華やかなレースが開催されるはずの5月。F1モナコGP回顧録【吉田由美の世界のクルマ見聞録㉔】

カーライフエッセイスト・吉田由美は、クルマの最先端を肌で感じ続ける"現場主義者"。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、軒並みイベントや取材が中止になっている今だからこそ、「見て、聞いて、知った」クルマの最新事情とは――。

いろんなスタイルでモナコのF1を堪能

5月、6月といったら絶好のレース観戦の季節。本来であれば、世界の三大レースとよばれる「F1モナコグランプリ」「ル・マン24時間レース」「インディ500マイルレース」が集中し、日本でも5月のGW中に富士スピードウェイにて、国内で最も観客を集めるレース「スーパーGT」が開催されるはずでした。それもこれも、レース観戦にピッタリの季節だからかもしれません。

しかし、コロナ禍には勝てず、インディ500は8月23日に、ル・マンは9月19~20日に延期。そして、華やかなF1の中でも最も人気の高いレース「F1モナコグランプリ」は残念ながら中止に。モナコでのF1開催は1955年に始まりましたが、66年ぶりの開催中止だそうです。街を封鎖して行われる市街地コースなので、調整が難しかったようです。

モナコといえば、F1の中でも歴史と伝統がある最も人気のレース。モナコ公国モンテカルロの街中を封鎖し、公道で開催されるので、レースを見ながらモンテカルロの街並みを楽しめるのが人気の秘密。趣のある街中を猛スピードでF1マシンが駆け抜ける光景を、コース脇にあるスタンド席から見るもよし、コース沿いのマンションやレストラン、ホテルの窓から見るもよし、コース横のハーバーに浮かぶ豪華クルーザーから観戦するもよし。

レース観戦のバリエーションが豊富で、一般の人からセレブまでいろいろなスタイルで愉しめます。ほんと、テレビで見ているだけでもワクワクしますよね。レース開催期間中、クローズされた地域に住んでいる住人には住人用パスが発行され、それがないと自宅に帰ることもできないそう。レースウィークにはお友達を招いたり、中にはこの期間中、自分の部屋をF1観戦で訪れる人に貸し出す人もいるとか。モンテカルロは狭いのでホテルの部屋もこの時期、驚くほど高騰します。そのため一日しか行かなくても一週間単位での貸し出しらしいので、F1開催の一週間で1年分の家賃を稼ぐ人もいるのです。

私はこれまでに3回、F1モナコグランプリ取材に行っていますが、一番最初に行ったのは2003年。スペインでシトロエンの試乗会に行き、その後にモナコまで一人旅をしました。モナコはいつか行きたいと思っていましたが、当時、トヨタ「ウィッシュ」が宇多田ヒカルさんの『COLORS』という曲をバックに、F1のコースでお馴染みのモナコの街を走るテレビCMが私の背中を押してくれました。

モナコから一番近いニース空港まで元F1レーサーの鈴木亜久里さんに迎えに来てもらい、宿泊はF1ジャーナリストの方に教えてもらったニース駅前の激安宿。そこからモナコまで電車で25分。車で行く場合は、早く行ける高速ルート、景色を楽しめる海に近い海沿いルート、元モナコ王妃のグレース・ケリーが事故でお亡くなりになった場所を通る真ん中のルートという3通りがあり、行き帰りの道も記憶に残っています。

しかしこの時はプレスパスの申請が通らず、レースは鈴木亜久里さんのモナコのお宅での観戦でした。コース沿いにある亜久里さんのマンションにお友達たちが集まり、バルコニーから生のF1を体感しつつ、リビングのテレビでレースの詳細などの情報をつかんでいました。その後、F1が走るコースを車で走った時は、めちゃめちゃ興奮しました~!

2度目のモナコF1はその翌年。レースが開催される前の週に行われるヒストリックカーのF1から取材したので10日間ぐらいニースやモナコに滞在。街の観光も楽しみました。この時はちゃんとプレスパスも申請できたので、ピットやパドック、プレスルームを堪能。また、観戦場所も初日はクルーザー、翌日はモナコの有名ホテル、エルミタージュのバルコニー、最終日は確かホンダの関係者しか入れないピット内のエリアで観戦させてもらいました。

そして、3度目は雑誌の取材で訪れた2006年。その年がスポンサード最後になる「マイルドセブン」の「マイルドセブン・ルノーF1チーム」の密着取材でした。ピット、ピット上のブース、チームのガレージ、プレスルームなどですが、観戦したのはスタンド席の最上階にあるVIP用マイルドセブン・スイートルームから。

しかもこの時、密着取材していたマイルドセブン・ルノーF1チームのフェルナンド・アロンソ選手が優勝。これ以上素晴らしい取材はないと感じ、この年を最後にモナコでのF1取材は卒業することに。その後は、海外の他の場所の取材に行くようになったのです。イタリア、ベルギー、中国、トルコ……など、年に一度の海外F1取材は、私の趣味と実益を兼ねていますが、今はそれが海外モーターショー取材になっていますね。

それも今年はどうなることやら……。来年はまたモナコでF1が開催されますように。

そして、今だからこそもう一度思う。モナコF1にまた行きたい、と。


Yumi Yoshida
岩手県生まれ。カーライフ・エッセイスト。自動車評論家(日本自動車ジャーナリスト協会理事)。短大時代からモデルを始め、国産メーカーのセーフティドライビングのインストラクター経て「カーライフ・エッセイスト」に転身。クルマまわりのエトセトラについて独自の視点で自動車雑誌を中心に、テレビ、ラジオ、web、女性誌など広く活動中。3つのブログを展開し、中でも「なんちゃってセレブなカーライフ」は、ピーク時で1日約20万アクセスを誇る。持っている資格は、普通自動車免許、小型船舶1級、国内A級ライセンス、秘書検定、ECO検定、カラーセラピー。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本ボートオブザイヤー選考委員。 現在はYouTubeで「クルマ業界女子部チャンネル」を立ちあげて出演中。 
 

Photograph=池之平昌信