ママに嵐のたとえもあるぞ サヨナラだけが人生だ~玉袋筋太郎のスナックミシュラン⑧『スナック玉ちゃん』

全日本スナック連盟の会長である玉袋筋太郎さんがスナックを巡り、プロの目線で、ママやお店の評価を下す連載「スナックミシュラン」。日本列島津々浦々、スナックは全国に7万軒もあるというのに「興味はあるけど行ったことがない」なんて人も多いはず……。玉袋筋太郎さんが、ママのキャラ、お店の雰囲気、つまみ、歴史、時にはお客さんの質まで、深い愛情を持って★をつけていきます。  第8回は玉袋自身が経営する東京・赤坂『スナック 玉ちゃん』。     

ついに今回は、玉袋さんのお店「スナック玉ちゃん」へ! 23歳でスナックのママになり、スナック玉ちゃんのオープンからの歴史、すべてを知るママに玉袋さんとスナックについて話を聞いた。  

出会いと別れの人生

玉ちゃん:さて、今回はスナック玉ちゃん赤坂店。ついにウチのママちゃん、沙耶ちゃんでございます!!

ママ:こんばんはー(笑)

玉ちゃん:ウチの沙耶ちゃんはね、約2年半ウチのお店でママをやってくれたんだけど、なんと! たかが2年半で赤坂に伝説を残して、しかも、その沙耶がもうこの店を去ってしまうというね。

ママ:さよならー。

玉ちゃん:軽いね。

ママ:いやいや、でも、寂しいですよね。

玉ちゃん:悲しいよね。

ママ:うん、めっちゃ悲しい。

玉ちゃん:まぁ、これはね、出会いと別れがあるのが人生ということでね。

飲みの感覚

編集部:ママ、それまでガールズバーで働いていて、急にスナックを任されるって、抵抗なかったんですか?

ママ:抵抗というか、大丈夫かなという気持ちでした。スナックにも行ったことなかったから、一度見てみたいとか言ってたんですけど、「新しい感じでやりたいから自由にやれ」って言ってもらえたんで、のびのびやらせてもらえたのは良かったと思います。

編集部:スナックに行ったこともなかったんですね

玉ちゃん:そう。でも、この子は、スナックの感じが肌でわかっちゃうんだよね。それに、仲間になってからの、こういう液体(酒)の溶け具合は早いわけよ、俺と沙耶は。

ママ:それ! それが一番よかったの。玉さんと私は、飲みの感覚が一緒なんですよ!

玉ちゃん:だから、二人でもよく飲みに行くもんな。

ママ:うん、行く行く。そして記憶をなくす(笑)

玉ちゃん:いや、ほんと、一番一緒に飲んだんよな。

ママ:うん、死ぬほど飲んだ(笑)

玉ちゃん:だから寂しいよね。店にもアルバイトレディーの人とかいるんだけど、沙耶が誰よりも若くてさ。それでも、頼り甲斐のあるママなんだよね。

山口百恵システム

編集部:普通、この若さでスナックのママやってる人って、なかなかいないと思うんですけど、スナックのママをやっていて良かったことってありますか?

ママ:スナックのママをやって良かったってことよりも、玉さんと働いて良かってっていうのはいっぱいありますね。

玉ちゃん:例えば?

ママ:やっぱり出会いがめっちゃ多いし、お客さんがめっちゃいい人すぎて……。で、いい人がいると、いい人しか来ないんですよ。スタッフもお客さんもいい人で、そのサイクルがいいんですけど、それはやっぱり玉さんのおかげなんですよね。なので、本当にありがとうの気持ちでいっぱいなんです。

玉ちゃん:でもね、そうやって俺きっかけで来てくださるお客さんもいるんだけど、俺も毎日来れるわけじゃないんだよね。それでも、沙耶とウチのスタッフがいれば、今宵一夜は楽しかったって言って帰ってくれるという店作りが出来たんだよね。これは感謝してもしきれないよ。だって、俺がいる日よりも、俺がいない日の方が売上いいんだもん(笑)。沙耶は絶好調だもん。絶好調のうちに辞めていくっていうキャンディーズシステムね。山口百恵システムか(笑)

ママ:はい、マイクを置きます。離さないかもだけど(笑)

編集部:じゃ、沙耶さんが好きで来るお客さんもいるんじゃないですか?

