店員に「見てるだけです(笑)」ってなんて言う?【英語ゼロレッスン】

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第38回!   


browse=お店で目的もなく見て回る

日本にいた時からお店で店員さんに「何かお探しですか?」と聞かれるのがすごく苦手でした。たいてい見ているだけですし、時には興味のない商品の説明も聞かなくてはいけないし、それに押し切られて、欲しくもないものを買ってしまったりするからです。

もちろんそれが英語になると尚更で、大抵は首を振って笑顔で立ち去る、という方法で対処していました。どうしても話さなければいけない場合は“ just looking(見ているだけです)”とか“I don’t have any particular purpose(特に目的はないです)”などと言ってのりきりますが、 前者だとぶっきらぼうなような気もするし、後者だと意味はわかるかもしれませんが、すっとんきょうといえばそうで、どちらもしっくりこず、結局は「無言」が一番無難な気さえしていました。

しかし先日、スペイン育ちの中国人女子とウィンドウショッピングをしていた時のことです。店内を1メートル進むだびに店員が話しかけてくる猛攻のなか、彼女が言ったのがこのフレーズ。

I'm just browsing.Thank you.

この1フレーズで、店員たちは次々に引き下がっていきます。私はその横で、案の定店員に押し切られていたので、その姿はとても眩しく写りました。

browse=お店で目的もなく見て回る

という、まさにそのままの意味の動詞でした。

そういえば、WEBページを閲覧することをIT用語で「ブラウジング」と言いますが、つまりはそれと同じことなのです。(ケンブリッジの英英辞書には「WEBページを見る」という意味がbrowseという単語の2番目の意味として紹介されています)。

また「雑誌や本を、パラパラ見る」という意味もあり、その場合はthroughをつけて以下のように使うのだそうです。

I was browsing through fashion magazines to find a new hairstyle.
(私は新しいヘアスタイルを見つけるため、ファッション雑誌をめくっていた)

※ケンブリッジ英英辞典より

この友人は普段は老舗デパートのハロッズで店員として働いているので、お客さんがよくこのように言うのを聞いて覚えたそうです。また“Thank you”をつけておけば店員さんも悪い気はしないから、店員さんへのマナーとしては実はそこが一番大事、ということでした。

“bye for good”と言ってはいけない理由

先日、カランメソッドの授業でこう聞かれました。

Are you going to live in UK for good?

“for good”の意味がわからず、“for good reason”の略で

「喜ばしい理由があるから、UKにこれから住むの?」と聞かれているのかと勘違いしました。UKで結婚や起業などをするから、ここに住むのか?聞いているのかと一瞬で意味を壮大に取り違え「goodな予定は特にない」とトンチンカンな答えをしてしまいました。

for good=永久にという意味でした。

直訳すると「永久にUKに住むのか?」ということになりますが、未来のことは誰にもわかりませんので、よく使われているPermanently(永久的、ずっと)というのと同じ意味で「ずっとUKに住むつもりなのか?」という質問になります。

また“good bye”と音が似ているからといって言ってはいけないのが

bye for good”。こうなると「永遠にさようなら」とか「お前とはもう終わりだ」という意味になってしまいます。

このクラスは授業料が格安のため、ロンドンで働いているさまざまな外国人たちが仕事の合間に顔を出します。アルバニアからの難民として小さい頃イタリアに入り、大人になった今、これからはイギリスで暮らそうとしている人、ブラジルの治安のよくない地域から脱出したくて、生まれた国ポーランドでパスポートを取得してEU圏内で働けるようにした、などなど、まさにこの“Are you going to live in UK for good?”という質問は真に迫ります。

「ビザ次第」「仕事次第」「EU離脱のもたらす結果次第」とみなさん口々に答えました。数人は“I am going to back my country probably for good(おそらく、正式に国に帰るつもりだ)”と答えました。ロンドンには、さまざまな国からさまざまな人が毎日やってきて、そして同じように国に帰っていく人がたくさんいます。毎月誰かしらが「イギリスでもうまくいかなかった。やっぱり帰るよ」と言って去って行くのを目の当たりにします。EU離脱を正式に迎えた今、そういう人はこれから増えていくのかもしれません。

「物価が高いわりには、あまり割りのいい仕事を見つけられなかった。国に帰ってもう一度教師に戻ろうと思う」と12月に本帰国した、ブラジル人数学教師のマリ。まさに“for good”のお別れかと涙ながらに見送ったその1ヵ月後に、グループSNSにメッセージが入りました。

「やっぱブラジル暑い。ロンドン帰ろうと思うんだけど、安いアパート知らない?」

さすがに早いよ、とグループSNSは少し荒れました。

1月31日、ついにEU離脱となりました。駅で配られているフリーペーパー「イブニング・スタンダード」では“Farewell but not Goodbye(さようならだが、お別れではない)”という見出しのもとさまざまなコラムを紹介。なかには「離脱記念50ペンス(約70円)コイン予約受付中」の広告もありました。  


MOMOKO YASUI

ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。  


Illustration=Norio