大人の見栄張良品 建築家 西沢立衛


世界的建築家を触発した
古いクルマに乗るという"冒険"

「僕は未来のクルマが好きですが、一緒にクルマを探した事務所のスタッフは古いクルマが好き。彼が連れていってくれた川崎のデルオートという店に古いアルファ ロメオがぴかぴかに洗車されて並んでいて、古いのに未来を感じたんですよ」

1963年発表のジュリア・シリーズが、美しくてスポーティーという同社のイメージを決定づけた。

慣れ親しんだ世界から思い切って外に出てみると、そこには新鮮な景色が広がっていた。

「決して運転しやすいわけではないけれど、運転がしたくなる。こんなに楽しいことをなぜ今は機械にやらせるんだ、と」

機能というのは使いやすいかどうかではなく、使いたくなるかどうかだと、学んだという。

日立製エアコンを取りつけリビルドした。

「建築も同じで、料理したくなるキッチンとか、使いたくなる建築を目指すわけです」

古いクルマに乗るという"冒険"が、世界的な建築家の可能性をさらに拡げたのだ。

73年型アルファ ロメオ「ジュリア2000GTヴェローチェ」。「大概のモノはデザインの過程がわかるけれど、このクルマはわからない。僕には絶対にできないデザイン」。

西沢立衛

1966年東京都生まれ。90年に妹島和世建築設計事務所入所、その後、妹島氏とSANAAを共同で運営しながら、個人の事務所でも活動。2010年"建築のノーベル賞"と称されるプリツカー賞を受賞。