中田英寿 本気ゴルフ やっぱりアスリート マインド・ゴルフが愉しい!

2011年ゲーテで"中田英寿 ゴルフデビュー"と題したゴルフ特集を企画。あれから4年近くが経ち、再び中田さんがゴルフと本気で向き合う。なぜ今ゴルフなのか。中田さんのゴルフに対する思いを探るとともに、沖縄・宮古島でのゴルフ合宿に密着した。

中田をゴルフへと向かわせた真の理由とは?

 4年ほど前に中田さんは、ゴルフほど思いどおりにできないスポーツはないと話している。プロサッカー選手として世界のトップで活躍した身体能力をもってしても、ゴルフには他のスポーツにはない難しさがあることを体感した。当時の企画では5日間で100を切るという目標設定のもと、ハワイでゴルフ合宿を敢行。結果は102と目標達成とはならなかったが、始めたばかりとは思えない内容のゴルフだった。実はその時から中田さんのなかには、本気でゴルフに取り組みたいという気持ちが芽生えていたのだ。

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  「あの企画の後もゴルフをやりたいという気持ちはありながら、日々の生活のなかでゴルフに本気に向き合うタイミングやきっかけがなかったんです」

 ゴルフといえば、どうしてもオヤジのスポーツという印象は今なお拭えない。中田さんのような存在がゴルフに本気で取り組んでくれることはゴルフ界にとっては明るい材料だが、中田さんのファンのなかにはゴルフだけはやってほしくなかったという声も聞かれる。それでも再びゴルフを本気でやりたいという理由は、ライダーカップという大会にあった。

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中田英寿の心を動かしたライダーカップとは?

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 ライダーカップとは2年に1度開催される米国ツアーと欧州ツアーの代表選手による対抗戦。賞金はないが、メンバーに選ばれることは最大の栄誉であり、プライドをかけた戦いが展開される。中田さんはこのライダーカップを生で観戦したことがあるというのだ。何万人もの観客の中でサッカーをしてきた中田さんでも、ライダーカップのギャラリーの多さには驚かされた。ギャラリーは大人はもちろん子供からお年寄りまで幅広く、世代を超えた人々に愛されていることを実感した。

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 現在、中田さんは全国を旅しながら、日本の伝統文化に触れ、それらを広める活動を行っている。そんななかライダーカップを観戦して、ゴルフも文化なんだと感じたそうだ。日本のゴルフの試合では考えられない多くのギャラリーが連日訪れて、選手の家族も一緒に戦う雰囲気がある。それは、今まで自身が持っていたゴルフへの印象が大きく変わった瞬間だった。

 4年前に本誌でゴルフに挑戦したものの、そのあとは時間が空いてしまった中田さん。実際、世の中もそんな人が結構多いに違いない。今、もう一度中田さんのように、本気でゴルフを再開してみてはどうだろうか。

プロコーチによる宮古島の特訓メニューで効果のほどは?

 沖縄・宮古島にあるシギラリゾートで行われた4日間のゴルフ合宿では、徹底的にアイアンの強化をテーマに掲げていた。というのも、中田さんのプライベートコーチを務める谷将貴コーチと取り組んでいるのが美しいスイングつくりだ。「見た目に美しいスイングというのは、それだけ無駄な動きがスイング中に入っていないということです」と谷コーチは言う。

 本格的にレッスンをスタートさせてから、徹底的に取り組んでいるのがアイアンによる腰から腰の小さい振り幅の練習だ。これはゴルフ用語でビジネスゾーンと呼ばれ、この振り幅での動きにスイングのすべてが集約されているといわれる。「サッカーでいえばサイドキックに似ていますね」と中田さんは言う。サイドキックはサッカーの基本ともいうべきスキル。中田さんはこの基本の精度をどこまでも高めて世界へと上り詰めた。大事なことは難しいテクニックではなく基本だということを体現してきた中田さんだからこそ感じるビジネスゾーンの重要性。だからこそ今回はアイアンの精度を上げることに目的を絞ったのだ。

 「練習場でできていることがコースではまったくできなくなるものです。ゴルフは上達が遅いスポーツといわれる所以(ゆえん)です」と谷コーチ。練習場ではある程度の精度で球を打てるようになっている中田さんだが、コースでできるレベルを測る意味もこの合宿には含まれている。そんな合宿中に中田さんが一般的なゴルファーとは違った感覚を持っていると思わされた瞬間があった。谷コーチはアイアン以外のクラブのレベルを測る意味を含めて、ドライバーの練習をした時のこと。広々としたコースを目の前にすれば、普通はドライバーで飛ばしたくなるものだが、今の自分に必要なのはアイアンでスイングを固めることだと中田さんは判断。ラウンドもドライバー抜きで行うことを提案したのだ。コースに出てドライバーを一切振らないという決断は、普通の人ならおそらくできないだろう。

(左)練習場ではマットなど直線的な目安があるのでスクエアにアドレスできるが、コースに出ると右に向く傾向がある。コースでの身体のスクエア感を身につけることは最重要項目。アドレスが間違っていると、どれだけよいスイングをしてもミスになる。
(右)ゴルフのスイングレッスンで「頭を動かさないように」という言い方がよく使われる。ただ、これを意識しすぎるとバックスイングで頭が下がる傾向がある。中田さんも無意識に下がるため、インパクトが安定しない点を合宿で修正した。

