リシャール・ミル 世界を飛び回る「時計界の寵児」の地元を守るレンヌの“ママン” スーパー秘書は既成概念を吹き飛ばす「私にしかできないことを!」vol.03

ボスのスケジュール管理、社内調整などをベースにしながらも、「その先」をボスは秘書に求めている。そしてそれに応えるべく、秘書たちは懸命に独自の仕事術を模索していた。今まさに、秘書の新時代が到来!? 一歩も二歩も先を目指す、新たなる秘書の世界の第3弾!

気を遣う人だからこそ気を遣わせないように

CEO リシャール・ミル(写真左) 秘書・アシスタント デビー・ゴードン(写真右) イギリス出身。1994年から家族とともにフランス・レンヌに移住。「英語ができる人を探している」と友人に言われリシャールに会い、その3日後に秘書となった。

「リシャールは、上司や同僚というよりも友人とか家族みたいな存在。お互いをプロフェッショナルとしてリスペクトしているし、一緒に笑ったりしている時間が楽しいんです。忙しかったり、大変だったりすることもあるけど、ストレスに感じることはほとんどありません」
 独創的な機構や素材を用い、誕生からわずか10年で時計業界のトップブランドとなった『リシャール・ミル』。秘書のデビー・ゴードンさんは、ブランドの立ち上げ時からリシャール・ミル氏の片腕としてその急成長を支えてきた。彼女が働いているのは、GOETHE10月号で紹介したフランスの地方都市、レンヌにあるリシャール氏の自邸の一角にあるオフィス。マーケティングオフィスはパリにあるが、リシャール氏のスケジュールや在庫の管理は、彼女が行っている。
「もともとは専業主婦で、働く気はありませんでした。でも友人の紹介でリシャールに会ったら、『イヤならすぐに辞めてもいいから』と言われて、手伝うことになったんです。最初はふたりっきりで、広告や販売など、あらゆる業務をやりました」

「以前プロトタイプの時計をつけていたら、変色してしまった。それを見たリシャールが“本物”を渡してくれたんです」


 毎朝8時半出社、18時過ぎまでが勤務時間だ。今や世界規模で大人気の『リシャール・ミル』の在庫、流通の管理はすべてデビーさんを通して行われている。「こんなにブランドが大きくなるなんて、想像もしませんでした」と語るデビーさん。アーティストであり、エンジニアでもあるボスと付き合うのは、大変そうだが……。
「リシャールは、いつも誰に対しても自然体。彼は、みんながハッピーでいるために、誰よりも気を遣っています。だから私の役割は、彼に気を遣わせないことだと思っています。レンヌに帰ってきた時は、リラックスした気分でいられるよう、気をつけているつもりです」

職場と自宅の距離は約3km。愛車のまつげつき(!)「アバルト500」で通勤する。

 大学生の娘が独立し、現在はカメラマンの夫とふたり暮らし。
「のんびりするために田舎に引っ越したのに、10年も働くことになってしまいました(笑)。早く専業主婦に戻って、庭いじりをしたい気持ちもあるけど、今は離れられない。だって『リシャール・ミル』は、私の子供みたいなものですから」

130haもの広大な敷地内にあるオフィスがデビーさんの職場。森、池、小川など自然に囲まれた環境は心地よく働けそう。「リシャールは世界を飛び回っているから、ここにいるのは月に1週間くらい。普通はボスがいると緊張するのかもしれないけど、彼の場合は逆。私たちをリラックスさせてくれます」

Text=神舘和典、上阪 徹 Photograph=星 武志、岡村昌宏

*本記事の内容は14年8月取材のものに基づきます。価格、商品の有無などは時期により異なりますので予めご了承下さい。
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