プロキャディが教える!怒りのコントロール法【プロキャディ出口の目⑤】

プロキャディの出口慎一郎氏がプロトーナメントの裏側で起きていることをロープの内側から独自の視点でレポートする連載「出口の目」。キャディを務めるプロのことはもちろん、ロッカールームでの他選手の会話や練習場で気になったこと、さらには選手たちのプライベートなことまで様々な切り口でプロゴルフの面白さを伝えていく!


星野プロのプレーが早くなる傾向を回避するコツとは?

星野陸也選手がダンロップ・スリクソン福島オープンでツアー通算2勝目を飾りました。その週は私用で自分がバッグを担いでいたわけではないのですが、星野選手にとってこの2勝目は、いろんな意味で大きいということを星野選手とも話しました。本人は単なる通過点といった感覚のようですが、一般的によく言われる「1勝目よりも2勝目の方が難しい」とか「2年目のジンクス」といったことから解放されることは、本人は意識をしていなくても今後のプレーに大きな影響を与えると思います。

ダンロップ・スリクソン福島オープンで星野選手のバッグを担いでいたのは、星野選手の同級生で、高校生の頃からの親友です。野球出身で今後は勉強を積んで本格的にプロキャディを目指すと聞いています。優勝した翌週に、星野選手から話を聞いたのですが、ぼくはてっきり同級生がキャディということで和気藹々とリラックスしてプレーができたんだと思っていたんですが、それだけではなかったようです。イライラする部分も多々あったと言うのです。

プロとキャディの関係性には様々な形があると思いますが、例えば水を出すタイミングや、声をかけるタイミング、さらには話す内容など色んなことを状況に合わせなければなりません。星野選手も色々とプロキャディとしての動き方などを教えながらやっていたと話していましたが、プレーに集中しきれないという部分は大変だったのではないでしょうか。もちろん同級生でなんでも言えるということが大きなメリットになったことも事実だと思います。今回はプレー中のプロの心境の変化についてどう対応するかという話をしたいと思います。

選手によっては喜怒哀楽が激しいタイプと内に秘めるタイプがあります。星野選手の場合は、どちらかと言えば内に秘めるタイプです。喜怒哀楽が激しい発散タイプのキャディは周囲から見ると大変そうに見えるかもしれませんが、実はそうでもないんです。理由は気持ちを外に出す時間はそれほど長くなくて、続いても2〜3ホールくらいまでなんです。だからかなりの怒りがあっても、気持ちが切り替わるのも早いんです。一方の内に秘めるタイプは、気持ちを溜め込むので、それが怒りや不安の場合、それを和らげる必要があるんです。

星野選手を例にあげると、怒りや不安があるときはプレーが早くなる傾向があります。そんな時に実践していることは、例えばティショットを打ってセカンドショット地点にいったら、ボールの近くにキャディバッグを置かずに、少し離れた位置に置きます。近くに置くとクラブをさっと抜いてすぐに打ってしまうからです。少し離れた位置に置くことで考える時間を与える。この積み重ねで、気持ちを落ち着かせていくのです。

他にはグリーンを外したショットのあとは、敢えてゴルフとは関係のない話をしたり、ミスの後は意図的にゆっくり歩いたりします。星野プロによく声をかける言葉があります。ティグランドにあがったら「ゆっくり素振りをして、ターゲットを決めていこう!」と言います。少しの間を入れて、我に戻るきっかけを与えることで、普段通りのことができるわけです。

調子がいい時というのは放っておいても、流れは悪くなりませんが、調子が悪い時は何かのきっかけを掴まなければ、ズルズルといってしまうことがあります。人は不安を積み重ねることで怒りを生み出します。ぼくらはそれを回避して、選手たちにその時の最高のパフォーマンスを発揮できるように心がけているんです。

Shinchiro Ideguchi
1983年生まれ。ディライトワークス所属。2013年よりプロキャディとして活動をスタート。プロキャディの世界では異色とも言える脱サラからプロゴルフの世界に飛び込んだ。昨年から星野陸也プロをメインにキャディを務め、今シーズンも星野プロを中心に比嘉一貴プロらのバッグを担ぐ予定。2017年には片山晋呉プロの専属キャディとして1年を通して戦い、これがプロキャディとしての大きな機転となった。その後メンタルトレーナーの資格を取得するなど、プロのより良いプレーを引き出すために様々な勉強を積んでいる。


Composition=出島正登