SOIL & ”PIMP” SESSIONS の音楽性 ~野村雅夫のラジオな日々 vol.6

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回はSOIL&”PIMP”SESSIONS(ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ)の社長がFM802でマチャオがDJを務める『Ciao Amici!』(チャオアミーチ)にゲスト出演!

5月9日にニューアルバムをリリースした新生ソイル

DEATHジャズを標榜し、洗練されながらも挑発的な音楽で、小さなクラブから英国グラストンベリー・フェスティバルまで、屋内外とステージの大小を問わず、オーディエンスの血をたぎらせてきたインストゥルメンタルのジャズ・バンド、SOIL&”PIMP”SESSIONS。

2001年の結成以降、椎名林檎、Maia Hirasawa、RHYMESTER、ジェイミー・カラム、七尾旅人、福原美穂、ぼくのりりっくのぼうよみ、BONNIE PINK、MIYAVIなどなど。国内外の一流どころと次々にコラボレーションして、話題を振りまいてきた。

2016年にはサックスの元晴が脱退し、一時充電期間に入っていたものの、5月9日に11枚目のオリジナル・アルバムとなる『DAPPER』をリリース。三浦大知、RADWIMPSの野田洋次郎、EGO-WRAPPIN’、さらには若手注目株であるyahyel(ヤイエル)の池貝峻ら優れたボーカリストを迎えながら、新体制でのいわば2度目のデビューとして、このうえないスタートを切った。

多くの曲を作り、ステージでは拡声器を持つアジテーターとして空間を盛り立てていくメンバーが、社長。僕は2011年頃から交流があるのだが、スタジオで話すのは意外にも久し振り。実はこれまでとは趣の違うテーマを据えたというアルバムについて、FM802 Ciao Amici! 番組内で、ふたり話し込んだ。

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「お邪魔しております。SOIL&”PIMP”SESSIONS アジテーターの社長です。こうやって仕事で話すのは久し振りなんだけど、ライブなんかでちょいちょい会ってましたもんね」

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――まずは見慣れない英単語と感じる人も多いだろう、アルバムのタイトルについて社長から解説してもらえます?

「DAPPERは直訳すると、小綺麗な、こざっぱりとした、粋な、というような意味で、オシャレな男性を形容する言葉ですかね。画像検索をかけてもらうと、バーバー・スタイルと呼ばれる、髪の毛の横を短く刈り込んで、ポマードでピッタリ七三分けしたような男性の姿が出てくると思います。スーツでバシッと決めてね」

――こういう言葉で収録曲を括ろうとしたのはなぜなんですか?

「最近のファッションとしては、今言ったような意味合いなんだけど、実はかつて、90年代あたりかな、ニューヨークのハーレムに、『ダッパー・ダン』というテーラーがあったんですよ。ここは、スーツを作るんではなくて、有名ブランドの生地をあちこちから手に入れてきて、たとえばトラックスーツを作ったりするわけですよ。それで、背中にはまた違う有名ブランドのロゴを入れちゃったりなんかして。いわゆるブートレグの洋服を仕立てていたテーラーだったわけです。そこの服をHIPHOPのアーティストたちがこぞって着て、レコードの表紙に写ってるんですよ。僕らが敬愛するブラック・ミュージックのルーツのひとつに、そういうブートレグ・カルチャーみたいなのがあるから、そのあたりともリンクした言葉に、このDAPPERはなるのかなと」

――つまりは、単純にクールだっていうんではなくて、オーセンティックじゃないカッコよさというか、混じりっ気のある、どこかうさん臭さも伴った感じだ!

「毒もあるみたいなね」

――今あるものとは違う文脈も踏まえながら、DAPPERという言葉を復権したということになるわけですね。そのアルバム『DAPPER』のリード曲になっているのが、仲間を意味する『comrade feat. 三浦大知』。今回も素敵な仲間が集った1枚になりましたが、ボーカリストを招く基準ってどこにあるんですか?

