KREVA、MIYAVIとコラボ! 江戸の粋を歌う石川さゆり~野村雅夫のラジオな日々vol.44

現在、関西のFM COCOLOを中心に、DJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、江戸の粋をKREVA、MIYAVIとラップで表現した石川さゆりさん。

石川さゆり、YouTubeチャンネル開設

演歌だけでなく、ポップス寄りのミュージシャンとのコラボレーションもたくさんある石川さゆりさん。主にそうした作品をリリースされるタイミングで、これまで何度か自分の番組にお迎えしてきた経緯があったのだが、FM COCOLOに移ってからは初めてのご挨拶。コンサートを拝見した後に楽屋にうかがう時もそうなのだけれど、さゆりさんはとてもチャーミングに、屈託なく、そして僕みたいなしがないラジオDJにも丁寧に接してくださる。今回は、3月26日に収録し、4月末にオンエアした僕たちのやり取りをお楽しみいただく。

おはようございます。だ〜れだ!?

――(笑)石川さゆりさんでございます!

お邪魔します。

――さゆりさん、チャオ!

チャオ!

――よろしくお願いいたします。

お願いします。

チャオっていいですね。

――チャオいいでしょ? 僕がイタリア系ということで、イタリア語を……

お顔はイタリア系だけど、結構お好み焼きじゃない。

――ハハハ。中身は完全に関西人ですからね。

ねぇ。そうですよね。ホッとしますね。

――そうですか?

はい。

――僕がFM802にいた頃から、何度かこうしてスタジオにお迎えしてきたさゆりさん。今年2020年に入ってから、既にアルバムにシングルにとリリースが相次いで、非常に旺盛だなぁと。

そうですね。すごく楽しい音楽活動と言いますか、色んな音楽仲間と一緒に歌を作っております。

――まずは『粋~Iki~』っていうアルバムが出まして。僕が資料をいただいた時に、まず目が行った名前は、ラッパーのドクターKことKREVA、そして日本が世界に誇るギタリストMIYAVI。何度もゲストに迎えていて、交流のあるふたりですよ。こりゃすごい組み合わせだぞ、って驚いちゃいました。

聴いていただけました?

――はい。

違和感ありました?

――これがね、聴いてみると、ないんです。

「なんや、そういうことか?」と。

――「なるほど!」という感じでしたね。

はぁー、嬉しい。なんかね、皆さんが「えー」って言いながら聴いて、「あーイカしてる。カッコいいじゃん!」って思っていただけるような仕上がりになっていたら嬉しいんです。中身はほんとに日本の、江戸の粋、そういうものを作ってみたいと思って。しかも、ただ三味線だけでペンペンペンっていうんじゃなくて、ちゃんとこの時代の、令和の風の中でそういうものを皆さんにご案内したいと思ったの。それだったら、やっぱりKREVAとかMIYAVIとご一緒しながら、面白がってみようかなぁと。

――だからアルバム1曲目に、いきなり入ってくるわけですよね。『火事と喧嘩は江戸の華 feat. KREVA, MIYAVI』が。

はい。

――スタジオでの様子、レコーディングの様子なんかも映像で拝見しました。

どうですか?

――たとえばMIYAVIがギターを弾いてるのが、レコーディング・スタジオのブースの中ではなくて、皆さんでざっくばらんに話をされている調整室の方だったりして、和気あいあいとされていました。

そうです、そうです。

――「こういうのはどうですか?」って、それぞれアイデアを出し合っているような雰囲気がありましたね。

そうです。「もっと行っちゃえー!」とかね言いながら……そうすると亀田さんが「ちょ、ちょ、ちょ! もう十分だと思います」みたいな。

――そう、亀田誠治さんがプロデューサーをされていて。

亀田さんはね、すごくバランス感覚のある方なので、私たちが暴走しようとするのを一生懸命止める係。

――暴走……フフフ。

フフフ。

――まあ『火事と喧嘩は江戸の華』ですからね!

そうですよ!

――とにかく勢いがあるわけで、そりゃ暴走も辞さない、というか。

そうです。

――それくらいの気持ちで取り組むことが大事で、もちろん亀田さんがそれを冷静に見ながらバランスをとっていくという役割だったわけですね。

「まぁ、さゆりさん、わかるけど、もうこんなもんで」とか言われながら……ハハハ。

――ハハハ。さゆりさんはこれまで、いわゆるポップス畑の人とか、ロックミュージシャンとはコラボレーションをたくさんされてきました。

はい。

――それこそ僕の知り合いたちとご一緒されているのをずっと楽しくみてきましたけれども、どうでしたか、ラッパーは。KREVAは日本が誇るラッパーですが。

そうですね……

――名前の通り、クレバーで、リリックの言葉遣いも、リズムのとり方もすごいし、彼はトラックも自分で作れる人だから、総合的に色々見る目と聞く耳を持っています。ご一緒してみて、どうでしたか?

あのね、正直、こう言うと皆さんのイメージと違うかもしれないけれど……真面目!

――あ! でも、そうなんですよね。

誠実! これはMIYAVIもそうですね。KREVAにしてもMIYAVIにしても、実に紳士ですね。

――パブリックイメージって言いますかね、曲のイメージとか、世に出してくる写真とかを見ると、やっぱり二人ともヒップホップだったり、ロックだったりするから、もちろんカッコもつけるし、かぶくと言うか、自分を大きく見せるというところもあるんだけれども、その実、会うとまったく印象が違うんですよね。

そう。ふたりとも、すごく真摯に取り組んでくれました。「江戸の粋をやってみたいのよ」って伝えて、「イメージはこんな感じ、これをラップにしたらどう思う?」ってKREVAに言ったら、江戸資料博物館やら何やら出かけて、全部観てきたんですって。

――そっから入るんだ!

