【特集・勝負服】第39代アメリカ大統領ジミー・カーターの深紅のタイ<男の履歴服>

男の勝負服は十人十色。立場や服に込めた戦略、またはこだわりによっても変わるものだ。そしてそこには、各々の勝負の履歴が刻まれる。アメリカ合衆国第39代大統領ジミー・カーターにとって、その生き様まで垣間見える勝負服とは?


真紅のタイに込めた勝利への情熱と戦略

ネイビーのスーツに純白のシャツ、そして真紅のネクタイ。これはアメリカ合衆国大統領が公の場に登場する際に装う、いわば勝負服コーディネイトである。それは星条旗のカラーリングであるばかりか、ネイビーの誠実さとホワイトの清廉さ、レッドの情熱がひとつになった、大統領にとって非の打ち所がない装いだ。

特にレッドタイは歴代大統領がここぞの場面で必ず活用し、米国では勝負時に締める”パワータイ”として定着しているが、その効能をいち早く活用して勝利を収めたのが、第39代大統領ジミー・カーターである。

現在でも大統領選挙の結果を大きく左右するといわれるのが、選挙中全米で生放送される対立候補のテレビ討論会だ。初めて行われたのは1960年のケネディ対ニクソンだが、当時は白黒テレビが主流。そこでコントラストが明瞭に映る服装を選び、若々しく明快な人柄を演出したケネディが勝利を手にした。

そして時代が変わって’76年、16年ぶりに行われたカーター対フォードのテレビ討論会。民主党候補のカーターは、当時70%以上も普及していたカラーテレビに映える真紅のタイを身につけて登場した。そしてウォーターゲート事件で失脚したニクソンから支持基盤を引き継いだ、現職のフォード大統領に付きまとうダーティな印象とは正反対である、クリーンで情熱的なイメージを打ちだして支持を獲得。見事に大統領選を勝ち抜いたのだ。

「ジミーって誰? 」という言葉が流行するほど、当初は知名度が低かったカーター。かつてのケネディのように、新時代の到来をいち早く見極めたうえで選んだ知略に富む勝負服が、その劇的な勝利を支えたのだ。


JIMMY CARTER
1924年米国ジョージア州生まれ。大学で理学士の博士号を取得後に海軍へ入隊し、’60年代に政治家へ転身。州知事などを経て’76年、第39代合衆国大統領に就任。退任後は外交を通じて世界中の紛争地などで平和活動を積極的に行い、2002年にノーベル平和賞を受賞した。貧困対策などの慈善活動も行っている。

Text=竹石安宏(シティライツ)  Illustration=黒木仁史(vision track)