今、なぜ多くの経営者がサウナに激ハマりするのか?

「ととのう」「はごろも」「サフレ」……というフレーズ、聞いたことがあるだろうか?この言葉は、サウナ・ラヴァーズ(=サウナー)の間でよく使われるもの。なんでも今、経営者やクリエイターの間でブームになっているらしい。


渋谷の真ん中で催されたサウナ・パーティー

今、サウナに激ハマりする経営者が続出している、というのはなんとなく聞いていたが、それは本当のことだった。しかも相当アツい!

それを実感したのは、本田直之さんからの「4月にTRUNK(HOTEL)でサウナ・パーティーやるから来ない?」というお誘い。正直、サウナには興味はなかったのだが、B級グルメから三ツ星まで食を極める本田さんが催すイベントといえば、いつだってものすごい料理が食べられる。実際、今回のパーティーでは普段予約が取れないお店の料理人が何人も集まって料理を振る舞うという話。これは参加せねば、ということで、いざサウナ・パーティーへ。

午後3時7分(サウナに合わせて)にパーティーはスタート。この日、TRUNK(HOTEL)のテラススイートに集まったのは経営者を中心とした37人(これもサウナに合わせて)。テラスにアウトドアで使うサウナ専用のテントを張り、中にはサウナストーン(バルト海で採掘された火成岩)を置いた薪ストーブを設置。氷をいれた水風呂も用意された。参加者はホテルのバスローブとサンダルを身に纏い、順番にテントサウナに入っていく。

この日集まったのは、経営者やクリエイター、料理人など計37人。みなサウナ―だ。

これは渋谷のど真ん中で、アウトドア・サウナを楽しむというという大人の贅沢な遊びだ。DJによる大音量の音楽が流れるなか、テーブルには豪華な料理が並ぶ。ちなみにこの日の料理は東京の錚々たるレストランの料理人が提供。その面子は、「鮨 はっこく」佐藤博之氏、「そうめん そそそ」安藤成子氏、「ELEZO HOUSE」佐々木 章太氏、「The Great Burger」車田 篤氏、「マルゴットエバッチャーレ 」加山賢太氏 、「ジャンジョルジュ東京」米澤文雄氏、近々店を出す予定の鮨職人・遠藤記史氏、「TIRPSE」大橋直誉氏(ドリンク担当)。いずれも予約がなかなかとれなかったり、行列が必死の超人気店の料理人たちだ。

今回、このパーティーを企画したのは、本田さんに加え、プロサウナ―の秋山大輔さんと松尾 大さん(ととのえ親方)、イベントプロデューサーの小橋賢児さん、TRUNK(HOTEL)を運営する野尻佳孝さんだ。その野尻さんがサウナにハマったのは最近のことだという。

「昨年12月、本田さんや親方らと上海の話題のレストラン『ウルトラヴァイオレット』に行ったとき、ふたりから「サウナは最高」という話をさんざん聞かされて。それまでサウナといえばオッサンのもので、イケてないイメージがあったんですが、杭州のホテルで正しいサウナの入り方を教わり、そこで一気にハマりました。そのあと、ロンドンやアムステルダムに行った時も、ホテルのセレクトは、サウナがあるかないかでしたから。TRUNK(HOTEL)でも、今日みたいにお客様のリクエストがあれば、テラスでテントを張ってサウナをできるようにしたいと思っています」

左から本田直之さん、プロサウナーで”ととのえ親方”こと松尾 大さん、DDホールディングス取締役でゼットン ファウンダーの稲本健一さん。

さまざまなイベントを企画する小橋さんもサウナーのひとり。サウナのよさに目覚めてから、その啓蒙活動に励んでいる。

「仕事柄、世界中の面白いネタ、新しい情報が入ってきます。でも今の時代、情報がオーバー気味で、実際に体験するとそこまで面白くないというか、こんなものかって感じ。でも、4年くらい前かな、サウナに出会って、これはすごいって感動。以来、サウナを人にすすめています。今では多くの経営者やIT系のクリエイターの間でちょっとしたブームになっていますよ。サウナってきちんとした入り方をすると、やめられなくなります。なんていうのか、自分の眠っていた機能が動き出す感じ。それは経営者やクリエイターの人にとって、なくてはならない感覚なんじゃないかな。彼らって、時代の先を読む人たちでしょう。これは面白い、これは本質的だ、と思ったらとことんのめりこむんですよ」

