プロキャディがヤーデージブックを2冊持つ理由とは?【プロキャディ出口の目⑧】

プロキャディの出口慎一郎氏がプロトーナメントの裏側で起きていることをロープの内側から独自の視点でレポートする連載「出口の目」。キャディを務めるプロのことはもちろん、ロッカールームでの他選手の会話や練習場で気になったこと、さらには選手たちのプライベートなことまで様々な切り口でプロゴルフの面白さを伝えていく!


天気予報は6つのサイトを駆使

トーナメント中にプロとキャディが相談しているシーンをよく見かけると思いますが、その時に手にしているのがヤーデージブックです。ヤーデージブックはトーナメントごとに専門の業者がコースで販売していて、それを購入します。そこに練習ラウンドから、いろんな情報を書き込んでいきます。プロはプロでヤーデージブックに書き込んで、それを照らし合わせて相談したりもします。

ぼくらプロキャディの役目は選手にできるだけ正確な情報を与えることと、選手の不安要素を消すことです。ヤーデージブックに書き込んでいる内容は様々ですが、ぼくの場合は2冊のヤーデージブックを持っています。1冊はグリーンの傾斜やラインを書き込んでいるもの。もう1冊はその週の温度、標高などの情報と、各ショットのライ、番手、キャリーの距離を全てデータベースとして書きためているんです。星野陸也選手に関しては2年分くらいのデータベースがすでにあります。

選手の不安要素を消すと言いましたが、試合中はちょっとした不安がスイングに影響を及ぼします。先日のフジサンケイクラシックが行われた富士桜カントリー倶楽部なんかは、標高の影響で通常よりも8パーセントくらいは飛距離が出ます。もちろんプロもそのことは認識しているんですが、自分の中に絶対的な距離感を持っていて、それと一致しなければ不安になるんです。

だから、なぜ飛んだのか、なぜ飛ぶのかという原因をきっちり説明することがぼくらの役目でもあるんです。仮にスイングが原因で飛びすぎたとしても、スイングのリズムを壊さないために、気候が原因だったといい意味で嘘をついたりもするんですよ。そのあたりは選手の心理状況や正確、置かれている状況を加味して伝えますが、その嘘もデータベースがあるから言うことができるんです。迷うことなく、ショットに入るまでのわずかな時間でそれらを整理して伝えなければならないんです。

ショット地点に入って、選手がまず聞くのがピンポジションです。グリーン面のどこに切られているのか。マウンドの手前なのか向こう側なのか。ピンまでキャリーさせた方がいいのかなどをまず確認します。その次に風の向きなどを聞きます。

天候に関しては非常に重要な要素になるのでぼくの場合は6つのサイトを毎朝チェックするようにしています。もちろん、大会側でも公式発表として天候は出されるんですが、それだけを信じることはありません。6つのサイトの平均値をとった上で、さらにそれを100パーセント信じるわけでもないんです。

重要なのはその情報を持っていることで、現場で感じる感覚というものが最も大切な情報になるからです。情報と現場で感じるものとに差が生まれることは度々あります。そんな時は、やはり自分の感覚を信じるようにしています。自分が感じているということはプロも感じていると言うこと。よくあ・うんの呼吸と言いますが、選手の問いに対して、すぐに答えられることであ・うんの呼吸は生まれるものだと思っています。

次回はヤーデージブックに書き込んでいる内容を選手たちにどのように伝えているのか。片山晋呉さんに教えてもらったことなど、もう少し詳しく話したいと思います。

⑨に続く

Shinchiro Ideguchi
1983年生まれ。ディライトワークス所属。2013年よりプロキャディとして活動をスタート。プロキャディの世界では異色とも言える脱サラからプロゴルフの世界に飛び込んだ。昨年から星野陸也プロをメインにキャディを務め、今シーズンも星野プロを中心に比嘉一貴プロらのバッグを担ぐ予定。2017年には片山晋呉プロの専属キャディとして1年を通して戦い、これがプロキャディとしての大きな機転となった。その後メンタルトレーナーの資格を取得するなど、プロのより良いプレーを引き出すために様々な勉強を積んでいる。



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