進化する伝統工芸をまとったカーライフを!  「Kiwakoto」本店が京都に誕生

出世や快楽のためだけに仕事に情熱を持ち続けるのは、ほとんどの場合、どこかで限界がくる。だからこそ孫の世代のために、というようなソーシャルなビジネスに出合うと、その物語と揺るぎない原動力に共感を覚えるものだ。


きわこと(際殊)=格別である様

2019年4月、京都・河原町二条の交差点のコーナーという抜群の立地に本店をオープンした「Kiwakoto(きわこと)」は、多くが深刻な継承者不足にあえぐ伝統工芸の技術を次の時代につなぐため、各分野先鋭の職人たちと協業。第一に"誂え"の文化を受け継ぐべく車の内外装のカスタマイズ、第二に普段使いもできる各種プロダクトを開発するブランドとして、2018年にスタートした。

きわこと(際殊)、とは古語で「格別である様」を意味。京都を中心にBMWやメルセデス・ベンツをはじめ数々の輸入車や国産車の正規ディーラーを運営するマツシマホールディングスが立ち上げたこともあり、伝統工芸をまとったカーライフを通じて現代人のライフスタイルをまさに格別なものにしたいという強い意思が込められている。

友禅染革のキーケースや名刺入れ、iPadケースやバインダーなど、リアルに使える雑貨も

そんな格別を体現し、京の文化人たちの粋なライフスライルに応えるかたちで発展してきた伝統工芸だからこそ遊び心のあるものを生み出したいとする「Kiwakoto」を象徴するプロダクトの筆頭が、このほど発表された「野点セット」。

本店で行われたオープニングレセプションでは、建仁寺塔頭両足院の伊藤東凌氏と「仙康宗達」の茶名をもつTakramの渡邉康太郎氏が、この野点セットでそれぞれの個性をもってお点前を披露する一幕も。

伊藤東凌氏のお点前より、右がミニ茶釜で、手にしているのが黒楽茶碗
ラフな出で立ちで「お作法はほどほどに楽しむ茶湯があっても」という Kiwakotoのメッセージを伝えた渡邉康太郎氏

総監修と愛らしい湯気をあげていたミニ茶釜の制作は京釜師の3代目「吉羽與兵衛」によるもので、手取釜の意匠を基に焼漆仕上げの釜肌や桑の持ち手などは伝統的な手法でありながら、聞けば「その昔鉄の鍋に陶器替蓋を合わすという細工から着想を得て、今回は小鳥を蓋の取手にしてみました」と洒落っ気も。

ほか、傍の黒茶碗は千利休の茶道を継承した楽焼の110年続く「帰来窯」の4代目佐々木虚室が、伝統的な釉薬を手びねりで仕上げた現代的な意匠の茶碗に施し、ところどころ窯変部分で風にそよぐ青竹を表現。さらに京焼の茶碗から桐の収容箱まで、言わばKiwakotoオールスターズの共演に物語は尽きない。

また、店内中央に展示されたBMWのインテリアには西陣帯箔の技法によって特別に仕立てたレザー張りのカーシート、ドリンクホルダーには京焼・清水焼の「丈夫窯」と開発したクルマ仕様の花器に花が生けられたりと、もれなく遊び心をくすぐられるものが。ちなみに先の野点セットも「ドライブに持ち出して」というのが、ブランドの心粋だ。

花器(¥30,000)に生けられた花はオートクチュールの予約制花屋 ARTISANS flower worksによる

一方でオープンを記念した新商品は"京都と他の産地とのコラボレーション"をテーマに、やはり「Kiwakotoの姿勢に共感して」と話す日本を代表するテキスタイルデザイナーの一人、梶原加奈子がディレクターとして参画。

シルクブランケットは大阪泉大津にあるシルク起毛加工のスペシャリスト「瀧芳」と京都で高級糸を専門に手がける「にしき染色」が、シルクカシミアストールは富士北麓で天然素材の極細糸を織る「武藤」と京都で複合的加工を得意とする「西田染工」がコラボレート。テキスタイルの魅力を最大限引き出したプロダクトがラインナップに加わった。

見るからに上質なシルクブランケットは全3色(¥27,000)
繊細なグラデーションのシルクカシミアストールも全3色がそろう(¥46,000)

なお、「Kiwakoto」は2018年から年々熱気を増す「KYOTOGRAPHIE」の協賛スポンサーに名を連ねているが、前述のマツシマホールディングスは地元京都の企業として最初にこの写真祭の協賛したことでも知られる。そこには京都を盛り上げたいというもう一つの強い意志が見て取れる。

すなわち、いま受け継ぐべきは京都に息づいてきた日本が誇る職人たちの技術のみならず、いつの時代も彼らを支えてきた私たち大人の粋でもあるのだ。


Kiwakoto本店
住所:京都市中央区河原町通二条上る清水町359 ABビル1階
TEL:075-212-0500
営業時間:10:00〜19:00
休み:不定休


Text=岡田有加(edit81)