ぜひ名前を覚えて欲しい! J・ジューンワタナノンド選手【プロキャディ出口の目④】

プロキャディの出口慎一郎氏がプロトーナメントの裏側で起きていることをロープの内側から独自の視点でレポートする連載「出口の目」。キャディを務めるプロのことはもちろん、ロッカールームでの他選手の会話や練習場で気になったこと、さらには選手たちのプライベートなことまで様々な切り口でプロゴルフの面白さを伝えていく!


飛距離最優先の考え方からの脱却

今年の国内男子ツアーで賞金ランキングトップ(※データはすべて日本ゴルフツアー選手権終了時点)を走っているのがジャズ・ジェーンワタナノンド選手です。タイ出身で『SMBCシンガポールオープン』で優勝を飾っています。今回は彼について少し触れたいと思います。

星野陸也選手のバッグを担いだ『日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップShishido Hills』の最終日に同組になりましたが、彼のゴルフは本当に素晴らしいんです。簡単に言ってしまえば「飛んで、曲がらないゴルフ」。そんなの最強に決まっていると半信半疑になりますよね。

でも、平均ストローク、パーキープ率、トータルドライビング、リカバリー率が1位で、パーオン率が2位、ドライビングディスタンスは300ヤードなんです。賞金ランキング1位を走っているのも納得できますよね。さらにアジアンツアーでも賞金ランキングがトップなんですから、今年は彼の年になるかもしれませんね。名前のジャズは父親が音楽のジャズ好きだったことが関係しているようです。性格は楽観的で、スイング的には「本当によく振るな」という印象を受けました。

彼の活躍が証明していることがあります。それは飛距離最優先の考え方からの脱却です。最近のゴルフ界は世界的に飛距離に比重が置かれている傾向があります。もちろん飛ぶことは重要な要素ですが、それが勝つためのすべてだとは限りません。全米プロでのジェーンワタナノンド選手の活躍がそれを証明しているように、ショットやアプローチの精度を上げることで規格外の飛距離を出せなくても世界で戦えるはずなんです。

ペブルビーチで行われた全米オープンで日本人選手は松山秀樹プロ以外は残念な結果になりましたが、技術的レベルではそこまで世界との差が出るはずがないんです。その理由の一つはスケジュールの問題。要するに時差ボケですね。平均的には1〜2時間の時差でも通常の状態に戻るには丸1日はかかると言われているため10時間の時差があれば1週間はかかるということになります。それでは試合が終わってしまいますよね。

あとはメジャーの出場をかけた予選会が日本でも行われますが、そのコースと実際のメジャー開催の舞台に差がありすぎるように感じます。そこの差をもう少し埋めることができれば、違った結果がついてくるのではと感じています。

ジェーンワタナノンド選手の今年の活躍は日本人選手にとって大いに参考になる部分が多いと思います。自分自身も様々なことを見直すきっかけを彼のプレーを目の当たりにして感じることができました。

Shinchiro Ideguchi
1983年生まれ。ディライトワークス所属。2013年よりプロキャディとして活動をスタート。プロキャディの世界では異色とも言える脱サラからプロゴルフの世界に飛び込んだ。昨年から星野陸也プロをメインにキャディを務め、今シーズンも星野プロを中心に比嘉一貴プロらのバッグを担ぐ予定。2017年には片山晋呉プロの専属キャディとして1年を通して戦い、これがプロキャディとしての大きな機転となった。その後メンタルトレーナーの資格を取得するなど、プロのより良いプレーを引き出すために様々な勉強を積んでいる。


構成=出島正登