(左)トップから切り返しでダウンスイングに入る部分が最も力みが発生する箇所といわれる。ここで腕の力を使ってはいけないことを中田さんは早々に気づいている。あとは、その感覚をいかに高い確率で実践できるかが今回のテーマになる。
(右)フォローはインパクトでボールをヒットしたあとの惰性的なもの。ただ、身体の動きが間違っていれば振り抜きは悪くなるので、フォローでヘッドが効果的に走るような腕の使い方を覚える必要がある。今回、中田さんが最も激変したのはこの部分。

さて、特訓の成果やいかに・・・

 インパクトからフォローにかけて手首のコックをほどくタイミングを覚えてから、ヘッドが勝手に走るようになった。詰まり気味だったインパクトでヘッドが加速するので、軽く振っても今まで以上の飛距離が出せるように。スイングに無駄な動きがなくなった。

 結果、今回の合宿で中田さんはアイアンの精度を劇的にアップさせた。日に日にスイングがよくなるのが見た目にわかるレベルで上達していく姿は、やはりトップアスリートなのだと感じさせてくれるものだった。

 2日目の終盤に、スイングのコツみたいなものを摑(つか)み始める。中田さん曰く、ゴルフのレッスンを受け始めてからずっと疑問に思っていたことが解消されたというのだ。その疑問とは「バックスイングで左腕を伸ばしたままにする」というもの。なぜ左腕を伸ばさなければならないのか? どんなこともまず自分のなかで理解し、把握しなければ次のステップに移ろうとしない中田さんにとって、それは納得できる答えが出ない課題の一つだった。

 それが球を打ち続けるなかで、自然に手首のコックが入った瞬間があった。中田さん曰く、左腕を伸ばしたままバックスイングを上げていくと、ある場所で自然にコックが入る場所があったというのだ。あとはインパクトの瞬間(厳密にいえばインパクト前)で、右手首を手のひら側に折るだけで、ヘッドの加速感がまったく違う。

 これに関して谷コーチは言う。

 「手首のコックというのは意識すると正しくできない部分です。中田さんが上手くコックを入れて、コックをほどくことができるようになったのは、アドレスがよくなったことや、クラブと身体の動きが同調するようになったことなど、さまざまな要因があります。合宿初日と4日目の後ろ姿を比べてもらえるとわかりますが、左腕の形が違います。始めはインパクトでボールに当てる意識があったから、やや詰まり気味になって、フォローが取れないから左肘を引くしかなかった。それが手首の正しい使い方とタイミングを掴んだことで、身体の正面でクラブがスムーズに通過するようになりました。結果、クラブは動きたい方向に動かせるようになり、結果的に強く振っていないつもりでも、勝手にヘッドが走るようになったわけです」

 手首をインパクトで返す動きはまだまだ精度が低いものの、振り抜けた時のフォローの立ち姿が綺麗になったのは歴然。5番アイアンで楽に振って200ヤード近く飛ばせるようになった。軌道が安定し、ミート率もアップした。

 今回の合宿は、中田さんにとって、今後のステップアップのための大きな意味を持つことになるに違いない。

数発打ち続けるうちに、当然タイミングが合って、ナイスショットも出る。だが、自分のなかで、なぜよいショットが出たかをまだドライバーでは理解しきれていない

 合宿の2日目に練習を行ったドライバー。谷コーチは連続してボールを打つことで身体によい動きを覚え込ませようとしたが、クラブの長さが変わるので、当然スイングのタイミングも変わる。今後はドライバーへとステップアップしていくが、今回の合宿ではアイアンに徹することを選択。中田さんは常に頭で理解してからのほうが、上達度は高くなることを谷コーチも理解している。「今回の合宿ではドライバーがコースでどれくらい打てるかを把握する意味もありました。できないもので悪い癖がつくよりも、よいスイングができるクラブで練習を重ねることを重視した中田さんのセンスには本当に驚かされます」

パター

 もともとアプローチとパターの感覚が優れている中田さん。ただ、今後もっとレベルを上げていくには感覚だけではなく、機械的な動きを覚えて、そこに感覚を融合させていく必要があると谷コーチは言う。「カップを狙うという明確な目的がある時の集中力はすごいですね。サッカーのPKなんかに似ている感じなんでしょう。ただ、本番になるほど緊張して身体が動かなくなるのがゴルフです。それは中田さんにも起こること。だからこそ感覚を抑える練習も今は必要なんです。機械的な動きで反復性が高まれば、あとは中田さんの優れた感覚があるわけですから、プロ並みのパッティングができるようになりますよ」

 アドレスした時に実際に身体がどこを向いているか。ボールの見方や、ヘッドのセットの仕方など、スクエアな感覚を身につける練習がゴルフでは最も難しく重要、と谷コーチ。

HIDETOSHI NAKATA
1977年生まれ。元プロサッカー選手。昨年「GOLDEN FOOT AWARD2014」にて、偉大な功績を残した引退選手に贈られる"オール・タイム・レジェンド"をアジア人として初受賞。現在、「REVALUE NIPPON プロジェクト」で活動中。
コーチ
MASAKI TANI
1972年東京都出身。93年に渡米。帰国後、SIMOLE SWING理論を確立、コーチング活動を本格的に開始する。2003年より片山晋呉プロをコーチし、5年で4度の賞金王へと導く。「TANI MASAKI GOLF ACADEMY 21」を開設。

Special Thanks=山本喜則(One For One)、シギラリゾート Text=出島正登 Photograph=筒井義昭

*本記事の内容は15年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)