【滝藤賢一インタビュー】無職の兄弟がレンタル親父で奮闘! ドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』

名バイプレーヤーとして活躍する俳優・古舘寛治と滝藤賢一がダブル主演を務めるドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』が1月10日深夜から放送スタート! 片や神経質で考えすぎの兄・古滝一路と、何事も出たとこ勝負のイージーな弟・古滝二路という職なし、金なしの中年兄弟がひょんなことからレンタル親父のパートタイムジョブを得て、世の中の小さな人助けに邁進する。実はこの企画、テレビ局で古舘さんと滝藤さんがばったり出会ったことに端を発した企画。映画連載でもお馴染みの滝藤さんからドラマの見どころ、裏話を聞いた。


「僕の俳優人生のベクトルが変わった」

始まりは2017年。湾岸スタジオで古舘さんと何年振りかに再会したんです。古舘さんが僕の働きぶりに思うところがあったそうで(笑)。僕が『半沢直樹』を機にブレイクして勘違いしているんじゃないかと心配していたみたいです。芸能人ぶっているんじゃないかって。古舘さんはいい意味で、僕を「偽もんの芸能人」というんですが、自分でもそう思うんです。だって、僕、正月には芸能人みたいに家族でハワイに行って年越ししたいと言っていますから。夢です夢。芸能人が本当にハワイで年越しするのか知りませんけど……。

古舘さんは、よく「俺は人生で何を得るかではなく、何をするかということを大事にしている」とおっしゃっています。常に日本の未来を考えているし、世界平和を願っている。世の中の動きでおかしいと思ったことはSNSを通して積極的に発信している。僕は家族や子育てが最優先の男。まるで違う生き物ですね。このドラマもそういう凸凹の中年兄弟がふと、人生に行き詰って、試行錯誤しているお話です。

僕はもともと、古舘寛治のファンですから。深田晃司監督の映画『歓待』や『淵に立つ』にものすごく感銘を受けていましたし、山下監督と組んだ『マイバッグページ』も素晴らしかった。なので、迷うことなく「一緒に何かしましょう」となりました。僕の方から言ったと記憶しているのですが、古舘さんが言うには古舘さん発信だったようです(笑)。

そんなやり取りのなかで、一緒に組みたいスタッフの方の話になった時、僕が自身の初主演ドラマ『俺のダンディズム』のプロデューサーだったテレビ東京の濱谷晃一さんの名前を挙げたら、古舘さんも「僕は最近、野木さんと懇意にしていて、お食事に行っては面白いことをしようと話している」と。脚本家の野木さんは『逃げるは恥だが役に立つ』『アンナチュラル』などのヒット作手がけています。「野木さんなら、僕は『重版出来!』でご一緒していますから、それが実現したら最高っすね!」と返したら、トントン拍子に進んでいき、3日後には渋谷のホテルで古舘さんと濱谷さんと僕とで打ち合わせをしていました。

ただ、野木さんはご存知のように大変お忙しい方。しかも言い出しっぺの古舘さんが大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺〜』の出演が決まってスケジュールが空くのを待つことになったんです。そうしたら、その『いだてん~東京オリムピック噺〜』の脚本を書いていた宮藤官九郎さんの出演が決まるなど、どんどん面白い方向に転がっていきました。

『コタキ兄弟と四苦八苦』の撮影は、毎日が本当に刺激的でした。芝居への向き合い方を考えさせられましたね。今後の僕の俳優人生のベクトルの向き方がとても変わったと思います。最近、僕は台詞を覚えて、その日、初めて会った共演者といきなり芝居を始めるというスタイルでした。その方が新鮮さを失わないと思っていたので。しかしこの企画は、野木さん、濱谷さん、スタッフのみんなが古舘さんのワークショップを受け、古舘メソッドを共有しているんです。そのなかでも本読みがいかに大事か、古舘さんに一からたたき込まれましたね。クランクインの何ヶ月も前からふたりで本読みしていましたから。それが、現場でとても大きな成果を出していたように思います。不思議な感じでした。

一度、宮藤官九郎さんに「宮藤さんの作品に出る時、俳優にはどのタイミングで入って欲しいですか?」と聞いてみたら、「早ければ早いほど嬉しい、打ち合わせにもなるべく来てほしい」とおっしゃっていて。半信半疑だった、この数ヶ月が確信に変わりました。これからはできる限り、早く参加しようと思いました。

このドラマは、野木さんが古舘さんと僕に当て書きしてくれています。二路は堅物の兄・一路と違って、とことんイージーで、楽天家で、天然の寄生虫気質。ヒモ体質と言い換えることもできます。古舘さんと僕は互いに、相手の役は「本人のまんまだね」と言いつつ、自分の役は「僕はこんなんじゃない」と言い合っていました。

古舘さんは元英語講師役ですが、実際、英語がペラペラで、ダンスもうまい。しかも、アル・パチーノも卒業生に名を連ねる、NYのHBスタジオで演技を学んでいるんですよ。敵わないですよね。掘れば掘るほど、驚かされることばかりで……。本当に魅力的な方です。

今回、初めてとなる山下敦弘監督。僕、同じ年で、同じ名古屋出身という共通点がありながら、いままでご一緒する機会はなかったのですが、いつもカメラ横にへばり付き、台本で顔を隠しながら、じっと役者の演技を見ていました。そんな山下監督の人柄が現場にとてもいい影響を与えていたと思います。

そして、こんなダメダメな古滝兄弟に嫌な顔ひとつ見せず付き合ってくれた芳根京子さん。異質な存在で現場の空気を一変させた中村優子さん。錚々たるゲストの皆様。ちょっと油断すると、彼らの芝居に見入ってしまい、セリフが出てこないなんてヤバい時が多々ありました。なおかつ、今の段階では名を明かせない大女優の方がご登場の回もあります。さらに、小林薫さんも重要な人物として出演。こんな奇跡的な現場を経験できるなんて(涙)。

野木さんの脚本は本当に素晴らしくて、毎回、クスクス笑えて、ちょっと切なくてツンとくる。この台本のなかで二路を演じられたのが一生分の運を使い果たしたんじゃないかと思うほど、幸せな時間でした。そしてそして、悔しいけど、我らが座長、古舘寛治さん。芝居か、素なのかわからない絶妙な演技をしてきて、言い間違えも計算なのか、本当に噛んじゃったのか、もはや見分けがつかない超リアルなセッション。ぜひ、みなさん、楽しんでご鑑賞ください!

『コタキ兄弟と四苦八苦』
監督:山下敦弘
脚本:野木亜紀子
出演:古舘寛治、滝藤賢一、芳根京子ほか
放送:テレビ東京系 毎週金曜24:12~  


 Text=金原由佳

滝藤賢一
滝藤賢一
1976年愛知県生まれ。大河ドラマ『麒麟がくる』に出演中。今秋『ヴィレヴァン!2 ~七人のお侍編~』(名古屋テレビ)もスタート。10月23日には映画も公開予定。
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