オルタナティヴ・バンドGRAPEVINE ~野村雅夫のラジオな日々vol.24

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな領域で活躍する野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は、日本のロックシーンに確かな存在感を示すGRAPEVINEだ。


現実という名の光

僕がGRAPEVINEを熱心に聴くようになったのは、ラジオDJの仕事を始めてから。2010年のシングル『風の歌』についてインタビューする機会を得た時だ。アメリカ西海岸よりのカラッとしたロック・サウンドで、ギターの音色が抜群にかっこよくて、ビートルズの匂いもそこはかとなくする。カップリング曲『This town』のツインギターソロなんて、正直流行りには乗っていないけれど、たまらなく愛おしい。僕好みだ! 歌詞もわかりやすさに走らず、必ずどこかひねくれている。ますます僕好みだ! それ以来、この10年ほど、何度もイベントやラジオ番組でご一緒しては、このバンドのオルタナティヴっぷりに着目し続けている。こういうバンドが旺盛に活動していることは、日本の音楽シーンの光だと僕は思っている。

今回はニューアルバム『ALL THE LIGHT』をリリースしたばかりのタイミングで、フロントマンの田中和将さんと対話することができた。僕の番組FM802 Ciao Amici!(チャオ・アミーチ)で2月20日(水)に放送したその模様をお楽しみいただきたい。

チャオ〜 GRAPEVINEヴォーカルの田中です。

ーー僕が前に担当していた番組CIao! MUSICA(チャオ・ムジカ)では、もう常連という感じでおつきあいいただいていました。

お世話になりました。

ーー大阪に来るたびに寄っていただいて、新曲のラジオ初オンエアなんかもやらせてもらってました。なかでも懐かしいのは、FM802年末のロックフェスRADIO CRAZYにご出演の際、楽屋エリアのこたつで収録をするという機会がありました。

ありましたね〜 そんなことも!

ーーくるりの岸田繁さんもいて……。

岸田くんがおって、僕は別にラジオに出る予定でもなかったようが覚えがある。僕、あの時、もう酔っぱらってたんじゃないですかね。

ーーそうでしたかね。確かにごきげんではありましたけど。なんなら、番組の収録そっちのけで、アルバムの再現ライブってどうよ、みたいな話をしてました。

してたしてた! 懐かしいですね。

ーー岸田繁さんとは、同じ京都ということもあって、ちょくちょく一緒に飲みに行くこともあるんですけど、この前たまたま飲み屋でGRAPEVINEトークになったんですよ。

へ〜、そうなんや。

ーーGRAPEVINEは長いキャリアの中でも最近の作品がたまらんよねって話をしながら、一緒に酒を飲んでました。

あ、そう! それは嬉しいね。岸田くんがそう言ってくれるのは非常にありがたい。

ーー要約するとですね…… 田中さんの最近の声が好き。亀井さんのメロディーはやっぱり最高だ。そして何より、西川さんは日本のギタリストの中でもトップクラスに好きみたいな話でした。

さすが、よくわかってらっしゃる。ありがとうございます、ほんまに。

ーーバインは20周年だった昨年を経て、今年また動き出します。まずは2月に東名阪を回る対バンツアー「SOMETHING SPECIAL」を回りました。今回は全公演、僕にとってはゆかりの深い中村佳穂ちゃんがお相手。

ゆかり深いらしいですね?

ーー彼女がまだ学生の頃、京都のインディーズレーベルからCDを出していた頃に、前の番組で紹介していたのが、今や「時の人」みたいになっちゃって。

すごいですよ。飛ぶ鳥をなんとやらって感じで。

ーーそれぞれに僕が好きなミュージシャンたちが同じステージを共有するってのは嬉しい限りです。「SOMETHING SPECIAL」は今回が初めてではなくて、たとえば2016年にはSuchmosが相手でした。このバンドも、その後とんでもないことになりました。

これもね、人気がうなぎなんちゃらですよ。

ーーさらには、渡辺シュンスケ。シュンちゃんですよ。Schroeder-Headz(シュローダーヘッズ)がお相手の時もありました。Schroeder-Headzとしても活躍しているし、プレーヤーとしてもあちこちからひっぱりダコじゃないですか。

キーボーディストとしてもね。

ーーということはですよ、GRAPEVINEと対バンをすると……

アゲバンドですよ。

ーーハハハ! アゲバンですか?

