サウナを目的に世界を旅する! 本田直之のサ旅①

食のスペシャリストとして知られる本田直之さんは、この2月、フィンランド~エストニア~ドイツを旅した。その目的はレストラン……ではなく、なんとサウナ。実は本田さんはサウナに関する著書もある生粋のサウナ―なのだ。このシリーズ連載では、サウナを目的に世界を旅する「サ旅」を提案。地域に根差した食を合わせて楽しむという、"本田流サ旅"の楽しみ方を紹介する。

ガストロノミーの料理のルーツをサ旅で感じる

これまで60ヶ国、200都市を超える世界の街を旅し、ミシュラン三ッ星から屋台・B級まで、あらゆる食を極めてきた本田直之さん。「食のためならどこまででも行く」と語る生粋のフーディーで、スペイン、デニアの三ツ星レストラン『Quique Dacosta』(キケ・ダコスタ)でランチを食べるためだけに、バルセロナから往復8時間をかけて行ってきたこともあるという。

そんな本田さんが「食と同じくらい人を旅へと誘う吸引力がある」と話すのがサウナ。2月にはフィ ンランド~エストニア~ドイツ のサウナを回ってきたが、この夏はロシアのサウナを巡る計画があり、秋には自身が主催のフィンランド・サウナツアーも行う予定だとか。どちらもサウナと食を一緒に楽しむ“サ旅”になるそうだ。

  ©Salla Karhumaa  

「海外でその土地ならではのサウナと食を楽しむ旅は、これからもっと注目されるでしょうね。なおロシアでは近年『世界のベストレストラン50』に入る店も出てきていますし、フィンランドも食のレベルが上がっています。フィンランドに8年前に訪れたときは、メシはマズいし街も暗いし、『もう2度と行くか!』と思いましたが、サウナ目当てでこの半年のあいだに2回も訪れました(笑)」

これまでは「食の魅力のない街には死んでも行かない」と決めていた本田さんだったが、サウナ巡りをきっかけに、新たな国や街にも足を運ぶようになったという。

「2月の旅では、フィンランドの北極圏にあるラップランドや、エストニア東南部のヴォル地区などを訪れました。食が目当てなら絶対に旅をしなかった場所ですよね。なおヴォル地区のスモークサウナはユネスコの無形文化遺産にも登録されていて、フィンランドのサウナとはまた違うスピリチュアルな雰囲気がありました」

   ©Salla Karhumaa    
   ©Salla Karhumaa    

ラップランドで訪れたサウナは、もともと農家だった人が経営しており、併設された宿泊施設のロッジでは地域の家庭料理を提供してくれたという。  

「招かれた家でサウナに入って、一緒に食事も出してもらうような感覚ですし、その土地の歴史や文化の話も聞くことができます。着飾って行くレストランとは全然違う楽しさがあるんですよね。あと地域の伝統料理は、やっぱりその土地で食べると格段に美味しいです」

その海外サウナ巡りで食べてきた料理は、フーディーの立場から見ても面白い存在に感じたそうだ。

「近年は世界中のレストランが、地域の食材・伝統的な調理法を現代的な料理に昇華させるトライをしていますが、フィンランドやエストニアのサウナ巡りで食べてきた料理には、よく言われるガストロノミーのルーツも感じました。 国土の7割が森、1割が湖で、森と湖の国と呼ばれるフィンランド。特に雪深いラップランドでは、トナカイ、ヘラジカ、熊といったジビエだったり、サーモンや魚卵、湖の淡水魚、森の恵みである様々な野生のキノコ、ブルーベリー、ラズベリー、コケモモ、クラウドベリー、そして想像以上に美味しい主食のジャガイモなど、限られた食材を生活の知恵を使って料理にします、 厳しい自然の中、 そんな生きていく手段から生まれた食文化の背景を考えながら美味しくいただきました」

そのような風土に根ざした料理は世界で脚光を浴びているという。

「そういった料理が、ミシュランや『世界のベストレストラン50』に載る店の料理よりも注目されているのは、スペインを中心に液体窒素などを使った分子ガストロノミーが流行ったことの揺り戻しでもあるでしょう。サウナを巡りの旅をしたことで、地元の食材を生活に密着した料理方法でいただく食事の意味をより感じることができました 」

旅をしてでも訪れたい“デスティネーション・サウナ“

食の分野では、わざわざ旅してでも行きたいレストランが「デスティネーション・レストラン」と呼ばれて流行中だが、本田さんは「これからサウナにおいても『デスティネーション・サウナ』が流行するはず」と話す。

「たとえばフィンランドの北極圏のラップランドには、周囲の大自然と融合したサウナがある。まさにその場所まで旅をしないと体験できないサウナです。 ラップランドのサウナでは、水風呂ではなくアヴァントと呼ばれる氷の張った湖に穴を開けて、1から3℃くらいの水に飛び込みます。外は髪の毛も眉毛も凍るマイナス20度の環境。そこから一度あたたかいアウトドアホットバスに入り、暖炉のある部屋でくつろぐ外気浴ならぬ“内気浴”がまた至福なんです」

そのようなエクストリームな“サ旅”を楽しむことは、食の旅を楽しむことと似た楽しさがあるという。

「メシを追い求める人も、サウナを追い求める人も、共通しているのは『体験』を重視していること。サウナは『気持ちいい』を味わえる体験であり、それは『美味しい』という感覚であり、快感を脳に与えることです。体験の中に驚きや喜びをがある点も同じですよね。違いとしては、サウナのほうが比較的リーズナブルに楽しめること。また、サウナは裸になってしまうので、レストランのように緊張することもありません」

サウナが好きな人は、まずサウナ目当ての旅から計画し、そのプランに食も組み込んでいけば、旅がより充実したものになるはずだ。

次回からは世界の訪ねるべきデスティネーション・サウナを紹介していく。

Naoyuki Honda

一年のうち5ヵ月をハワイ、3ヵ月を東京、2ヵ月を日本の地方、残り2ヵ月をヨーロッパを中心にアジアなどを旅する。近著に『トップシェフが内緒で通う店150』『The Hawaii's Best Restaurants』『人生を変えるサウナ術』がある。   


Text=古澤誠一郎