【特集グッチ】エイベックス松浦勝人が考える 「なぜ、GUCCIは成功したのか?」

グッチの成功はランウェイ上がすべてではない。創造性、知略、戦略、技術革新、そして意志……。 各界のリーダーによる分析が明かすのは、それが世界最高峰の英知、その集約によって成されたということだ。


非常識でも嫌われても突っ走る、内なる確信が成功への鍵と見た

グッチはトム・フォード時代によく着ましたが、最近また自然と着るようになりました。僕はいつも、立場や年齢などさまざまな制約ギリギリの服に敢えてチャレンジし、それに着負けしないようにしているのですが、それは存在感や体型など、自分のなかで譲れない部分を維持するためです。エイベックスの所属アーティストにも"派手な服に着負けするな"と言い聞かせていますが、そういった意味では、僕にとってグッチは今敢えて着るべき服なのです。

ファッション業界はデザイナーの交代はよくありますが、グッチのようにCEOも代わり、ブランドコンセプトまで根本的に刷新するケースはほとんどない。次の時代への勝負だったのでしょうが、そうした変革を行える企業こそ次世代に残っていくのだと思います。

今回のような大きな改革は、必ず成功するとは限らないけど、少なくとも経営者のなかでは"いける"という確信があったはずです。僕も音楽業界では非常識と言われたこともやってきましたが、それは自分のなかで"こうしたら絶対こうなる"という未来像が見えたうえでのこと。つまり周囲が非常識と言おうとも、僕はそれが次の常識になると確信してやっているのです。

グッチのCEOもきっとそうだったに違いないでしょう。いずれにしろ、3年で大成功という結果を出したわけで、今後は同様にブランディングを抜本的に変えるブランドが現れる可能性もあるはずです。

音楽は嗜好品であり、大嫌いな人もいれば大好きな人もいます。それはエイベックスという会社も同じであり、好きな人と嫌いな人がいますが、僕はそこが大事だと思っています。なぜなら、好きでも嫌いでもない、どっちでもいいものは、言い換えれば世の中にとってどうでもいいものだからです。

音楽とファッションは似て非なるものではありますが、今のグッチの服も強烈な存在感があるゆえに好きな人と嫌いな人が当然いるはずであり、だからこそ現在のような人気を得たのではないでしょうか。

Masato Matsuura
1964年神奈川県生まれ。エイベックス代表取締役会長CEO。’88年にエンタテインメント企業エイベックスを創業。同社の経営に加え、音楽プロデューサーとしても多くのアーティストを手がける。

Text=竹石安宏(シティライツ) Photograph=前田 晃