「イイ〜〜〜ネ!」クレイジーケンバンド横山剣 ~野村雅夫のラジオな日々vol.35

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、クレイジーケンバンド横山剣さんだ。俺の話を聞け!


「はい、コンテナ・フェチです」

1年前にこの連載でもピックアップしたクレイジーケンバンド。前回はスケジュールの都合で生出演がかなわず、愛用の逸品であるモンブランのボールペンについてメッセージを寄せてくれた横山剣さん。

僕はラジオで何度も共演させてもらい、車についての特別番組も一緒に作ったことがある。新曲のMVを見れば、剣さんが乗っているのは、イタリアのLANCIA(ランチャ)ではないか! 今年こそ、スタジオでお会いしたいと思っていたら、それがかなった。ただ、車というよりは、コンテナとバイクの話に転がっていったのだが、そこは生放送の醍醐味、ご愛嬌。今回は、FM802 Ciao Amici!8月13日(火)放送回のやり取りをお楽しみいただく。

はいどうも、東洋一のサウンドマシーン、クレイジーケンバンドの横山剣でございます。

――剣さん、チャオ!

チャオ! よろしくお願いします。

――よろしくお願いします。ニューアルバムをリリースされたということで、おめでとうございます。

ありがとうございます。

――どれぐらいぶりかといいますと、1年ぶりです。さすがにコンスタント! ほんとに出し続けてますよね。

そうですね、ほんとに(笑)

――毎回、収録曲数も多いし。なんて話を毎年夏にしている気がします。昨日は兵庫県の西宮ガーデンズにいらしたんですよね。

そうです。実演販売でたくさんの方に買っていただきました。フフフフ。

――ハハハハ! すごいですね。プロモーションでのイベントとなると、だいたいは握手会やサイン会、ミニライブというのが定石だというところ、剣さんの場合は実演販売です。自らお売りになる。このあたり、事情がよくわかっていないリスナーもいると思いますので、もう一歩、踏み込んでご説明いただくと、これはどういうものなんでしょうか。

CKBのマニアの方、ファンの方だけじゃなく、通りすがりの方々にも買っていただくために、CDJで自分でCDをかけて音楽を鳴らし、口上といいますかアピールも自分でするということです。

――「寄ってらっしゃい」ってなもんですよね?

そう。だみ声を出してですね。寅さんのごとく。やるわけです。そして、買っていただいた方には、「イイ〜ね」撮影会というのがあって、一緒に写真を撮るんです。

――すごいなぁ。おつかれさまでございます。

ありがとうございます。

――今回は『PACIFIC』というタイトルですが、リリースは夏が多いですよね。

多いです。夏に向けての曲が勝手に出てきちゃうというか。コンセプトありきではないんですけどね。出てきた曲がコンセプトになっていく感じなので。結果的には、夏向けが多いですね。

――『PACIFIC』ですから、どうしても海を連想するタイトルですよね。今お話いただいたように、テーマは後からだんだん浮かび上がってくるもののようですが、収録曲を聴いていくと浮かび上がる景色は、港町です。

そういうことなんです。

――CKBがこれまで、数多くの曲の中で、港の風景、横須賀、横浜あたりってのは繰り返し歌ってこられたわけですから、今作は原点回帰の趣がありますね。

はい。原点はそこにあるんですが、今また始まったって感じの原点でもありますかね。

――最近は飛行機にスポットを当てることもありましたが、そうか、今回は船なんだなと思ってジャケットを手に取ったら、船に載せられるコンテナがすごい存在感を放っております。なんでも、剣さんはコンテナに興味がずっとあるんですって?

はい。コンテナ・フェチです。子どもの時から写真を撮ってました。飛行機もフェチで、一番は車なんですけど、そういった乗り物と同じようにコンテナの写真も撮っていたんです。大人になってからも、もうクレイジーケンバンドも始まってましたけど、港で検査員の仕事をやっていて、「バン詰め」って言って、コンテナの積み込みに立ち会って、インボイスをチェックしながら、最後はシーリングって言って、コンテナに鍵みたいなのをかけるんですね。そういう検査会社の仕事をやってたんです。だから、コンテナと密着した形で仕事ができるんで、もう幸せでした。

――憧れていたことに仕事として接してみると、裏の部分が見えちゃったりってあるじゃないですか。どんな仕事でもしんどい部分があったり。憧れが消えちゃうというか。ところが、剣さんの話を聞いたうえで、このジャケットをまた見ると、憧れはまったく消えてないですね。

まったく消えてないです(笑) 都合の悪いところは、全部忘れちゃって、都合のいいところだけ残しとくんですね。そうすると、楽曲に変換されますので。

――なるほど~ 『Tampopo』という歌にあるように、「感謝は石に刻み 恨みは河に流す」ってわけですね?

そういうことです! 

――この一連の写真はどこで撮影されたんですか?

