究極のZEN体験! 南木曽の隠れ宿「Zenagi」が起こす "ラグジュアリー革命"

木曽路はすべて山の中である。かの文豪・島崎藤村がそう記した頃より時を経て、木曽、さらには中山道がにわかに注目を集めている。なかでも南木曽(なぎそ)は、手つかずの自然が残る貴重なエリア。その地の魅力を余すことなく伝えるべくオープンしたホテル「Zenagi」では、日本本来の豊かさに根ざした真のラグジュアリー体験が味わえる。


心と身体を揺さぶる1日3組の宿

南木曽に残る江戸時代の古民家を改築し、1日3組限定の宿として昨年4月に開業した「Zenagi」。世界中の奥地に赴いた映像ジャーナリストであり、アウトドア観光開発を地方創生につなげるMENEXの代表としての顔も持つ岡部統行さんが、ここに次なるビジネスの白羽の矢を立てたのは、日本の田舎の持つポテンシャルに惚れこんだからだ。   

「一見何もないように見えて、実はすべてがそこにはある。本当の意味での豊かさを、南木曽で見つめ直して欲しいと思ったんです」

Zenagiの根幹をなすのは、4つのZENだ。古くから木曽にあった臨済宗の“禅”寺をイメージし、訪れた人の呼吸が整うような空間を演出すること。山や川などの大自“然”のありがたみを伝えること。地元で採れる食材による“膳”でもてなすこと。そして、地方創生という“善”を行うこと。南木曽で体感できるそれらのZENにちなみ、Zenagiという名前がつけられた。 

木曽に縁のある素材をふんだんにした内観が、豊かな土地を物語る。

「内装も料理もすべて、地域に根づいた文化を伝える手段として考えています」と岡部さんが語るように、館内のいたるところで木曽の特徴が顔を覗かせる。たとえば壁紙には銅を練り込んだ和紙を用いるが、銅も和紙もこの地の名産のひとつ。漆で拭き上げた床は、木曽一帯の漆文化にリスペクトを示したものだ。

静謐なロビーに置かれた一風変わったデザインの椅子は、岡部さんがデザインし、地元の木材を使って地元の職人が手がけたもの。「横にすると、木曽のKがふたつ重なったように見えるから、KKファニチャーと呼んでいます」(笑)。それらが古き良き江戸の建造物と織りなすさまは、懐かしさと贅沢さを湛えた不思議な調べを奏でる。

岡部さんが発案し、地元の木材で地元の職人が作り上げた椅子。

ミシュランのスターシェフが監修するコース料理も見どころだ。地元産の熊や野菜をはじめ、地産地消をベースに考えられた絶品が並ぶ。また、それらを盛りつける皿にいたっても圧巻。改修前の館に隣接していた蔵に収められていた漆器などが実際に使われ、なかにはネズミに齧られた痕のある酒器なんていう変わり種も飾られていた。  

ミシュランスターシェフ監修のディナーは、和と洋のコースからチョイス可能。

そしてさらにもうひとつ、極上の“田舎体験”が。南木曽の自然を満喫できるスペシャルアクティビティこそ、Zenagiの真骨頂といっても過言ではない。実はZenagiは、岡部さんがアウトドア仲間とともに立ち上げた施設。運営メンバーにはシドニーオリンピックのカヌー競技代表の安藤太郎さん、パラグライダーのアジアチャンピオン呉本圭樹さん、元スノーボード日本一の茶原忠督さんらが名を連ねる。ゆえに、彼ら日本のトップアスリートたちが本気で考え抜いた野遊びを体感できてしまうのだ。   

季節や体験者の希望に応じてアレンジされるアクティビティは、全部で10種類を超える。そのなかで特に人気なのが、水面が天然のエメラルドグリーンに染まる柿其(かきぞれ)渓谷でのシャワークライミング。宿から車で30分、通常は入れることのできない国有林の先に、絶景スポットが広がる。 

ガイドとともに専用のスーツを纏い、時に岩をまたぎ、沢を泳ぎながら登る。最奥部には、花崗岩をくり抜いてごうごうと流れ落ちる霧が滝。その勢いを受け、水上で仰向けになれば、沢の流れでゆっくりと身体が押し運ばれ、視界の先の空と雲が流れていく。時間を忘れ、極めて日本的な木曽の美しい自然と一体化するような感覚に、心と身体、そして遺伝子さえも揺さぶられるのだ。  

流れに身を任せ時が経つのを忘れる、柿其渓谷でのシャワークライミング。

それらの仕かけすべてが、来訪者に訴えかける。本当のラグジュアリーとはなんだろうと。気軽に世界中のものが手に入るネット環境に囲まれ、高層マンションの最上階に住むのが真の贅沢なのか。まごうことなき日本の田舎である南木曽には、日本人の本能に訴えるかのような豊かさがあるではないか、と。    

Zenagiの使命を岡部さんに言わせれば「ストーリーテリング」となる。つまりは、南木曽本来の姿をわかりやすく説明すること。    

「正直、我々もまだ勉強中なんです。もしかしたら、南木曽についての学びは一生終わらないかもしれない。でも、一度は田舎の声に耳を傾けて欲しい。その時、あなたにとっての"ラグジュアリー"という概念がきっと変わるはずですから」

MENEXの運営メンバー。左から安藤太郎さん、茶原忠督さん、岡部統行さん、呉本圭樹さん。


Zenagi
住所:長野県木曽郡南木曽町田立222
料金:1泊3食1アクティビティ付き¥120,000〜(税・サ別)
https://zen-resort.com
※3月中旬まで、レストラン拡張工事のため部分的に閉館。


Text=増山直樹