そっから! 素敵でしょ?

――すごい!

もう、いい奴だぁと思いました。

――きっと、江戸の「粋」って言ってもね、自分が同時代を生きたわけじゃないから、勘違いや上っ面の解釈は良くないだろうということで、調査に出向いたんでしょうね。

そうです。そうです。

――彼らからすると、まずは学ぶところから始めて、というところかもしれませんね。

そうね。学ぶっていうと堅苦しいんだけど、私たちが足を付けて生きているこの地面、この土地で、江戸の人たちも粋に暮らしていたんだよってことを感じるということかな。全然違う場所じゃなくて、同じ場所なんだよね。ここで何が起きてたんだろうね? それを少しでも、感じてみたいのね。

――「粋」という言葉で括りつつ、アルバムにはリプライズも含めて15トラック入っているんですが、面白いのが、クレジットを見ていると、作者不詳ってのが結構あるんですよね。

そう!

――つまり、誰が書いたかわからないけれども、歌われて今に残っている。

そうですね。

――そこにさゆりさんが今、また息を吹き込む。今、おっしゃったことに繋がると思います。誰が書いたかはわからずとも、誰かが確実に……

そう、誰かが……

――暮らしていて、その時代を生きて。

そう。誰かが書いて、誰かが歌ったんです。で、誰かが誰かを歌で口説いてみたり……

――ええ。

そういう歌ですよね。

――そうですよね。

この歌を口にしていた人たちが、生きていたんだ。それがすごく面白くて。でもそれを令和の今に発掘してみて、今またみんなで、いいものはいいね、カッコいいねって検証しながら。でも、自分たちだったら、今の令和だったら、もっとこうしたいよね、っていうそういうものを足したり引いたりしながら。

――そうした歴史のある歌を、KREVAやMIYAVIとの曲でサンドする構成になっているので、今のお話を聞いて、アルバムの骨格が見えてきました。まだ『粋~Iki~』というアルバムを手に取ってない方は、今の話も踏まえて聴いていただけると、「なるほど!」とストンと腑に落ちるんじゃないかなと思います。

――その『粋~Iki~』からはまた随分と雰囲気が変わるのが、シングル『しあわせに・なりたいね』でございます。こちらはアコースティックギターを佐橋佳幸さんが弾いてらっしゃいます。アレンジもされていて。それにしても、アルバムとは随分また毛色が変わりますね。

そうですね。今まで色んな皆さんにかわいがっていただいてる『天城越え』も『津軽海峡冬景色』も『ウィスキーが、お好きでしょ』も、私も色んな歌をいただいて歌ってきましたけれど、もちろんそれは大好きな歌たちなんだけど、今ね、うーん、なんか全部そういう主張なんかが全部落ちて、なんて言うのかな……今暮らしている中で、「やぁ、疲れちゃったな」と思ったり、「どうにかなんないかなぁ。幸せになりたいなぁ」とか、まぁ、そういうみんなの代弁者になれたらいいなぁ、とそんな気がしたんですね。だからテクは要らない。

――歌っていうと、自己表現という側面もあると思うんですけど、今、おっしゃったことも大切ですよね。代弁する、っていう。

うん。そういう歌を、今、歌ってみたいな、届けたいなと、思いました。

――『粋~Iki~』と聴き比べると、さっき僕、毛色が違うと言いましたけど、やはり声色も変わると思うんですよ。

うん。

――つまり、佐橋さんの優しいギターのアレンジに乗ると、歌い方って変わりません?

そうですね。佐橋さんも、私の声を聴きながら、どのギターの音を乗せようかな、って。でも、手数はあんまりいっぱいは要らない。

――そこは、佐橋さん、日本屈指のギタリストだから!

そう。

――持ち前の超絶技巧は、封印して。

要らない。もう限りなくシンプルに。で、みんなが「だよね!」と思うのか、自分がフッと「こう思うんだよね~」とか「そうだ! そうだ!」と合いの手と思うのか、そういう歌。

――決して大きな声で歌うっていうのじゃなくてね。僕もこうやってラジオDJしてるんで、仕事中は声をはったりしますけど……

ええ、ええ。

――自分の一番ナチュラルな感じを引き出される歌というか……

この収録が始まる前に、ちょっと、こう力抜けてたじゃないですか!

――あ、ばらさないでくださいよ! 僕、さゆりさんとスタジオにふたりで入って、あろうことか、完全にオフモードになっていた瞬間がありましたから。

そうそうそう。

――一瞬、完全に気が抜けてましたからね。失礼いたしました。

どうしたの? 疲れてる? って私、聞いちゃったもん。

(二人で)ハハハハハ!

でも、なんかね、人間ってそういう瞬間があって、人に見せるんじゃなく、あ、見られちゃったって。そういう力が抜けた歌なの。

――誰しもありますもんね。そういう時に聴く歌っていうのも必要ですもんね。特にこうしたコロナ禍にあっては、特に必要なのかもしれないなぁって、ふと思いました。

ねー! そういう歌です。

――またこうしてスタジオでお目にかかったり、コンサートを拝見したり、観劇させていただいたり、さゆりさんに直接お目にかかることができるようにと、願っています。今日はどうも、ありがとうございました。

ありがとうございました。


野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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