「スラングを覚える」 英語力ゼロ・35歳の私が、ある日いきなりロンドンに移住したら……②

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めて渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第2回!

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Spend a penny/お花を摘んできます

ロンドン到着後、日本人留学コーディネーターにお膳立てしてもらい語学学校へ入学しました。日本人にお世話してもらっていますから、入学までの道のりでは一度も英語を使っていません。これから毎日、日本語が通じないのかと思うと入学前夜は正直、恐怖で眠れませんでした。

そして案の定初日から、イギリスの洗礼をくらいました。授業でイギリス人女性講師が放った一言がこれです。

Spend a penny

半分冗談で言っています。外国人にこの意味がわかるわけはありません。

これは「ちょっとお手洗いに行ってきます」という意味のフレーズです。

日本でいう「お花を摘んできますね」です。ヴィクトリア時代、パブリックトイレ使用時には「1ペニー」払う必要があったため、その名残りなのだそうです。男性トイレは無料だったので、女性だけが使うフレーズです。婉曲的な表現を好むイギリス人の、いかにもイギリス的なフレーズでしょう。それを英語力ゼロ相手にも浴びせてくる、なんという恐ろしい国にきてしまったのかと、震えあがりました。

ちなみに「トイレに行く」の婉曲的な表現はいくつもあり

answer the call of nature

relieve your self

などとも言います。

Rearrange the alphabet/ロンドン流の口説き方

夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したように、趣向を凝らした女性の口説き文句があるのは世界中同じ。ロンドン生まれロンドン育ちのイケメン実業家ジョン(日本語喋れる)の最近の口説き文句がこれ。

I want to rearrange the alphabet to put u and I together

アルフェベットの順番を変えてU(君)とI(僕)を近づけたい

という意味合いです(Youを省略してuとするのはSNSなどを中心に世界的になっています)。これもまた、なんとも婉曲的な、ブリティッシュな表現のひとつです。

Sick/超ヤバい、イケてる

街中で飛び交うストリートランゲージは、本来の単語の意味と真逆な使われ方をする場合が多いようで、わかった振りをしていると後で大変な目にあいます。

He is sick

リスニング能力ゼロなので、現状すべての会話は聞き取れた単語と相手の表情、トピックスの内容から推測しています。そしてこの「he is sick」はシンプルなだけに、英語力ゼロが聞き取れる数少ないフレーズであり、ここから会話の推測は始まります。

「彼、風邪、ひいたのかな」

と思ってずっと会話を聞いていました。でも、そのあとの会話がすべて意味不明になりました。

Sick=カッコいい、イケてる、おもしろい

という褒め言葉でした。

おそらくこれは、日本語でいう「ヤバい」に近いのかと思います。

ちなみに英語力ゼロの時点では、まさか私がこのストリートランゲージを使うと誰も思っていません。ただでさえ通じない会話がますます通じなくなるので、覚えたからといって使ってはいけないフレーズです。

③に続く
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MOMOKO YASUI
ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在仕事が非効率。