「BMW8シリーズ グランクーペ 京都エディション」に込められた“匠の技”【吉田由美の世界のクルマ見聞録㉜】

カーライフエッセイスト・吉田由美は、クルマの最先端を肌で感じ続ける“現場主義者”。そんな彼女が「見て、聞いて、乗って、感じた」クルマの最新事情とは――。

BMW史上、最高に美しいと言われる8シリーズ

BMW8シリーズ グランクーペ 京都エディション

「THE 8」と冠がついたBMWの最上級モデルBMW8シリーズは、低く伸びやかなシルエットに美しいルーフラインやリアフェンダーにより、優雅な存在感が際立ちます。

BMWジャパンが独自に、その8シリーズの特別限定車を企画しました。テーマは、「BMWと日本の名匠プロジェクト」で、日本の匠とドイツのクラフトマンシップが融合。その第一弾が「BMW8シリーズ グランクーペ 京都エディション」です。

ベースになる車両は、4.4リッターのV型8気筒BMWツインタワー・ターボ・ガソリンエンジンを搭載した「M850i xDriveグランクーペ」。最高出力530馬力のMパフォーマンスモデルで、ボディカラーはBMWインディビジュアル特別色のアズライト・ブラックです。アズライトとは、「蒼銅鉱」という意味で、日本の伝統絵画にも使用される高貴な色で、角度によっては黒にも深みのある藍色にも見えます。そこにクロムのキドニーグリルやウィンドウモール、20インチのアロイ・ホイールで華やかさが加わります。

インテリアも、フルレザーで贅沢なアイボリーと少し茶色がかったタルトゥフォーのコンビネーションに、職人が手作業で作ったハンドルなどが施された「BMW Individual Manufaktur(インディビデュアル・マニフラクチャー)」加工となっています。

BMWは細部にまでクラフトマンシップと高い質感にこだわっていますが、このプロジェクトのきっかけは、BMWジャパンが2016年よりメインスポンサーをしている「KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)」。欧州の車が京都に展示されたときに「ドイツのクラフトマンシップと日本の和の伝統工芸を組み合わせたらどうか」と、関係者がアイデアを出したそうです。

BMWのみならず、高級車や高級感を出すために使用されるインテリアのピアノブラックは、日本の漆が16世紀にヨーロッパに渡ってインスパイアされ、誕生。そういったことから、京都を代表する漆芸家の岡田紫峰氏にお声がけが叶い、蒔絵螺鈿(らでん)細工を施したセンターコンソールのインテリア・トリムが採用されたとか。

 漆芸家の岡田紫峰氏 とともに。

岡田氏は日本人で唯一シャネルと契約し、メトロポリタンやボストン美術館など海外の美術館や明治神宮などにも作品を収めている世界最高峰の匠です。

今回、岡田氏に直接お話を伺う機会がありました。デザインのテーマについて聞いてみたところ、「風を切って走っている」というコンセプトを元に、「結びのし」という帯をまとめた模様が風に流れているものにしたとか。また、ハンドルの位置を事前に確認し、右ハンドルなのでドライバーの方に風が向かって流れてくることをイメージして描いたそうです。

もともと、漆は木に塗るもので、昔は樹脂などには塗れませんでしたが、今はケミカルな材料が開発されて塗れるようになったとのこと。漆は2000種類もあり、その中から一般の漆ではなく特別なものを使用。また使用する金も地金も手作りという、こだわりようです。しかし、漆は、粒子を細かくすると紫外線に弱く、剥がれやすくなりますが、精製を変えてそれに対応したUV漆を作ったとか。

平面図で絵を描き、それを上から薄い紙で写し、さらに裏から写し取って、金のラインや金粉を塗っていく。トリムと同じ蒔絵螺鈿細工の専用キートレイまでも作ってしまったそうです。岡田氏曰く「漆はダイヤモンドと並ぶラグジュアリーなんです。今回は日本代表として戦いでした」とのこと。

価格は、限定3台で価格は2150万円! 漆の透けるような、深さと美しさ……。は~、ため息(笑)。

ちなみに車内には、ほかにも老舗西陣織メーカー「加納幸」とコラボし、上質な絹糸で織り込んだクッションも装備されています。見るだけでも貴重な体験をさせていただきました!


吉田由美
吉田由美
岩手県生まれ。カーライフ・エッセイスト。自動車評論家(日本自動車ジャーナリスト協会理事)。短大時代からモデルを始め、国産メーカーのセーフティドライビングのインストラクター経て「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の視点で自動車雑誌を中心に、テレビ、ラジオ、web、女性誌など広く活動中。3つのブログを展開し、中でも「なんちゃってセレブなカーライフ」は、ピーク時で1日約20万アクセスを誇る。持っている資格は、普通自動車免許、小型船舶1級、国内A級ライセンス、秘書検定、ECO検定、カラーセラピー。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本ボートオブザイヤー選考委員。 現在はYouTubeで「クルマ業界女子部チャンネル」を立ちあげて出演中。
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