そう、我々はアゲバンですよ。

ーーこれからも、この「SOMETHING SPECIAL」という企画は続けていきたいと考えてるんですか?

対バン自体、今挙げていただいたバンド以外ともよくやっているんですね。というのも、僕たちは刺激をいただくので、互いにそうであれば嬉しいなという気持ちはすごく強いですね。だから、今後もやりたいですよ。

ーーGRAPEVINEは、2月6日にニューアルバム『ALL THE LIGHT』をリリースいたしました。おめでとうございます。これが16枚目となりました。

ねえ、16枚ってねえ。嫌ですね。

ーーハハハ! しかし、16枚もアルバムを出していても、まだ新しいことをするんだなってのが、今回の僕の印象です。今僕の手元にある資料に田中さんが寄せているコメントがあって、これがかっこいいなと思ったんですよ。

「聴いた人を幸せにしたいわけでもなければ、勇気づけたいわけでもない。重要なのは、音楽を聴いたすべての人が直面するであろう、或いはしているであろう、現実という名の『光』なのだ」(田中和将アルバムコメント)

はいはい。かっこええ風に言うてありますね。

ーーだいたい今は勇気づけたがりますよ、多くの表現者は。

そうですね。

ーーでも、そうじゃないんだと。これって、クールなようでいて、真摯な音楽との向き合い方じゃないかと思うんですよ。

自分では、そう思ってますし、僕自身がリスナーとして音楽を聴いているうえで、あんまり押し付けがましいものにグッときた覚えがないと言いますか。たとえば、身につまされるものであったり、悲しいものであったり。そんな悲喜こもごもの先に見える光みたいなものにこそグッと僕はきていたので、そういうことを言いたかったんだと思います。

ーー全部で10曲入ってまして、1曲目は『開花』です。まさかアカペラで来るとは思わなかったです。

今回ホッピー神山さんというプロデューサーに入ってもらっていまして……。

ーーちょうどその話を聞きたかったんです。うちのリスナーにもどんな方がご紹介いただけないですか?

ホッピー神山さんは伝説のキーボーディストで、その昔PINKというバンドがあってメンバーだったり、その他にもプレーヤーとしてあちこちに参加されたり、プロデューサーとしても活躍したりと、いろんなことをされてる方です。実を言うと、僕らGRAPEVINEは、ファーストアルバム『退屈の花』で3曲くらいお手伝いしていただいていたんです。

ーーあら! そうでしたか。

キーボードのアレンジだとか、ストリングスの譜面を書いてもらったりだとか。あとは、『Everyman, everywhere』という2004年のミニアルバムでも、タイトルトラックのストリングス・アレンジをしてもらいました。だから、絡みは何度かあったんです。で、ここしばらくはセルフ・プロデュースも多かったので、自分らだけでやるのも飽きてきたというか、空気の入れ替えが必要というか、新しい視点がほしいなと思いまして、誰かにプロデュースを頼みたいという時に、ホッピーさんの名前も挙がりました。あれから僕らもそれなりに経験を積んでますし、今やるとまたどうなるのか。そんな思いがありましたね。この方も相当ぶっとんだ方なので……。

ーーやっぱりホッピーがお好きなんですか?

昔そうだったらしいですよ(笑)

ーーやっぱりそうなんですね? いや、それはおいそれとはスルーできないですよ。だって、「ホッピー」さんなんだもの。好きなんだろうなと思って。それは一応確認しておかないといけない。

そうですよね。まずは引っかかりますもんね。フフ。

ーーハハハ!

確認しておかないと。

ーーそんなホッピー神山さんからのアイデアで、1曲目はアカペラにしようとなったんですか?

