初級者こそ短編ではなく、長編小説を読んだほうが英語が上達する理由【英語レッスン】

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第38回!     


サッカー以外にも使えるサッカー用語

カランメソッドの先生が、熱狂的なリヴァプールFCのサポーターです。南野拓実選手がデビュー戦を迎える前でも、日本人の私をみつければ「タクミ・ミナミノはいい選手だな!」と声をかけてきますし(デビュー前なのにちゃんとフルネームで覚えていました。移籍のニュースが出た時点でどういう選手か自分で調べているとのこと。本当に熱心です)、リヴァプールが勝った翌週の月曜日などは、日常ではそんなに使わないのでは? と思うようなサッカー用語を、聞いてもいないのに上機嫌で教えてくれます。

ちなみに今週教わったのがこちら

relegated =降格

relegateが「格下げされる」という動詞なので、チームが降格する、という場合は受動態でこのように使います。

The team may be relegated from the Premier League to the First Division.
(そのチームはプレミアリーグから2部に降格になるかもしれない)

辞書には「サッカー用語」としても紹介されていますが、もちろんサッカー以外の日常生活でもこんな風に使えるようです。

she was relegated to a desk job.
(彼女は内勤に降格させられた)

relegated(降格)の対義語はpromote(昇格)となります。これは「出世した」なんて話の時にもよく出てきます。

特にサッカーに興味のない生徒が「先生、マンチェスター・ユナイテッド勝ってよかったね」なんてチーム名を間違えようものなら、リヴァプールのロゴの入った先生私物の真っ赤なペンケースを持ち上げて「違う!リヴァプール!リ・ヴァ・プー・ル、はいRepeat after me」となるので、毎週やっていたら「リヴァプール」の発音だけよくなりそうです。

英文読解は、もっとユルくていい

渡英1年以上が経ちましたが、私の英語は今だに「日常生活に困るレベル」です。レジで店員さんに話しかけれたくないので、なるべくセルフレジを使いますし、アポなしで家に来た電気会社のおじさんが、何を言っているか聞き取れず「今、お父さんがいなくてわかりません」と子供のフリをして追い返したこともあります(36歳なのに)。たまに英語での電話に挑戦しても発音が下手すぎて私の話が相手に一切通じず、「重要な単語だけスペルで言う」手段に切り替えたことも幾度もあります。

それでも、英語でできるようになったことが、ひとつだけあります。

それは「英語で長編小説を読めるようになった」ということです。すなわちよく外国文学専攻出身の方がおっしゃる「ああ、その作品は原文で読んでるから」という、憧れのフレーズを言おうと思えば言うことができる、ということです。

35歳時点で中学英語も忘れ去っていた私からすればこんなことでも大きな進歩なのです。

それは英語教師のクリスが教えてくれた三ヶ条を徹底したからでした。

① わからない単語・フレーズがあってもとにかく止まらない。いちいちその場で調べない

② 情緒的表現、または位置の説明など複雑な解説は、意味不明でもそのまま読み進めてよし

③ 登場人物が何人いて、今読んでいるページで何が起こっているのかだけわかればよし

①に関してはどの教師も口を酸っぱくして言っていました。「お前は日本語の小説を読んでいる時、わからない単語はひとつもないのか?そんなことないだろ。でもいちいち調べないよな?なんとなく、文脈で意味がわかるだろ?」。すなわちいちいち調べているとすごくめんどくさくて、だんだんイライラして読むのをやめてしまう人が多いということです。やめてしまうくらいだったらいちいち調べないで、③の「誰がいて」「何をしている」だけ追いかけていけば、自然とストーリーに引き込まれて、読み切れる、ということなのだそうです。そしてまさにその通りでした。

②に関しては、複雑な表現はそもそも母国語でも理解するのが難しいもので、「いま、ぐちゃぐちゃ言ってるけどこれのことを説明しているんだろうな」くらいで理解しておけばよし、ということです。

ひとつひとつの言葉を必死で選んで作品を作った作家さんからしたら不本意な話かもしれませんが、こんな読み方でも面白い小説は面白く感じられるのです。一方でこの読み方をしているゆえ、語学の試験で出るような「短い論文や新聞記事を2分で読んで要約」みたいなことはまださっぱりできません。

ただ、すべての単語とフレーズをわかろうとしなくていい、大事なのは「読むのをやめないこと」という教えは目から鱗でした。そして実は初心者にこそ、長編小説のほうが、短編小説よりおすすめだというのも驚きですが実感しました。短い作品の場合は、わからなかった単語の意味を推測できるような、コンテクストや情報量が足りていないからです。

「文章を読むことが面白い、そう思えたら、試験に出るような読解問題も頑張ろうと思えるよ」

とはクリスのアドバイスで、これはまだまだリーディングを伸ばすための第一段階であるようです。とはいえ、推理小説など入り組んだ内容の小説はまだまだ全然読めませんが。


MOMOKO YASUI

ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。  


Illustration=Norio