イイ~ネ! クレイジーケンバンド横山 剣 ~野村雅夫のラジオな日々vol.12

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、自称"東洋一のサウンドマシーン"クレイジーケンバンドの横山剣さん。


剣さんの愛用モンブラン

最近はあまり行かなくなってしまったが、カラオケでの僕の十八番はクレイジーケンバンドの『スポルトマティック』という曲だ。

「君を乗せるなら 金のポルシェがいいだろ」と歌い始め、食事に行こう、旅行に行こう、買い物に行こうとさんざっぱら調子のいいことばかり並べ立てた後、サビでは「しかし問題なのは金がないという事だ」と打ち明け、最終的には「俺の未来に投資しろ!」とまくしたてる。

『タイガー&ドラゴン』のような代表曲どころか、シングル曲でもないので、歌詞のこのまさかの展開を知らないだろう女の子たちの前で絶唱しては、「ヤダ〜!」などという悲鳴と笑いの入り混じった反応を彼女たちから引き出して悦に入るまでがワンセットだ。

東洋一のサウンドマシーンを標榜するクレイジーケンバンド。ムーディーでシャレていて、ユーモラスでスカしていて、ダンディーでエロティック。ドラマティックでいて軽妙。どの歌も口ずさめて、どんなジャンルもオールマイティー。おまけに、車、飛行機、映画など、僕の好きなものばかりが歌に登場するのだから、「イイ〜ネ!」と言わないわけがない。

大学生の頃に初めて耳にした頃から、ファンとしてずっと愛聴し続けている。そんなあこがれの剣さんにまみえたのは、もちろんラジオDJになってから。実際に話してみると、とても物腰の柔らかいジェントルマンで、僕がお慕い申し上げているとお伝えすると、照れくさそうに笑う少しシャイな方だった。ありがたいことに、これまで何度もインタビューをさせてもらい、数年前には僕と剣さんの車談議だけで1時間を構成するという無茶な特別番組までFM802で作らせてもらった。

そんな剣さんが、今回僕の番組にコメントを寄せてくれたのは、毎週水曜日に「あなたの暮らしを豊かにするプロダクツ」を紹介しているコーナー。僕はてっきり車やサングラスをチョイスされるものだとばかり思っていたが、意外にも文房具だった。

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「あ、どうも、クレイジーケンバンドのクレイジーケンこと、横山剣でございます。今日はですね、私のこだわりのプロダクトをご紹介いたしましょう。僕は字が汚いので、あまり文字を書くのは得意ではないのですが、あるボールペンを使うと、上手くなったような、そんな気分になれるんです。それは、モンブランのボールペンでございます。

これは自分で買ったんじゃなくて、Mighty Crownという、横浜のレゲエサウンドの、この間はジャマイカでもサウンドクラッシュで優勝もしたMighty CrownのMasta Simonが、僕にプレゼントしてくれた名前入りのモンブランのボールペンでありまして……「Ken Y.」と書いてくれたんですね。金色の文字で。

それが僕のすごく大事なボールペンになっているんですが、ある日それをなくしてしまいまして。「こりゃ、まいったぞ」となりまして、まったく同じものを自分でデパートで買って、自分で名前を金の文字で入れて持っていたんです。もしSimonくんに「この間のボールペン」なんて言われた時にパッと出せるように、コピーロボットのように、第2号を用意しておいたんですが、忘れた頃に出てきまして、今は2本持っております。片っぽはお家用、片っぽは持ち歩き用と、そのように今はなっております。

Simonくんの気持ちが嬉しくて愛用しておるんですが、やっぱりモンブランのボールペンは一流だけありまして、非常に書き味が良くてですね、僕みたいな字が下手な男でも、決して上手くはなりませんけど、何となく味のある文字になるというミラクルな"マジックのあるボールペン"でございます。野村雅夫さんも、ぜひ使ってみてください」

こだわりの品を紹介するだけでなく、しっかり面白いエピソードまで添えてくれるなんて、さすがは剣さんだとしか言いようがない。そして、モンブランが想像するだけでもよく似合う。僕が今愛用しているのはLAMYの4色ボールペンだけれど、いつかは持ちたいモンブラン。もちろん、そこには「Masao N.」とゴールデンな文字をあしらってもらうことにしよう。

「さて、我々クレイジーケンバンドは、8月1日にブランニュー・アルバム『GOING TO A GO-GO』をリリースいたしました。約3年ぶりとなる、デビュー20周年記念のオリジナル・アルバムですね。久しぶりにオリジナルを出せるってことで、興奮興奮興奮! 興奮が爆発しちゃってね、支離滅裂になっちゃった。あれもあるし、これもあるし、何もあるし、どれにしようか。どれを削ろうか、選曲も大変だったんですけど、2016年と2017年に作った曲はカット! 2018年に作ったものと、ずいぶん前に作ったものをミックスしたんですね。『山鳩ワルツ』っていう曲の「クークーポーポー」というコーラス部分があるんですけど、あれは50年前に作ったフレーズです。それから、20年前にファースト・アルバム『PUNCH PUNCH PUNCH』では、当時キーボードとホーン・セクションがいなかったがためにボツになっていたものをリノベーションしてやっとできあがった『MIDNIGHT BLACK CADILLAC』なんてのも入ってます。その2曲以外は書き下ろしですね。全部で20トラック。20周年にちなんで20トラックとなっております。

そして、このアルバムを携えまして、全国ツアーを回るんですが、地元横浜ではですね、9月24日に、横浜アリーナで1万人コンサートを予定しています。これは新横浜なので、大阪からも新幹線に乗ればすぐですから、ぜひお越しください。空席がないようにしたいので(笑)、ひとつよろしくお願いします。

最後になりましたが、野村雅夫さんはね、僕は大ファンなんです。車の趣味が良いし、ファッションの趣味も良いし、何もかもパーフェクト。しかも、面白い。最高です。アミーチ(友達)だと感じておりますので、今後とも、末永くよろしくお願いします。イイ〜ね! クレイジーケンバンドの横山剣でした」

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いつの頃からか、剣さんはこうして「僕のファンだ」と言ってくれる。嬉しいというより畏れ多くて「マイッタね」というところなのだが、それはさておきCKBの新譜だ。自らを作曲中毒だと言う剣さんが3年ぶりに出すだけあって、溜まっていたクリエイティビティが堰を切ったように溢れまくっている。ジャケット写真の撮影地は、ロスの空港。写っている宇宙的な建物と飛び立つジェット機。音楽ジャンルも国境も時代も超越した東洋一のサウンドマシーンが放つイケイケで「かっとび」な1枚だ。テーマは24時間営業。1日のどの時間にもフィットする、イカしたGOETHE読者必携と言えよう。

vol.14に続く

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野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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