小山薫堂が考える未来の車とは?


「未来の車はエレベーター」
自動運転の時代はルマンよりアマン

 未来のクルマは、横に動くエレベーターのようになるのかなと思うんです。エレベーターって、ある意味縦に動く自動運転車じゃないですか。あれが横に動き、行き先のボタンをピッと押せば目的地に連れていってくれるようになるんでしょうね。

 運転の楽しさがなくなる心配はないと思っています。絶対に回帰する人が出てきて、レコードのアナログ盤が復活したように、マニュアル運転カーが一目置かれるようになるでしょう。自動車好きは、横方向に動くエレベーターとマニュアル運転カーを使い分ける時代になる、というのが僕の予想です。

 自動運転が100%実現する未来、僕は楽しみにしています。そうなるとクルマって部屋というか、移動する空間になるわけで、クルマを作るのは自動車メーカーだけではなくなるでしょうね。例えばパナソニックがパナホームと一緒に居住空間を考えるかもしれないし、ホテルが空間をプロデュースするクルマが登場するかもしれない。「ルマン仕様」じゃなくて「アマン仕様」とかね(笑)。

気がかりなのは、道が育む文化の問題

 「アマン仕様」みたいなラグジュアリー版が出てくると、夢が広がります。クルマが移動型ホテルになり、豪華客船みたいな自動車旅行が実現しますから。例えば地中海クルーズとか、夕方にポルトフィーノを出港して、ディナーを楽しんで翌朝、目が覚めたらローマに着くというじゃないですか。同じような旅がクルマでもできるようになる訳です。日本だったら、京都で晩ご飯を食べて、お休みなさいってスイッチをピッと押すと車内で目覚めて、そこはもう九州や四国に到着していて、現地で美味しい朝ご飯をいただくとか。

 もうひとつ、自動運転が完璧に実現したら、交通事故はゼロになるはずですよね。クルマのデザインに制約があるのは、安全を確保するためという理由が大きいそうです。でも、ぶつからないんだとしたらどんな形にしてもいいし、そもそも自動運転なんだからハンドルもアクセルもカーナビもいらない。デザイナーは、好きなようにデザインできるのかな。

 すると、デザイナーのアントニオ・チッテリオがインテリアを手がけた、ものすごくカッコいいクルマが出てくるかもしれません。あるいはF1の「マクラーレン・ホンダ」みたいに、「AMG・アルフレックス」的なコラボが生まれたり。

 ひとつ気がかりなのは、道の問題ですね。以前、『ラ・ストラーダ』というテレビ番組を作ったことがあるんですが、道ができて、街道沿いにビジネスが発生して、そこから文化が育まれたわけで。人類と道には密接な関係があるんです。

 でも自動運転になり、道の周りに文化がなくなっていくとしたら、寂しいと思います。自動車がどうなるかを考えることは、道がどうなるかを考えることでもあります。自動車メーカーには、道も一緒に研究していってほしいですね。

小山薫堂
1964年生まれ。放送作家、脚本家。東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科学科長も務める。クルマ好きでこだわりの愛車歴を持つ。雑誌でクルマ連載を持つ。

Text=サトータケシ  Illustration=東海林巨樹

*本記事の内容は16年4月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。 14年4月以降の記事では原則、税抜き価格を掲載しています。(14年3月以前は原則、税込み価格)

小山薫堂
小山薫堂
放送作家、脚本家。1964年熊本県生まれ。『料理の鉄人』など多くのTV番組を企画。脚本を手がけた映画『おくりびと』では、アカデミー賞外国語映画賞受賞。名レストランの経営手腕にも注目が集まる。
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