サッポロビール 上條会長に聞く「ゴルフって仕事で役に立ちますか?」


最前線で活躍するトップランナーは、なぜか決まってゴルフを嗜む。 ゴルフと出世、そこには因果関係があるのか。 サッポロホールディングス代表取締役会長の上條努氏にうかがった。

他愛もない会話こそ大切なコミュニケーション

ゴルフを始めたのは20代半ばのこと。当時は道具もラウンドするのも今よりずっと高価でしたから、妻に「何を考えているの」と?られましてね。ところが、今ではその妻もクラブを握っているわけですからゴルフの魅力は奥が深い。しかも、今3人の息子たちが使っているクラブは〝お下がり〞がほとんど。我が家で最も新しいクラブを使っているのは妻なんですよ(笑)。家族でラウンドすることもありますし、先日は初めて3人の息子たちと一緒に回りました。

アメリカ勤務時代を含めて、子供達が小さい間は、週末は家族との時間にしていました。ゴルフ熱が再び高まったのは、10年ほど前。とはいえラウンドは年に数回程度でしたから、もう少し真剣に取り組めば違う世界が見えたのではないかと、後悔もしているんです。

ゴルフをやっていると、コミュニケーションツールがひとつ増えることは間違いないと思います。私もさまざまな会社の経営者の皆さんとご一緒する機会がありますが、仕事の話はほとんどしません。あえて言うなら、「終わってから飲むビールは決まっていますよね?」という冗談くらいのもの(笑)。それよりも、家族や趣味のことなど、スーツを着たままでは決して出てこない他愛もない話のほうがずっと楽しい。そういうコミュニケーションこそ、仕事をするうえでも大切なのかもしれません。 また、ゴルフ場で必要とされるマナーは、一般的な人間関係でも求められるといえるのではないでしょうか。一緒に回る人たちに迷惑をかけない。不快な思いをさせない。相手を思いやってサポートをする。それから、できるだけ早く打つ。人のことを言える立場ではありませんが、人間は待たされることが苦手ですから〝後ろ〞には常に気を配っています。そういう当たり前のことを身につけ、見直す場として、ゴルフ場はとても有意義なところである気がします。

よりよいスコアを出したいなら、やはり戦略的に戦うべきなのでしょう。しかし、その教訓の意味を理解し始めたのも最近になってから。弊社に大学ゴルフ部出身の社員がいるのですが、彼にこう言われました。「ゴルフはパーで上がるスポーツ。300ヤード飛ばす必要はないんです」と。もちろん異論はありません。ただその意識を持って真剣に取り組んでも、どうしても進歩しない。時として、難しいことを考えずに「ただ飛ばすこと」に快感を覚える仲間とラウンドするほうが楽しく感じてしまうのは、アマチュアゴルファーの性なのでしょうね。

会社の上司や先輩に甘えて連れていってもらえばいい

3年ほど前にプロゴルファーの青木功さんとご一緒させていただいたのですが、3ホール目のティーショットで「思い切り振り抜いてみなさい」と言われました。私にはスライスがかかる癖があるのですが、青木さんのアドバイスに従って打ってみると、気持ちのいいショットになった。その後は私の再現能力のなさを痛感するばかりですが……。私にとってあのショットは今でも「理想の一打」。青木
さんは私のようなアマチュアがミスショットを打って「しまった!」とネガティブな言葉を発すると、「皆さんの本業は他にあるんですから」と笑うんですよ。本当にそのとおりで、ミスをしてもイライラする必要はありません。心穏やかに、ミスを恐れず思い切り振り抜く。まさにゴルフの難しさを楽しみながら、ベストを超えることを目標として日々研鑽を積んでいるところです。

ひと昔前と比較して、最近はコストもかなり下がりましたから、若い人たちも積極的にクラブを握ってほしいですね。ぜひ、会社の先輩や上司に甘えてください。「連れていってください」と言われて嫌がる人はいないはず。上司にとっても部下にとっても、ゴルフは素晴らしいコミュニケーションツールとなりますから。ゴルフは遊びと見つけたり。遊びだからこそ、互いの新たな一面も見えることでしょう。私も、誘われれば喜んで参加します。反省会で飲むビールは、また格別ですから(笑)。

Tsutomu Kamijo
サッポロホールディングス代表取締役会長 1954年宮城県生まれ。慶應義塾大学を卒業後、サッポロビール入社。アメリカ勤務時代にはサッポロビールのシェア拡大に成功。2007年にサッポロホールディングス取締役経営戦略部長、’09年常務取締役、’11年代表取締役社長を歴任し現職に。


Photograph=杉田裕一(POLYVALENT) Text=細江克弥