渋野日向子、ケプカ選手に見る、強いプレーヤーの条件とは?【プロキャディ出口の目⑥】

プロキャディの出口慎一郎氏がプロトーナメントの裏側で起きていることをロープの内側から独自の視点でレポートする連載「出口の目」。キャディを務めるプロのことはもちろん、ロッカールームでの他選手の会話や練習場で気になったこと、さらには選手たちのプライベートなことまで様々な切り口でプロゴルフの面白さを伝えていく!


世界のトッププロの一番そばにいるのはメンタルトレーナーだった!

全英女子オープンで渋野日向子選手がやってくれましたね。本当におめでとうございます! 今回の全英女子オープンでは海外メディアも渋野選手の笑顔に関することを多く取り上げていました。

今回はそんな笑顔に関する話をしたいと思います。笑顔は今や渋野選手の代名詞的なものとなっていますが、笑顔にはいいプレーを引き出すとんでもない力が秘められているのです。

おそらく渋野選手の場合、根っからの性格で笑顔が自然に出るのだと思いますが、笑顔になると全身の筋肉が緩む効果があります。すると血流が良くなって体の動き自体が良くなるわけです。ストレスや不安を感じると脳が酸素を足りないと感じて、呼吸が浅く早くなったりします。するとスイングのリズムが崩れたり、プレーのリズムが早くなったりします。

今回の全英女子オープンの3日目の渋野選手も、前半のハーフはあまり笑っていなかったように感じましたが、笑顔が出始めた後半はバーディラッシュになりました。彼女が意識して笑顔でやろうと心がけていたかどうかはわかりませんが、笑顔によっていつもの体の動きができるようになったことは間違いないと思います。

渋野選手のように自然に笑顔が出せない人にとって、笑顔を作ることでも効果はあるのか? と思うかもしれませんが、効果はあります。笑顔によって体の動きが良くなると聞くとフィジカル的な要因かと思いがちですが、実はこれはメンタル面の話で、笑顔を作ることで脳がいい意味で錯覚するわけです。もっと言えば脳科学に近い分野だと言えます。

先ほども話しましたがストレスや不安を感じると脳に酸素が足りなくなります。スイングや攻め方に関していいイメージを作りたいならいい酸素を取り込む必要がある。そのために笑顔というのは非常に効果がある方法で、さらに効果を上げるのであれば腹式呼吸を意図的にするといいでしょう。よく深呼吸と言いますが、あれもいわゆる腹式呼吸の一つで深く長い呼吸をすることで、脳に酸素が供給されて、全身の血流が良くなるという仕組みです。

笑顔に加えて、もう少しメンタルの話をすると先のWGCフェデックスセントジュードクラシックで優勝したブルックス・ケプカ選手には本当にメンタルの強さを感じます。私が海外の試合に行って感心したのはプレーヤーのすぐそばにいるのはトレーナーやスイングコーチではなくメンタルトレーナーだったということです。ケプカ選手もその一人でした。日本ではあまり見ない光景ですが、これから必ず必要になることだと確信しています。

メンタルの世界で最近よく言われていることがあります。世界ランキングに入っている選手の94%が結果を意識しながらプレーしていると言われます。残りの6%は準備と行動のことを意識しているというのです。準備とはイメージ作りやルーティンで、行動とはショットなどを意味します。驚くべきは世界ランキングのトップ10に入っている選手がこの6%の選手だということです。

ケプカ選手は優勝こそできませんでしたが全英オープンで「自分自身は1打のミスもなかった」と会見で話していました。もちろんショットは全て完璧だったわけではなく大きく曲げたことも多々ありました。それでもミスがなかったと言えるのは、準備はすべてできていたということ。勝てなかったのは自分が悪いのではなく相手が強かったらだと言えるのはメンタルトレーニングをしっかりやっている証しだと言えます。

渋野選手やケプカ選手の強さは技術力を引き出すためのメンタルが備わっていることです。次回はメンタルに関する話をさらに詳しく話したいと思います。

Shinchiro Ideguchi
1983年生まれ。ディライトワークス所属。2013年よりプロキャディとして活動をスタート。プロキャディの世界では異色とも言える脱サラからプロゴルフの世界に飛び込んだ。昨年から星野陸也プロをメインにキャディを務め、今シーズンも星野プロを中心に比嘉一貴プロらのバッグを担ぐ予定。2017年には片山晋呉プロの専属キャディとして1年を通して戦い、これがプロキャディとしての大きな機転となった。その後メンタルトレーナーの資格を取得するなど、プロのより良いプレーを引き出すために様々な勉強を積んでいる。


Composition=出島正登