今年のトーナメントはフェーダーが有利!?【プロキャディ出口の目③】

プロキャディの出口慎一郎氏がプロトーナメントの裏側で起きていることをロープの内側から独自の視点でレポートする連載「出口の目」。キャディを務めるプロのことはもちろん、ロッカールームでの他選手の会話や練習場で気になったこと、さらには選手たちのプライベートなことまで様々な切り口でプロゴルフの面白さを伝えていく!


星野陸也プロの「フェードを打たされている」の真意とは?

国内男子ツアーも日本ゴルフツアー選手権が終わり、シンガポールでの試合を入れると7試合が終了しました。自分がバッグを担いでいる星野陸也プロは賞金ランキングでは13位とまずまずの結果だと言えますが、先日その星野プロが「今年はここまでフェードしか打たせてもらっていない」というようなことを話していたんです。

今回はその言葉の意味について自分なりに分析した見解を紹介したいと思います。

基本的に星野プロはドロー系の球筋が持ち球になります。それが「フェードしか打たせてもらっていない」というのは、言い換えると「フェードを打たされている」ということです。理由として考えられるのはフェアウェイの硬さとグリーンの硬さです。今年は例年以上にコンパクションが硬く、フェアウェイではランの計算がかなり難しくなっています。要するに転がり過ぎてラフに入ってしまうというケースが多く、それでボールが落ちてからのランが計算しやすいフェードが必要になるわけです。

今シーズンの優勝者を見てもツアー選手権までの7戦中5戦はフェードヒッターで、ツアー選手権を制した堀川未来夢プロは、ドライバーはドロー系ですがアイアンがフェードを中心に打つ選手です。これらのことからも今年はフェードヒッターが結果を残していることがわかります。

コースセッティングが年々ハードになっていることが理由の一つだと話しましたが、もう一つの理由があるのでは?と自分は感じています。

それはボールの進化です。ゴルフの道具はドライバーやアイアンを含め進化がすさまじいのですが、なかでも進化の速さについていくのが大変だと感じるのがボールです。今年のニューボールが各メーカーともに評価が高く、飛距離を伸ばしている選手も多々います。星野プロもその一人で、平均で20ヤード近く伸びている試合もありました。ただ、それが成績に素直に結びつかないのがゴルフの難しさなのです。

最新のボールは反発が大きく、球離れが早い傾向があります。するとドローヒッターにとっては、少しの振り遅れで右にそのまますっぽ抜けることが多くなる。それを嫌がると、今度は左への引っ掛けになってしまう悪循環に陥ってしまいます。一方のフェードヒッターは、ドローヒッターと比べてスイング的にボールがフェースに長く乗るため、そこまで影響は少ないのではないでしょうか。その差が、今年のここまでのトーナメントでの結果につながっているのでは? というのは自分の見解です。

念のために言っておくと、これはボールの進化が悪いという批判ではなく、そのボールに対する選手達の技術の対応が必要だということです。そのためには道具を見直すというのも方法の一つでしょう。現状は、スイング的に影響が少ないフェーダー有利な構図が結果として現れていますが、ドローヒッターでもいち早くそこに対応し始めれば、ツアー後半戦はまた違った構図になるはず。自分自身もバッグを担がせてもらうプロの手助けになるよう、さらなる検証を続けたいと思います。

Shinchiro Ideguchi
1983年生まれ。ディライトワークス所属。2013年よりプロキャディとして活動をスタート。プロキャディの世界では異色とも言える脱サラからプロゴルフの世界に飛び込んだ。昨年から星野陸也プロをメインにキャディを務め、今シーズンも星野プロを中心に比嘉一貴プロらのバッグを担ぐ予定。2017年には片山晋呉プロの専属キャディとして1年を通して戦い、これがプロキャディとしての大きな機転となった。その後メンタルトレーナーの資格を取得するなど、プロのより良いプレーを引き出すために様々な勉強を積んでいる。


Composition=出島正登