そこで世界中のサウナを巡り、プロサウナーとして活動する秋山さんと松尾さんに正しいサウナの入り方を教わることに。

「サウナ→水風呂→外気浴。これを2、3回繰り返してください。まず、かけ湯してからサウナに入ります。10分くらいが目安ですが、無理は禁物。出たいなと思ってから100数えて出るのがおすすめ。出たら、シャワーで汗を流して水風呂に入ります。実は大切なのはこの水風呂。できるだけ冷たいのが理想です。頭のてっぺんまでざぶんと潜り、水に身を任せて、できれば浮いちゃいましょう。これを浮遊浴といいます。その後耳が少し浸かるくらいまで体を沈め、後頭部を冷やす感じでじっとします。水風呂では手の指先が一番冷たさを感じるので、冷たすぎると感じる時は水面から手を出すと体感温度が上がって楽になります。呼吸や心拍が安定し、いつまでも浸かってられるくらいに体が慣れてきたと感じたら、水風呂から出てください。ちなみにこの時、体全体が膜で覆われたよう感じる状態を、サウナ用語で"はごろも″といいます。で、乾いたタオルではなく、よく絞った濡れたタオルで体の水気をしっかりと拭きとったら、椅子などに腰かけます。できるだけ屋外で外気浴、実はこれがメインディッシュです。休んでいると、体に残った少しの水分が気化し、肌にくっついていた産毛が一本一本、ピンッ、ピンッ!と立ち上がり始め、まるで自分の体を優しく筆で撫でられているような、そんな心地よい感覚を覚えるはずです。乾いたタオルで拭くと水分を取りすぎ、この気化する状態を感じづらいので、ぜひ濡れたタオルで拭きましょう。しばらくすると毛細血管まで血が巡り、頭が真っ白になります。そんな恍惚感というか無になる、とてつもなく気持ちのよい状態に達する瞬間こそがサウナの醍醐味。僕らはそれを“ととのう”と呼んでいます」

薪で火をおこし、ストーブの上に置いた石を熱して水をかける。その蒸気で体を温める。日本の一般的なドライ式サウナより室温が低く、我慢は無用。

そんなトリセツをききながら実際にサウナを体験することに。よく銭湯にあるのとは違い、ロウリュウという、石に水をかけて蒸気で湿度を高めるものなので、暑すぎることはなく我慢の必要もない。おしゃべりをしながら約10分、体を芯から温めたら、サウナから出てシャワーを浴びて水風呂へ。手足の先が痛いくらい冷たいが、親方から、もう少し我慢してと言われ、しばらく浸かっていると、だんだん水の温度に慣れ、冷たいとは感じなくなってきた。そこで水風呂から出て身体を拭き、バスローブを羽織って椅子に腰かける。しばらく目を閉じて、じっとしていると……なんだか体中の力が抜けて、スーパーリラックスした状態に。これはなんとも気持ちいい。もしかしてサウナ―に覚醒したのか!と思って2セット目へ突入。しかし、今回はもっと気持ちよくなろうと欲張りすぎて水風呂に長く浸かりすぎてしまったのか、そこまでの恍惚感は得られなかった。しかし、サウナの魅力が少しわかった気がした。

ととのえ親方こと、松尾さんは言う。

「サウナはフィジカル、メンタル、ソーシャルの三位一体のよさがあります。本場のフィンランドでは、サウナを家族、友人(サフレ!)など、老若男女、みんながおしゃべりしながら気軽に楽しみます。だから僕はこうやってみんなでおいしいものを食べながら、お酒を飲みながらのサウナ・パーティーを提案しているのです」

今回のサウナ・パーティーの主催者、本田さんは確信をもって言っていた。「サウナはライフスタイル。これからもっとくるよ!」と。

TRUNK(HOTEL)のテラススイートでは、お客様のリクエストがあれば、テントサウナを設置することを計画中だ。


サウナ・パーティーを盛り上げた料理人たちの食の饗宴


Text=八木基之(ゲーテWEB編集部)