玉ちゃん:そりゃ多いよね。でも、沙耶から派生して、この店を好きになってくれる人がいるっていうことが大事だよね。

ママ:そう、ほんと、それ。私がいなくても、玉さんがいなくても来てくれる人がいいよね。本当に愛してくれてるなって感じ。

玉ちゃん:そういった場所でね、2年半共に過ごせたっていうのは人生の宝だよね。

ママ:いやー、ほんとに仲良くしていただいて、嬉しいです。

涙からの顔出しボーーーン!

玉ちゃん:最初のうちはさ、岐阜のお父さんお母さんの関係で、顔出しNGだったんだから。俺らも、それをどうやって雪解けさせて、来てもらえるようにできるかって考えて、アルバイトのような腰掛じゃない設定をちゃんと作ったんだよ。社員にして社会保険も入ってとかさ。そうすると本人の責任感とか違ってくるんだよね。

編集部:顔出しNGだったんですか?

ママ:そう、顔出しもしてなかったんですよ。でも、玉さんたちが、「お店に呼んでおいで、説得してあげるから」って言ってくれて。

玉ちゃん:俺としては、その時は土下座しようと思ってたよ。娘さんをこういう世界に引っ張り込んじゃったからね。俺は、こういう世界に後ろめたさはないけど、お母さんにはね。でも、お母さんは「助かります」ってさ。

ママ:そうそう、むしろ逆の反応だったよね。

編集部:それで、晴れてこのように顔出しするようになったと。

ママ:そうそう、それから顔出し、ボーーーーン!!

玉ちゃん:この写真気に入っちゃってるからねw

ママ:でも、ママにも「こんなに沙耶のことを大事にしてくれる人、沙耶も大事にしなくちゃダメだよ」って言われて、ね。

玉ちゃん:あの日は泣いたな。

ママ:すぐ泣くの(笑)

玉ちゃん:そりゃ、自分の息子と沙耶が同い年だからさ。親御さんの気持ちもわかるしね。そりゃ泣くよ。みんな泣いちゃってダメだったな、あの日はな。でも、そこもいいんだよ。人間なんだよ。

ママ:母が来るってなって、常連さんとかみんな来てくれたんですよ。

編集部:えー、嬉しいですね。

玉ちゃん:そうなんだよ。その常連さんがみんな、お母さんに「沙耶ちゃんが好きだ」って言ってくれんだよ。その姿を見てるだけでウルっとくるもん。

編集部:いい店ですねー。

玉ちゃん:いい店!だよね。ほんと、そう思うよ。まあ、沙耶は辞めちゃうけどさ、最後は万歳三唱だよ。


編集後記(取材陣の感想)
玉袋さんと沙耶ママ。二人を見ていると、親子ほど年は離れているが、仲の良い兄弟や親友のような微笑ましく温かい印象を受けた。インタビュー中、沙耶さんは「ガールズバーと違って、スナックは人と人。年齢も肩書きも関係なく、お客さん同士が繋がれるのがいい」と言っていた通り、ここには人と人が心を通わせる、誰にとってもホームのような温かさがあると感じた。

中国に残る漢詩 『勧酒』 を、
井伏鱒二はこう意訳したという。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
「さよなら」だけが人生だ

美しき花もいつかは雨風にさらされるように、人生には別れがつきもの。一期一会の一杯こそが人生なのだ。SNSや都会に疲れたら、ぜひこのお店に寄ってもらいたい。もしかすると、かつて「スナック玉ちゃん」でママとして満開の花を咲かせた沙耶さんがお客として来ているかも。 

TEAM WORK
★★★
「俺がいなくても、ママが寝ていても回るシステムなんだな」

HOME
★★★
「誰もが故郷と感じるほどの人間ぽさがこの店にはあるんだ」

TALK
★★★
「そりゃ、芸人だからね。喋りは任せてよ」 

スナック玉ちゃん  赤坂本店
住所: 東京都港区赤坂4-2-3 ディアシティ赤坂B1F 102号
TEL: 03-6277-6688
営業時間:20:00~LAST
定休日:土曜・日曜・祝日    


Composition=河合昇平(コレロ) Photograph=吉田タカユキ

玉袋筋太郎
玉袋筋太郎
1967年6月22日、東京都新宿区生まれ。実家はスナック。高校卒業後にビートたけしに弟子入りし、1987年に水道橋博士と漫才コンビ「浅草キッド」を結成。社団法人全日本スナック連盟会長も務め、『浅草キッド玉ちゃんのスナック案内』などの本を手がける。
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