催されていませんでしたが、現在は車両のプレゼンテーションは事前にオンラインで行われ、資料がメールで送られてくることが増えてきました。しかし、やっぱり試乗ばかりは実際に乗らないことにはお話になりません。

これには各自動車メーカー、インポーターが趣向を凝らしているようです。

先日の日産「新型キックス」試乗会の場合は、受付時は検温とアルコール消毒、車内にもアルコールのボトルが用意されていました。そして、メディア試乗会の最大のメリットである、開発の方から直接お話を伺える時間も、工夫が垣間見えました。これまでは、大勢の開発者に囲まれることが多かったのですが、今回は人数を絞り、ソーシャルディスタンスを保った距離で行われました。

さて、新型キックス。このクルマは、日産が「新たな日産」をアピールするための重要なモデルです。なにしろ、日産の日本市場においては、リーフ以来、10年ぶりのニューモデル。このところ、暗いニュースのほうが印象に残りがちな日産ですが、この新型キックスに関しては明るいニュースにしたいはず。最大限に気合が入っているはずです。

なにしろ新型キックスは、人気が高かった「ジューク」の後継車であり、さらに人気の高いコンパクトSUV。キックスのカテゴリーは、ジュークから始まり、「ホンダ ヴェゼル」、「トヨタC-HR」、昨年末も「トヨタ ライズ」「ダイハツ ロッキー」「マツダCX-30」と魅力的なモデルが次々と登場し、今や人気のSUV市場の中でも4割以上がこのコンパクトSUVなのです。

しかし日産はこの「ドル箱」市場にも関わらず、2011年にジュークを発売して以来、そのジュークをフルモデルチェンジするどころか、新型のコンパクトSUVを投入することもなく、日本市場は寂しい感じが続いていました。なので、この新型キックスは日産ファンはもちろん、日産関係者も大注目のモデルであり、実は一番望んでいたのかもしれません。

ちなみにキックスは、実は海外では'16年から販売されているクルマで、メキシコ、チリ、台湾などではセグメントで1位のセールスを記録している超人気車。日本向けには、ノートやセレナで人気の「e-Power」の進化版を導入。ちなみに「e-Power」とは、電気自動車(EV)に近いエンジン車のこと。エンジンで発電機を動かし、モーター用の電気を作って走ります。簡単に言うと、ガソリンを使う「充電しなくていい電気自動車」という感じでしょうか。普段は蓄えた電力で走行し、必要になったら発電をして走行します。改良されたのは発電のタイミング。お陰で、ノートやセレナに比べて発電時のエンジン音が小さくなり、よりEVらしくなっています。

「e-Power」で特徴的なのは「e-Powerドライブ」と呼ばれる独特な運転フィール。アクセルペダルを戻すと強い減速感を感じる「ワンペダル感覚」は、フットブレーキいらず。3つのドライブモード、ノーマル/S(スマート)/エコのうち、Sモードとエコモードは特に減速感が強く、そのうえSモードはチャージもするけど加速もしっかりするモードで、燃費と走りの両方を叶えてくれます。はじめは違和感を感じるかもしれませんが、慣れたらこの運転感覚、クセになります。

先進安全装備も充実していて、「プロパイロット」が標準装備されています。「プロパイロット」はハンドルにあるスイッチが分かりやすく、操作も簡単。高速道路では「プロパイロット」のスイッチを押してから、速度や車間距離を設定すると、手軽に安全と疲労軽減を手に入れることができます。ほかに、あおり運転を受けた時にも、すぐに通報できる「SOSコール」が全車標準装備。デジタルの「インテリジェントルームミラー」はオプションです。

しかし、何と言っても新型キックスの魅力は見た目です。キックスのデザインダイレクターの入江慎一郎さんは「プロポーションは躍動感があり、室内の快適性も損なわないルーミネスプロポーションです。フロントは新しいVモーショングリルでダブルVモーションになっています。フロントグリルは、日本の伝統芸能の組み木からイメージ。ライトは薄型のフルLEDで、ハンサムになりました。リアもブーメラン型のLEDシグネチャーランプで、高級車と同じ手法。切り子タイプのグラデーションになっています」と説明してくれました。

細めのフロントライトのハンサム君、または、シュッとしたお醤油顔のイケメンということでしょうか?

内装はモダンでプレミアム。9インチのナビとキックス専用のe-シフトを採用しています。ボディカラーは全13色でそのうち2トーンが4色、モノトーンが9色。撮影車は新型キックスのコミュニケーションカラーの「プレミアムホライゾンオレンジ」とピュアブラックのツートーン。全13色。インテリアカラーはオレンジタンとブラックの2色。9インチのカーナビがレザーのインパネに組み込まれていて、なかなか高級感を醸しています。

試乗後、入江さんと話していたときに、デザイナーとしてのお仕事に関しても話を聞きました。クルマのデザインはもちろん、カタログなどの出版物、日産の新しいロゴ、そして、8月1日に横浜にオープンした「日産パビリオン」も担当されたそう。ほかにも先日、発売になった伊勢原市と日産のコラボ商品「新型カキノタネ」のパッケージもデザインされるなど、仕事は本当に多岐にわたります。

新型カキノタネ。
新ロゴ。

これまでの数年間、日産の日本への新型車導入は極端に少なかったのですが、裏方さんはずっと大忙しの日々。こういう方が報われるためにも、満を持して登場した新型キックスには期待したいものです!