歌舞伎町で40年近くドラマを生み続けるママ~玉袋筋太郎のスナックミシュラン⑫歌舞伎町・メイク

全日本スナック連盟の会長である玉袋筋太郎さんがスナックを巡り、プロの目線で、ママやお店の評価を下す連載「スナックミシュラン」。日本列島津々浦々、スナックは全国に7万軒もあるというのに「興味はあるけど行ったことがない」なんて人も多いはず……。玉袋筋太郎さんが、ママのキャラ、お店の雰囲気、つまみ、歴史、時にはお客さんの質まで、深い愛情を持って★をつけていきます。  第12回は歌舞伎町で3店舗目となる「メイク」。

今回の取材は、歌舞伎町で3店舗目となる「メイク」さん。歌舞伎町メイン通りの1つ、区役所通りにある大きなビルの中。歌舞伎町で約40年働き続け、常連客には官僚や大臣もいるというママ。会員制と書かれた扉の向こうで、今日はどんな話が聞けるのか。ご時世的なこともあり、話は集客の話題に……。

ネオンを浴びて高めた、土俵際で粘る力

玉ちゃん:どうよ、ママ。

ママ:昨日なんて閑古鳥よ。夜、歩いていても怖いくらい。歌舞伎町はスッカスカよ。

玉ちゃん:それでもこのメイクさんはね、土俵際いっぱい踏ん張れるというママのパワーがあるわけだ。ど田舎から出てきて、この歌舞伎町という泥水の中から這い上がってくることで培ったんだな(笑)

ママ:そうそう。めげてらんないからね(笑)、暇だからアチコチ飲みに行ってますよ。

玉ちゃん:さすがだね、やっぱ不景気な時こそね、そういうお店に顔出してあげるとね、血流が良くなるからね。それが街全体の"粘りの力"の向上に繋がると。

ママ:アフターも行くようにしてるしね。それに、ずっと店にいると頭痛くなっちゃうのよ。

玉ちゃん:そうね、やっぱダメだよね、日に当たらないと。ママの場合は日の光じゃなくてネオンだけどね(笑)

ママ:毎日浴びてますよ!(笑)

銀座の1週間

玉ちゃん:そんな、ネオンの光を浴び続けてきたママは、このメイクを始めて何年なんだっけ?

ママ:もう28年かな。長すぎて飽きられてきたわよ。

玉ちゃん:前は大きいクラブにいたんだよね?

ママ:ええ、独立する前はね。

編集部:ずっと歌舞伎町ですか?

ママ:そうよぉ、40年近くずっと歌舞伎町よ。歳がバレちゃうから計算しなくていいからね(笑)

玉ちゃん:40年近い定点観測だよね。ずっと歌舞伎町にいたわけだから、それはすごいよね。

ママ:どこにも行ったことないもんね。前のママに言われてね、銀座行ったけど、全然水が合わなくて1週間で辞めたわよ。

玉ちゃん:歌舞伎町と何が違ったの?

ママ:お客様もすごい人たちだったんだけど、一番最初にママに言われたのが、お客さんとの話は相槌くらいにして話はするなって。聞かれたら答えるくらいにして、お酒も飲むなって言われたのよ。

玉ちゃん:喋れないし飲めないのか。

ママ:そう、じーっとしてたの。キツかったわよぉ。

玉ちゃん:まぁ、特に昔の銀座はね。格式っていうかね、新宿はカジュアルもカジュアル、大カジュアルだからね。

ママ:そう、その当時の銀座なんて、キャバクラなんて1軒もない時代だったからね。

自称板前と結婚したOL時代

玉ちゃん:そんな時代を経ての今ですよ。今日は体調悪くていないけど、娘さんもいるんだよ。

編集部:娘さんがいらっしゃるんですね?

ママ:そうそう、半年結婚しましたからね。

編集部:半年ですか? どういう方だったんですか?

ママ:嘘つきの自称板前ね。

玉ちゃん:自称って(笑)どういうこと?

ママ:出会ったのがお寿司屋さんだったからね。板さんだと思ってたら、キャバレーのボーイで、その時たまたまバイトで寿司屋に入っていただけだったのよ。その頃、歌舞伎町のことなんて全然知らないしさ。普通にOLだったからね。

玉ちゃん:OL? ママ、OLやってたの?

ママ:そうよ。信用金庫で働いてたわよ。

玉ちゃん:信用金庫のOLが、何がどうなるとこうなるのよ(笑)

ママ:遊びにきただけよ(笑)で、出会ってすぐに付き合って、できちゃった婚ね。そしたら、妊娠8ヶ月くらいの時だったかな。買い物から帰ってきたら旦那の荷物がなくてね。出て行っちゃってたのよ。

玉ちゃん:お腹に子がいるのに?

