【大谷翔平から見る実践的行動学①】膝の手術直後でも大谷が会見で座らなかった理由

幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けているメジャーリーガー・大谷翔平。彼がアメリカ全土でも絶大なる人気を誇る理由は、その実力だけが要因ではない。ビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。


25分間も立ち続けた術後初会見

メジャーリーグはポストシーズンの真っ最中だが、少し話をさかのぼりたい。9月24日、エンゼルス・大谷が左膝の手術後初めて姿を現した会見でのことだ。ギプスを装着した左足を引きずりながら25分間、日米メディアの取材に応じたが、立ったままの会見方式に各方面から心配の声が挙がった。

左膝手術後初めての会見の際、大谷はギブスを装着しながら25分間も立ったまま応対した。

何故、立ちっぱなしになったか。会見内容を伝えた筆者のツイッター(@sponichi_yanagi)にも多くの質問が寄せられた。誰しも"座り"の方が負担が少ないと思うからだ。そこで球団広報に尋ねると、こんな回答が返ってきた。

「本人の希望です」

右足神経腫の手術を受けて同じく松葉づえ姿だった主砲トラウトの翌25日の会見は"座り"。ただ、トラウトは膝を曲げられる状態で、大谷は"立ち"を選択したのだった。

熱心なファンならお気づきだろうが、そもそも大谷は今季から"座り"の会見をしていない。昨季は"座り"だったが同広報によると「座りだとメディアの方と距離ができて、どうしてもかしこまってしまう」というのが理由らしい。さすがに6月13日の敵地レイズ戦で日本選手初のサイクル安打を達成した時は"座り"で会見を行ったが、そもそも日本ハム時代は試合後に歩きながら取材対応する"ぶら下がり"が基本で、試合後に座りながら話すことはない。座ったままだと自分の言葉で話しづらいのかもしれない。

6月13日のレイズ戦、日本人選手として初めてサイクル安打を達成した。Licensed by Getty Images

弱さを見せないという意思表示

ここからは推測になる。大谷は恐らくメディアに自分の"弱い"部分を見せたくなかった。会見場に入る前、そして会見場を出た後に松葉づえを使っていた様子からその思いを感じ取ることができた。会見終盤に筆者が「右膝にも左膝と同じ症状がないか?」と尋ねたところ、大谷は「ないですね。ただ、こうやって右足で立っているので、疲れるので早く終わりたいですね。ハハハ」と笑い飛ばしていた。松葉づえ姿が決して"弱い"わけではないが、立って会見をするぐらいは問題ないという大谷なりの意思表示だったようにも思う。

そもそも会見時間が長い、という声もあるかもしれない。ただ、術後初めて公に姿を見せ、日米合同取材。手術をする前にも会見を行っていないことから、不明点が多く、致し方なかった。もちろん、それくらい大谷も承知の上だ。9月13日の手術からわずか11日後だった。立ちっぱなしで25分間。大谷はどんな質問にも自分の言葉で誠実に話し続けた。

Text=柳原直之