ブルネロ クチネリの服がフレッシュに見える理由

自身が手がける服を‶5歳若く見える服"と表現するブルネロ・クチネリ氏が、清潔感と好感度を高めてくれる。フレッシュに見える服装術のヒントを紹介。

‶5歳若返る"ファッションの秘密ちは?

ずは写真を見てほしい。ブルネロ・クチネリ氏が展示会を行う際、必ず撮影するという集合写真。そこには20代の若手から60代のクチネリ氏まで、さまざまな世代のスタッフが写っている。そして皆ブルネロ クチネリの服を着ており、年齢差を感じさせることなく、一様に魅力的だ。

同ブランドの服はシックな色使いやベーシックなデザインが特徴であり、むしろ控えめで落ち着いた雰囲気がある。決して若者が好むような、目を引く色柄や奇抜なデザインではないのだ。にもかかわらずフレッシュに見えるのは、なぜなのだろうか。

「確かに〝5歳若く見える服〞は、私がずっと追求してきたテーマのひとつです。なぜなら〝若々しいですね〞という言葉は、大人にとって最高の賛辞だからです。しかしながら、特定の年齢の人を無理やり若く見せるような服を作るつもりはありません。私が心がけている〝若く見える服〞とは、服自体が若く見えるわけではないのです」

ブルネロ クチネリの服を着たスタッフに感じる若さとは、服そのものから発せられるものではない。それはいわば、着用者の雰囲気や佇まいから醸しだされる若さ。すなわちブルネロ クチネリの服は、若さをアピールする服ではなく、着用者自身の若さを引きだす服なのだ。

「私は常に、自分の年齢を楽しめない人の服は作りたくないと思っています。大切なのは、自分自身の年齢を尊重し、年齢に応じた若さを保つこと。そう、若さとは肉体的なものだけではなく、精神的なものでもあるのです。私の服はそんな年相応の魅力、若さを引きだす服でありたい。そのためには色柄やデザインに加え、素材感やシルエット、さらには細部の着こなしまでが重要になってくるのです」

無理に若ぶらず、今の自分を受け入れ、いくつになっても相応の若さは保つことができると知る。そして今ある自分の若さを表現するにふさわしい服を吟味し、ちょっとした着こなしにまで気を配る。それがクチネリ氏の実践する、フレッシュなファッションの秘訣なのだ。

「若いスタッフはパンツを低い腰位置にし、丈をかなり短めにしますが、それを私が真似たら若ぶって見えるだけです。同じパンツでも、65歳の私にふさわしい着こなしがある。そうしたことをいつも自問しているのです。そして魂を若く保つために、知的好奇心や夢を抱き続け、成長し続けたいと願っています」

Brunello Cucinelli
1953年イタリア・ウンブリア州生まれ。学生時代に当時革新的だったカラーカシミアを発表し、’78年に創業。本社ソロメオの修復事業と自社を上場企業へと成長させた経営者でもある。

Direction & Interview=島田 明 Text=竹石安宏(シティライツ)  Photograph=MASSI NINNI