パリに行くなら必見! 没後20年にしてシャルロット・ペリアン時代の夜明けを告げる展覧会

パリの美術館、フォンダシオン ルイ・ヴィトンで来年2月28日まで開幕中の、没後20年となるフランス人女性アーティストのシャルロット・ペリアンの個展が予想をはるかに上回る入場者数を記録している。20世紀を生きたパイオニアの一人であり、世界ではじめてのインテリアデザイナーとも評価される彼女が遺したものとは?


「新世界」の発明、先見のヒューマニティ

建築やデザインの関係者以外で、シャルロット・ペリアンという名前を聞いてピンとくる人は、おそらく日本ではまだまだ少ないと思う。

1903年にパリで生まれたペリアンは、アカデミズムに支配された建築的問題を再提起するモダニズムの開拓者だったル・コルビュジェの著書に感銘を受け、自らそのアトリエの門を叩くと、以降10年間、師の生み出す建築で設備や家具をクリエイト。その後、共にコルビュジェの下で学び日本に戻った坂倉準三の推薦で、1940年には日本の商工省から輸出工芸指導指導の顧問として招聘され来日を果たすと、第二次世界大戦の開戦に前後して約1年間、全国各地の職人を視察。戦後もたびたび東京を訪れ、90歳を記念したポートレートでは親交のあるイッセイ ミヤケを笑顔で着こなし、1993年にパリで行われた日本がテーマの文化フェスでは茶室をデザインするなど(いずれも今回の展覧会で見ることができる)、日本との深い結び付きでも知られている。

1999年に96歳でこの世を去ったペリアン。近年、欧州ではペリアンがデザインした家具は高騰、特に若い世代の間で共感と再評価の声が高まっているという。© Adagp, Paris, 2019 ; © Archives Charlotte Perriand

その上で今回の展覧会を通じてその仕事の全貌を知るにつけ感銘を覚えるのは、全ての作品や考え方が色褪せることなく、現代の私たちが向き合うべき意識改革を示唆していることだ。

家具におけるペリアンの代表作の一つで、木製の布張り椅子しかなかった時代に手がけたシェーズロング(1928年)。今では当たり前の回転椅子も初めて発明したのはペリアン。なお、一部はペリアンの家具の復刻生産を担うカッシーナで入手可。© F.L.C. / ADAGP, Paris 2019 © ADAGP, Paris 2019 © AChP

例えばそれは、人間が自由に存在できて動作に余地を持てるような空間と家具であり、最も美しいアートを自然世界と定義し、周囲の環境を大胆に融合した建築では水辺の家であっても山岳リゾートであっても、現在のように特権階級のものだけでなく、むしろ一般的な人々のために構築した建築システムとスケールでもある。また、最後の富の象徴として目下のところ活況を呈する現代アートに関しても、ペリアンはいち早く"諸芸術の統合”と題して、自らがデザインした家具をレイアウトした空間に、一時期は隣人だった画家のフェルナン・レジェ、画家でもあった師のコルビュジェの絵画を融合させた企画展を、東京・高島屋で開催している。

今回の展覧会でも愛人のドラ・マールも交えて親交があったピカソ、同じ時代を駆け抜けたジョアン・ミロやアレクサンダー・カルダー、日本滞在中に知り合ったイサム・ノグチや勅使河原蒼風に至るまで、20世紀を代表する東西のアーティストたちの作品が自由闊達に混ざり合い、いわゆるインテリアデザイン展の範疇を超えていて、類をみない。

今回の展示では1941年に日本滞在中のペリアンが企画した展覧会を再現。シェーズロングの素材には日本で出合った竹を採用、ここでのアートは名もなき子どもの絵を瀧村美術織物の職人をタペストリーに。© Adagp, Paris, 2019 © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage

この点に関してはフォンダシオン ルイ・ヴィトンのプレジデント付きアドバイザーであるジャン=ポール・クラヴリ氏も「準備期間に4年を費やしたが、ペリアンの活動と交流があまりに多様で、本当に具現化できるか自信がなかった。知れば知るほど、彼女がパイオニアであることを実感していった」と語る。展覧会のタイトルも「Inventing a New World」=「新世界の発明」とし、単純に「世界の発明」としていないところに、開館5年目のフォンダシオン ルイ・ヴィトンが初めて全展示室を通して一人の女性アーティストの個展に踏み切った、ペリアンへの賛辞が感じられるというもの。

すなわち、その全ての根底にあるのは"先見のヒューマニティ"とでも言うべきか。豪邸やタワマンでの暮らしを否定するつもりはないが、一方でAIやロボティクスとの共存がもう程なく当たり前になる今、シャルロット・ペリアンが発明した「新世界」はだからこそいっそう瑞々しく、人間としての私たちが住まいにおいて何を尊厳とし、変わらず残すべきものは何なのかを問いかけてくる。

Crédit artiste : © Adagp, Paris, 2019 Crédit photo : © Fondation Louis Vuitton / Marc Domage
Fondation Louis Vuitton『Charlotte Perriand: Inventing a New World』
会期:2020年2月28日まで
会場:フォンダシオン ルイ・ヴィトン(8, Avenue du Mahatma Gandhi Bois de Boulogne 75116 Paris)
TEL:+33-1-40-69-96-00
開館時間:11:00〜20:00(金曜〜21:00、土曜・日曜10:00〜)
料金:一般 16ユーロ
https://www.fondationlouisvuitton.fr


Composition=岡田有加(edit81)