新聞や雑誌の見出しの省略英語を読み解く方法 ~英語力ゼロの私がロンドンに移住したら⑪

35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めて渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と日本人含め各国人からお叱りを受けつつ、覚えたフレーズの数々。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。「人のEnglishを笑うな」第11回! 

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「わからない」を認める

一向にリスニング力が上がりません。しかも最近、日本のTV視聴を解禁してしまったので(これまで見ないようにしてきました)、ますます耳が英語から遠ざかっていきます。渡英して9ヵ月が経ってもこの状態、自信とやる気がどんどんなくなってきました。。。

英語力ゼロで渡英したため、最初は1フレーズ聞きとれただけでも嬉しく、どんどん自信をつけていけました。語学学校でも初心者コースから上・中級者コースに進み、買い物などでも不自由しなくなってきた頃に「ある程度の会話のやりとりはできる」と勘違いしてしまっていたのです。

しかし実はそのやり取りのほとんどが、会話の流れや表情から、相手が何を言うか「予測」しているだけでした。英語が聞こえていたわけではないのです。特に大人になってからの英語学習だと、英語の知識より先に、社会経験で会話の内容を判断してしまいがちです。

ある日、部屋備え付けの電子レンジが突然炎上、来てもらった修理の人の英語がひと言も聞きとれませんでした。私は機械にも弱いので、会話の流れも一切予測不可、その時にぼんやりとそんなことに気がついたのです。

英語中級者が陥りがちな、「英語がわかった気になる」状態は、すごく危険だと言われています。人とコミュニケーションをとれたけれど、何かあった時の決定的なひと言が聞きとれず、大事に至る、ということです。

初めての海外旅行よりも、数回海外旅行を経験している人の方が、事故や事件に巻き込まれやすい場合もあります。修理工を呼べたからといって、自分は英語が聞こえるようになったわけではない、「本当は全然聞こえていない」ことを認めたうえで、相手とコミュニケーションをとっていかないといけないな、と身にしみて感じました。

まずは犬レベルの英語を目指す

しかしあまりに自信を失うとやっていけないので、最近は「100パーセント聞きとれる英語」を探して自信を回復しようとしています。「今完全に全フレーズ聞こえた! 意味がわかった!」と嬉しくなったのは、「動物や子供に話しかけている人の言葉」でした。

要は「おトイレ行きたいの? どうしてさっき行かなかったの」と小さい子に話している親の英語は、ゆっくり大きい声で、難しい単語も少ない。犬に「ボブ! もう帰るよ!」と声をかけている人の英語も同様です。イギリスでは、公園内でリードを外して、犬を自由に走らせてもいい場所がいくつもあるので、最近はもっぱら公園で犬連れやファミリーの会話に耳をそばだてています。

9ヵ月いてちゃんと聞きとれる英語が犬と子供への言葉のみ。本来自信を失うべき事実ですが、それでも街中でネイティブの英語がちゃんと聞こえると嬉しいもの。何とか英語が犬レベルまで達した、とポジティブになりたいと思っています。

公園では犬が自由に走っています。

ゴシップ新聞の英文が全然わからない

当然ですが、リーディング能力も同様に一向に上がりません。私はまだ英読書量が少ないのか、いまだに「彼は、思った、that節の中のことを」というように、頭の中で主語動詞の順に、日本語に変換して読んでいる状態で、当然読解に時間がかかります。教科書の文章は自分のレベルに合った文章なので、時間をかければ何とか理解できるのですが、調子に乗って雑誌や新聞などを読み始めるとまた絶望します。全体的に何のトピックスが書かれているかは、わかる。でもひとつひとつの表現の意味がわからない。例えばこれ

Top TV presenter to quit after 25 years.

ゴシップ紙の見出しです。何となく、テレビ司会者が辞める? 辞めた? みたいな意味はとれます。しかしいつものように主語、動詞、目的語の順番で日本語に変換していると、「動詞の前にあるこのtoって何?」とイライラしはじめます。 文章を読み進めれば、この記事の真意がわかるはずですが、ひとつわからないとすぐ新聞を捨てたくなるのが、私が英語力いまだゼロの理由です。

to quit =be going to quit の略でした。be going to〜は「(これから)〜する」という意味なので Top TV presenter is going to quit after 25 years.は、「人気テレビ司会者が25年務めた番組を降板する」ということです。

街中で新聞やフリーペーパーが配られています。読み終わったらみんな、公園でピクニックシートのように使っています。

新聞や雑誌では、特に見出しなど、文章をなるべく省略する傾向にあるようです。長年英語は「書き言葉」で習っていますから、つい書かれている英語は全部文法的に正しいものばかりだと思いこんでいました。しかしこのように、実社会の「書き言葉」には教科書を読んでいるだけでは予測できない省略がいくつもあるようです。

わからないところがあるとすぐ、読むのをやめる私の癖を知っている英語教師は「こういう省略を全部理解することは、多分今の君にはできない。だからわからないところがあっても、止めないで全文とにかく読んでくれ。そしたら意味が予測できるから」としつこく言ってくれます。

もちろんおカタい新聞や、小説などではもっと丁寧な文章が使われているはずです。このようにゴシップ紙や雑誌では、文体もカジュアルになる、ということだと思います。いきなり経済新聞を読むのも腰が引けたので、ゴシップ紙なら軽く読めるかも、と思っていたのが間違いでした。まだ「正しい文法」すら100パーセント頭に入っていない状態の私にとっては、崩しを入れてくるゴシップ紙の方が難しい、ということなのです。

ゴシップ紙各種

確かに「東スポ」を読んで日本語を勉強するのは難しいだろうな、と考えれば納得しました。

⑫に続く
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MOMOKO YASUI
ロンドン在住編集・ライター。1983年生まれ。男性ライフスタイル誌、美術誌、映画誌で計13年の編集職を経て2018年渡英。英語のプレスリリースを読むのに膨大な時間がかかって現在、仕事が非効率。

Illustration=Norio