そうなんですよ。僕らはここ最近マイペースに活動していまして、「こんなヴィジョンで作品を作りたい」とか「こんな風にしたい」というよりは、「出てきたものをいかに面白くするか」という感じで曲を作ってるんですけど、今回はホッピーさんが入ることによって変化が訪れたわけです。僕らの最近の3、4枚を聴き込んでくれて、今の僕らにどういうことをさせたいかってことを、ある程度イメージして臨んでくれたみたいで、「1曲目はアカペラで始まるのなんてどう? ちょっと書いてきてよ」

ーーハハハ! 書いてきてよっていうリクエストなんですね。へ〜〜。

そうそう。「作ってきてよ」みたいな感じで、「あ、じゃあ」と返事はしたものの、アカペラなんか作ったことないし、どないしょうかなと思いながら、頑張って作ったんですけどね。

ーーこれは尺もそう長くないし、言葉数もそう多くない。それだけ、むしろ印象に残ります。

そもそも、ロックバンドのアルバムの1曲目がアカペラってなかなかないですからね。

ーーだからこそ、『ALL THE LIGHT』にはどんな光があるんだろうと思って再生ボタンを押した瞬間に、いきなり驚かされるという。そっから、2曲目の『Alright』ですよ。最近、バインで時々ホーン・セクションを盛り込むじゃないですか。やっぱいいっすね。

分厚くなりますし。特にこの『Alright』はホッピーさんアレンジのホーンなんですけど、結構えげつないですよね。

ーー頭からドーンって持っていかれます。

面白いですよね。

ーーメロディーも畳み掛けじゃないですか。わりと細かくしてあるし。しかも、また歌詞が田中さんらしい。「Everything’s gonna be alright」的なリリックは古今東西繰り返し歌われていますし、この曲にも「It’s gonna be alright」と出てきます。何かあっても、やがては「It’s gonna be alright」だっていう歌かと思いきや…

ちょっと嫌味ですよね、この曲は。

ーーハハハ!

まあ、でも、最終的にそこも笑い飛ばそうじゃないかという、大人の余裕を出していきたいなという気持ちもこちらとしてはあるわけですよ。

ーー皮肉めいたところを出しながら、かっこよくまとめつつ、3曲目には『雪解け』という違ったテイストのアレンジが流れてきて、メロディーもドラムの亀井さんのペンによるものへと変わります。

3曲目になって、やっとGRAPEVINEらしいものが出てくるかな。

ーーと、こんな風に収録曲に幅と変化をもたせながら、最後には『すべてのありふれた光』にたどり着きます。先ほどの田中さんの言葉にもあった通り、「現実という名の光」に到達するわけです。アルバムはもう何度も聴いていまして、かっこいいです。お別れにかけようと思った曲について、お話をうかがおうかな。『God only knows』という曲がアルバムの中ほどにありますよね。なんすか、このイントロ?

そうですね、これも面白いですよね。

ーーパッと思ったのは、東南アジア、インドネシアのガムランとかケチャとかあるじゃないですか。そういう民族音楽的なテイストが……

はい。エキゾチックな匂いがちょっとしますね。

ーーこれもホッピーさんか。この方はイントロ、つかみがヤバいですね。

ホッピーさんはネタの宝庫で、たくさん持ってらっしゃるんですよ。それもね、音決めに全然迷いがなくて、ポンポン出してきはるんですわ。この曲のイントロには、これ! みたいな。え? 迷いはないの? 選択するとかはないんですか?って。直感でバッと出してくる。

ーーそれが感性なんでしょうね。

さすがやなと。

ーーあと、途中でツェッペリンみたいになるとは思わなかったです。フフ。田中さん、こんなに高音出ましたっけ?

フフ。ジミー・ペイジの真似したがる人は多いですけど、意外と、ロバート・プラントの真似したがる人は少ないんですよ。

ーーそうですね、確かに(笑) さ、今後の予定です。対バンツアー「SOMETHING SPECIAL」を経て、4月からのツアーはアルバムツアーということになりますか?

こちらでは、アルバム全曲がっつりやるんですが、やれるのかな、という気持ちは今のところありますけどね(笑)

ーーやってください!

もちろん、やりたいな、とは思ってます。

ーー楽しみでしょうがないです。それでは、お別れに、その『God only knows』をかけるとしましょう。田中さん、ありがとうございました。

ありがとうございました!

GRAPEVINE TOUR2019 は、4月12日(金)恵比寿LIQUIDROOMからスタートして、6月28日(金)Zepp DiverCityまで、全国で20公演。

詳細はGRAPEVINEのウェブサイトにて
https://www.grapevineonline.jp



野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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