「インスト・バンドである以上、どういう方とご一緒したいかというアイデアは、メンバーの頭の中に常々あるんです。定期的なミーティングでは、ホワイトボードに書き出しますしね。そういうルーティーンを繰り返す中なかで、今アルバムを作るにあたって、誰がふさわしいのかという問いが出てきます。まずは、アルバムの軸みたいなのを立てるわけですよ。今回の場合は、大人が気持ちよく揺れることのできるアルバム。その命題に合わせて、たくさん作ってあるデモ曲から選び、アルバムに向けて成長させていく作業に入ります。その過程で、この曲にはこのリストの中のこの人がハマるんじゃないかという話題になる。それから初めて、その方と一緒にデモを聴いたりしながら、歌詞を書いていただき、共作が始まっていくんです。これが基本のスタイルですかね」

――歌詞にダメ出しすることってあるんですか? この言葉を変えてくれとか。

「今まではないです。まず歌詞を書いていただく前に世界観の共有をちゃんとしますからね。歌詞はものすごく練ってから届けていただいているはずなんですよ。自分の発声にも合わせて考えてらっしゃるわけだから、簡単にこれは違うとは言えないですよね」

――三浦大知とのコラボレーションについてうかがいます。2017年に彼のアルバム『HIT』が出た時に、僕は彼にインタビューをしていたんですが、そこにはソイルをフィーチャーした『Rise Up』という曲が入っていますよね。あれは子どもたちと一緒に家族で楽しめるような雰囲気だと僕は感じていて、ソイルが大知くんを迎えたら、こういうものにはならないだろうなと思えたんです。あくまでも、三浦大知の作品にソイルが呼ばれているんだなと。そして、今回は逆に、ソイルが三浦大知を迎えた作品になっている。

「この『DAPPER』の中で唯一、彼の場合は参加が先に決まったんです。我々と大知くんでミーティングをして、どういう曲にしていこうかなと考えた結果、セクシーでアダルトな三浦大知を見せることができたらいいなというところに行き着いたんです」

――大知くんは確かにセクシーな男なんですが、彼の場合は長いキャリアがありますから、子ども時代からのファンも大勢いるわけです。今の彼をその延長線上に見ている人もたくさんいる。そうしたかつてのあどけない魅力と離れたところでの色気というものを、彼はまだまだこれから開拓していくことになるでしょう。この『comrade』は、彼のそんな未来像を提示しているような気がしています。

「それは嬉しいな」

――僕は今回のアルバムのコンセプトは素晴らしいと思います。大人が純粋に身体を揺らせて楽しめる音楽。今の日本にはそういうものがちょっと減っているような気がしてならないもので。

ところで、社長。『Ciao Amici!』という僕の新番組のタイトルは、イタリア語で「やあ、みんな」と友達に呼びかけるフレーズなんです。僕は勝手に、社長はアミーチのひとりだと思ってますから。今後ともよろしくお願いしますね。

「Sì」

早速イタリア語で返事してくれるあたり、社長はまさに粋な男=DAPPERだ。
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ソイルは6月から8月にかけて、リリースツアーに出る。札幌、福岡、岡山、広島、仙台、浜松、名古屋と全国を行脚する。大阪は7月8日(日)。DAPPERたちが集うにはもってこいの元キャバレー味園ユニバース。そして、ファイナルは8月1日(水)に、東京・中野サンプラザ。聞けば、大阪の前にはロンドン公演も挟むのだとか。

ちなみに、5月17日(木)20時から放送の僕の東京の番組、InterFM897 KKbox presents 897 Selectorsにも、社長が登場する。そちらでは、社長の音楽のルーツや影響を受けたミュージシャンなど、たっぷりと選曲してもらいながら、また違った切り口で対談しているので、ぜひ聴いてもらいたい。

マチャオとソイルのアジテーター社長とのトークはコチラから

FM802 Ciao Amici!(チャオアミーチ)番組ホームページ 

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野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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