ママ:そうよ。だから1人で産んだわよ。で、産んだ後に、子供抱いて探しにきてさ。そしたらキャバレーのお姉ちゃんたちがよくしてくれてね。「お前も騙されたのか!」ってね。まぁまぁ、女がいっぱいいたのよ。私との結婚は4回目。子供も6人いたのよ。

一同:えーーーーー!!!!

玉ちゃん:板前界のクヒオ大佐だな。ママ、その時仕事は?

ママ:結婚した時に寿退社してたのよ。だから、そっから歌舞伎町よ。

歌舞伎町で搾乳

玉ちゃん:でも、歌舞伎町で働き始めた時、子供はどうしてたの?

ママ:託児所ね。今はたくさんあるけど、当時は少なくてね、時間も夜中1時までしか預かってくれなかったのよ。だから、24時まで働いて、すぐ帰らないとでね。だからアフターもなしでね。

玉ちゃん:そっかぁ。

ママ:若かったのに、終わったら飛んで帰るから、お客さんは「絶対に男がうるさいんだ」って思ってたわよね。今だったら考えられないけど、当時は子供いるとわかったらクビでしたからね。

編集部:子供がいるとクビだったんですか?

ママ:そうよ、だからずっと内緒でやってましたよ。

玉ちゃん:そりゃ大変だ。

ママ:そうそう! 大変だったのよ。子供産んだばかりで胸が張ってくるから、トイレに行って絞らなきゃいけないんですよ。そうすると、みんなが「あの子はいつもトイレが長い」「何やってるんだ」ってね。

編集部:それはすごいな。

ママ:でも、実際は、そんな悲惨じゃないよ。その時は無我夢中じゃない。それに、いいお客さんにも恵まれたしね。なんとなく気づくお客さんもいてね、「クビになるから内緒にしてね」ってお願いしたら、こっそり玩具を持ってきてくれたりね。

玉ちゃん:タイガーマスクがいたんだねー。

ママ:そうそう、そのお客さんはまだ繋がりありますよ。そうやってお世話になったことは忘れられないよね。

引き継がれるお客さん

編集部:こちらに来られるお客さんは、前のお店からのお客さんが多いんですか?

ママ:そうですね。

玉ちゃん:新しいお客さんもくる?

ママ:まぁ、新しい女の子が入ったら、その子がお客さんを連れてくるってことはありますけどね。あとは、会社は同じだけど、来られてるお客様が定年退職になったら次の部下を紹介してくれるとか。会社は同じだけどメンバーは変わってるみたいなね。

玉ちゃん:引き継がれていくの?

ママ:大体そうかな。「もうそろそろ、俺は定年だから、ここ頼むね」って部下の方にね。

玉ちゃん:おおお、かっこいいね、言ってみたいねー。やっぱりママの人柄とかもあるんだろうね。そうやって引き継がれていくってのわ。

ママ:でも、維持するって大変よね。なんか、前の店とかだと、お店も大きかったし、ママは21時くらいに出勤するイメージで羨ましかったけど。なぜか自分の店になってから、私は誰よりも早く出勤してるもんね(笑)オープンから28年間、毎日18時半には出勤してるしね。

玉ちゃん:背中見せてるねー。ほんと、今日も勉強になりましたね。

編集後記(取材陣の感想)
メイクという店名には、「みんなで作る」という意味が込められている。その意味の通り、お金がなかった独立当初、ご祝儀の変わりに椅子を買ってもらったり、1曲いくらの時代だったので、カラオケを多く歌ってもらって、そのお金で壁紙を変えたりと、まさにお客さんとともに作ってきたお店だ。そのお客さんたちの中には、官僚や大臣になった人もいると言うが、そんな人たちがともに作り、長く愛し、通ってきたのは、やはりママの人柄だろうと思う。

水商売だからと、学校の友達や先生にまで娘が馬鹿にされたことが悔しくて、参観日に毛皮にピンヒールで現れたり、悔しいから経営者になってやると独立をしたママ。そんな優しく、強く、真っ直ぐ生きるママの背中を見て、カッコいいと思った娘さん。辞めてもお客としてお店に来るアルバイトレディ。代々引き継がれるお客さん。

静かに、でもしっかりと、歌舞伎町にもメイクドラマが存在していた。これからも続くだろうそのドラマを見続けたいと思う。

「メイク」を日本語で表現した「化粧」の書が掲げられている。
ママが30年以上通っている美容室「ベラ」 。なんと、玉ちゃんが若い頃、出前のバイトをしていたラーメン屋の2階にあることがこの日の対談で判明!


KEEPING
★★★
「上司から部下へ、引き継がれていくなんて、、、なんてキープ力」

FORMALITY
★★★
「格式の高さが銀座だね」

NAMING
★★★
「店名に込められた意味がオシャレすぎる。メイクドラマ!!」

メイク
住所:東京都新宿区歌舞伎町2-10-6 ピア新宿ビル 5F
TEL: 03-3205-2388
営業時間:20:00~24:00
定休日:土曜・日曜・祝日

Composition=河合昇平(コレロ) Photograph=吉田タカユキ