これはうちの近所にある本牧ふ頭のコンテナヤードですね。

――いまだにこうして惹かれちゃうってのは、ずばり何が魅力なんですか?

越境感というか。

――越境感!?

はい。ツバメのように。そして、カラーリングですかね。たとえば、オレンジはオレンジでも、ちょっと干からびた感じとか。それから、ロゴマーク。

――たくさんの荷物を積んだものが並ぶわけだから、それぞれ目立つようにしないといけないという意味合いもあるのかもしれませんが、オレンジだったり、青だっだり、赤だったりと、かなりインパクトのある絵面になってますもんね。そして、サイズ感!

20フィート、40フィートとありまして、会社によっては、20フィートの方がキマるデザインの場合と、40フィートの方がキマる場合と、違いがあるんですけどね。

――それだけの想いもおありだということで、気づけば港にまつわるものが多かったりするわけですよね。たとえば2曲目の『Tampopo』でも、やはり色が煤けていたりってのが、港湾の景色として歌詞に落とし込んであります。ちょっとした寂しさや切なさも込みって感じがします。

そうですね。関西だと神戸や大阪の南港もそうですけど、昼なのに、なんとなく哀愁があるというか、メロウな感じってのが港湾にはあるんですね。

――都会の暮らしを支えている部分なんだし、都会からそう離れていないんだけど、あの広さもあいまって、うら寂しさも魅力として感じます。

味ですよね。

――アルバムには、嬉しいことに『Disc Jockey』なんて曲もあって、これはクラブやディスコよりも、ラジオじゃないですか。ただ、原曲は30年くらい前のものだとうかがいました。

原曲はね、『横山剣自宅録音シリーズ』ってのに入ってるんですが、全然違う歌詞でした。それを変えたんです。

――コンテナが港に到着しますと、今度は都市部に運ばれていく。その時、トラックの運転手さんは何を聞いているかというと、ラジオである。だから、洋楽マニアの方なんかもいらっしゃいますよね。

ヘビーメタルが好きな方とかね。映画『コンボイ』のノリで。

ハハハハ! で、もちろん、『クレイジーの中華街大作戦!』には中華街も出てまいりますし、その流れでいけば『北京』というインストも入っております。ギタリスト小野瀬雅生(まさお)さんですよ。

同じ「まさお」さんですね。

――それから、車についての曲も当然ながら入っているところに、今回オッと思ったのは『風洞実験』という曲です。バイクですよ。バイクはクレイジーケンバンドではそこまでガンガンにスポットを当ててきたわけじゃないですよね。

はい。そうなんですが、実は、メンバー中、僕も含めて5名がですね、バイク乗りで、5人で仲良くツーリングに行ったりしているんです。

――そうなんですね!

気持ち悪いくらい仲がいいっていう(笑)

――ハハハ!

その代わり、喧嘩もしながらですが。

――ライダースーツの「ジッパーだけがモラルの境界線」というキラーフレーズも出てまいります。さらには、バイクメーカーの釣瓶撃ち。そこには、ありがとうございます、イタリアのメーカーもばっちり入ってる! 剣さんは今日もアロハがお似合いで、僕もいつも派手なシャツを着てるんですが、そういうこともあって、今日はあえてのバイクTシャツにしてまいりました。

ヴェスパ! 僕、持ってますよ。125のプリマベーラ。

こちらは1976年のプリマベーラ。今もモデルチェンジが繰り返されているが、古いものをレストアして乗る愛好家も多い。

――あら、そうでしたか! 125ってのが、またちょうどいいサイズで。

125はいいですね。

――今言ってきたような感じで、今回も18トラックという大盤振る舞いのアルバムとなっております。リスナーにもぜひ手に取って楽しんでいただきたいわけなんですが、今後の予定としてライブが決まっています。アルバムのタイトルを冠したツアーの日程については、オフィシャルサイトをご確認ください。で、お別れの1曲なんですが、僕からのリクエストってのはありですか?

ほんとですか? 嬉しいですね。どの曲ですか?

――8曲目の『GET』です。

おおお!

――シティーポップだったり、ファンク色の強い音ってのが、また最近若いミュージシャンの間でも流行っている中で、この曲のようなクレイジーケンバンドのサウンドがまたそことも響き合うんじゃないかなと思っているんですよ。しかも、歌い出しが「夕方5時から」。うちの番組も夕方5時からでしょ?

バッチリじゃないですか!

――そうなんですよ。夏を歌ってるのも今にハマるし、歌われている価値観に僕は共鳴しています。身の丈にあった幸せを模索していいじゃないかと。

そういうことが言いたかった曲です。

ーそこも日常に寄り添う番組でありたいという僕の番組への想いとも重なるんです。

ありがとうございます。

ーでは、その『GET』を聴きながらお別れです。今日のゲストは、クレイジーケンバンドの横山剣さんでした。ありがとうございました。

イイ〜〜〜ネ!



野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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