【京都】豊かな"とき"と"食"を体感できる「南禅寺参道 菊水」とは?

芸術品のように美しい庭園と風情ある佇まいで知られる『南禅寺参道 菊水』。昭和30年の開業以来、料理旅館として多くの食通や賓客をもてなしてきた。そんな京都の老舗が、2018年に新たなスタートを切った。名庭師・七代目小川治兵衛の信念が宿る庭と、その庭に呼応する客室や室礼。豊かな"とき"と"食"を体感できる和のオーベルジュを紹介しよう。


南禅寺の参道に佇む和のオーベルジュ

京都屈指の美術館やシアターがあり、京都のなかでもアカデミックなエリアとして知られる岡崎。700年以上の歴史をもつ南禅寺の参道に「菊水」は佇んでいる。参道から静かな細道を進むと、凛とした暖簾がかかる門に迎えられる。玄関までのアプローチには打ち水がされ、風情ある数寄屋建築が目前に。その佇まいを目にした途端、気持ちがすっと落ち着いていく。

現代アートをさりげなく飾った廊下を歩み案内されるのは、緑鮮やかな日本庭園が目前に広がるメインダイニングとテラス。美しい庭園を前に座ると、ゆっくりとした時間が流れ、瞬時に日常から遠ざかる感覚に。

凛とした暖簾がかかる門

「南禅寺参道 菊水」は、呉服商の別邸として明治28年頃に建てられたという。その後、料理旅館として時を刻み、2018年6月、新たなステージへと歩みを進めた。名庭師として語り継がれる七代目小川治兵衛の庭園や趣ある茶室や離れはそのままに、モダンスタイルの客室や、「菊水キュイジーヌ」をコンセプトにした新たな食を加え生まれ変わったのだ。

近郊の食材を用いた「京の洋食」

リオープンからわずか1年のこの宿が「和のオーベルジュ」と高く評価されるのは、「食」の革新に力を注いだことが大きい。

和食は、ミシュラン三ツ星を誇る大阪の料亭「柏屋」の主人・松尾英明氏がプロデュース。茶懐石を根底にした「和会席」を用意する。一方で、「菊水テロワール」をテーマに、主に近郊の食材を用いた「京の洋食」を提供。和洋いずれの料理も楽しめる宿にした。

庭をコンセプトにした洋食のシグニチャーディッシュ

「庭」をコンセプトにした夜のコース(洋食)は、4種の美しい前菜、魚料理、肉料理に〆の一品とデザートの8品コース。

たとえば初夏なら、じゅんさいと焼きナスのジュレ仕立て、ホワイトアスパラと半熟卵に稀少な吉田牧場のチーズをたっぷりと散らせた前菜、そら豆や翡翠胡瓜、あやめ雪かぶなどを絵画のように盛り付けた一皿などがコースの前半にだされ、甘鯛、和牛イチボのメイン料理へと続く。季節の果物の持ち味をいかしたデザートも含め、食べたかった旬の味や珍しい食材が最高の状態で登場するのだ。

ほどよい分量と巧みな料理に、8品の料理もするっと完食。それぞれの料理との相性を考えたワインのペアリングもすばらしく、食事を終えてすぐ後に、また来たいと思わせられた。

厳選された和牛

洋食総料理長の大筆秀樹さんは「庭を楽しみ料理に満たさせる時間」を過ごしてほしいと言う。

「庭が季節によって変わるように、食材やその組み合わせ、料理法など料理も細部までその時々で変わります。たとえば、この季節なら、じゅんさいが瑞々しく美味しい。ならば和の食材であってもそれを使って時の旨味を表現する。近隣の農家さんが"今はこれが美味しい"と持ってきてくださった野菜や、市場には出回らない極小サイズの卵など、季節感や味わい重視で食材を仕入れ用いる"菊水テロワール"という基準を大切にしています。旬の食材を、疎水や石、風などこの地からイメージを得た料理にすることで、ここでしか味わえない一皿をおだしできます。見た目はもちろんですが、味や香り食感など五感で料理を味わっていただければ嬉しいですね」

5つある客室は、庭を中心に配されたプライベート感のある部屋。庭の中に身を置くような離れタイプやゆったりとしたスイートタイプの部屋などいずれの部屋からも庭が望め、閑静な別邸で寛ぐ気分が味わえる。名所散策や割烹めぐりもいいが、この部屋で静かに1日を過ごしたい。そんな気持ちが沸き上がってくる。

和の朝食。

すっきり気持ちいい目覚めの後に待っているのは、丁寧につくられた和の朝食。菊菜やパプリカなど季節野菜のすり流しをいただいた後、焼き魚や煮物、だし巻など正統派の料理を、時間をかけて味わう。なにより嬉しいのは、ここ南禅寺名物の豆腐をいただけること。ねぎや生姜など薬味とともに、清々しい味わいを堪能する。

大人の休日を体感できる「菊水」。

わずか一泊であっても長旅をしたように心身が癒える「菊水」での滞在は、静かだが侘びすぎない大人の休日を体感できる。

時間がゆるすなら、宿泊してゆったりと流れる「とき」と贅沢な「食」を味わってほしいが、ランチやディナーだけでも楽しめるという。

日常とは違う場に身を置きたくなったら「菊水」を訪ねてほしい。慌ただしい日々をリセットする豊かなひとときが待っている。

南禅寺参道 菊水
住所:京都市左京区南禅寺福地町31
TEL:075-771-4101
https://kyoto-kikusui.com


Text=中井シノブ