地球にやさしいハイブランドのサステナビリティ【特集やさしい服】

温暖化の影響を実感せざるを得ない現在。気候変動を食いとめ、持続可能=サステナブルな社会を実現すべく、ファッション業界も真摯に取り組んでいる。ファッション業界紙『WWDジャパン』編集部にてその最前線を取材する廣田悠子氏と選んだトピックスからは、私たちの装いの未来が見えてくる。

1.持続可能なうねりを生みだすグローバルイニシアチブ

ファッション協定&ファッション業界気候行動憲章
業界単位の取り組みが大きな効果を発揮するサステナビリティ。ファッション業界全体を突き動かすグローバルなイニシアチブが近年相次いで策定されている。ひとつは国連主導で2018年に発表された「ファッション業界気候行動憲章」。もうひとつがフランスのマクロン大統領の依頼を受け、ケリングのピノー会長兼CEOが主導となり昨夏に発表された「ファッション協定」だ。主導する立場は異なるが、業界全体の意識を高める効果は高い。 
 

2.業界全体をも突き動かす未来を見据える辣腕CEOの信念

ケリング会長兼CEO フランソワ=アンリ・ピノー
ラグジュアリーブランドを数多く擁するケリング・グループは、今や業界のサステナビリティをも牽引する存在。その原動力がフランソワ=アンリ・ピノー会長兼最高経営責任者だ。莫大な予算を投資し、環境負荷を数値化する環境損益計算書(EP&L)の開発や「ファッション協定」の旗振り役など、多くの取り組みを実践。そこには「ラグジュアリーとサステナビリティは同一である」という、強い信念があるのだ。

3.心強い助言者を得た重鎮の動向に注目

LVMHとステラ・マッカートニー
フランスのモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH)は多くの高級ブランドを擁するが、昨夏新たにステラ マッカートニーとの提携を発表。同時にステラ・マッカートニー本人が、同社の会長兼最高経営責任者ベルナール・アルノーのサステナビリティ特別アドバイザーに就任することも告知された。LVMHは1992年にフランス企業ではいち早くサステナビリティ部門を設立し、数々の施策を行ってきた。ラグジュアリーの重鎮の新局面に注目だ。

4.時代を切り拓いてきた先導者の新たな英断

プラダの再生ナイロンプロジェクト「リ・ナイロン」
人気商品を変えることはひとつのリスクだが、現在はむしろ変わらないことこそがリスクであると示したのがプラダだ。昨年6月、代名詞のナイロンアイテムすべてを2021年末までに再生ナイロン製へ切り替えるという、野心的プロジェクト「リ・ナイロン」を発表。海洋ゴミや繊維産業の廃棄物からリサイクルされる、イタリア・アクアフィル社の再生ナイロン「エコニル」へ順次切り替えるという。その新たな英断にエールを送りたい。

5.ダイヤモンドのように透明で美しいモノ作り

時計 ¥2,050,000(ショパール/ショパール ジャパン プレス TEL:03-5524-8922)

ショパールの取り組み
製品が完成するまでの供給先と工程を、原材料まで遡って追跡するトレーサビリティ(追跡可能性)。そしてそのすべてに責任を持つことで、環境負荷や非人道性を減らすエシカル(倫理的)。持続可能な社会に不可欠なこれらを実践しているのがショパールだ。テロや紛争の資金源になる“紛争ダイヤモンド”を使わない仕組みや、“エシカルゴールド”と名づけた人道的に採取された金を100%使用。高級宝飾とサステナビリティの両立を追求する。

6.歴史的転換となる英国の名門の殊勝な決断

バーバリーが売れ残り廃棄を撤廃
バーバリーは2018年9月、ファッションブランドとして初めて、売れ残りの廃棄処分を今後全面的に撤廃することを発表。同時に毛皮類をいっさい使わないことも宣言した。売れ残りの廃棄処分は、多くのブランドが行ってきたいわば“公然の秘密”。だが、バーバリーの決断を契機に、業界内で廃棄処分撤廃の気運が高まったのは、歴史的な転換点といえる。

7.制約が創造性を刺激する!?クールなサステナブル宣言

エンポリオ アルマーニ 2020-21年秋冬 カプセルコレクション「R-EA
多くのブランドがサステナビリティへの取り組みを表明している現在。エンポリオ アルマーニも今年1月に発表された2020-21年秋冬コレクションにて、リサイクル素材や再生素材、オーガニック素材など環境負荷の少ない素材を用いたカプセルコレクション「R-EA」を披露した。作業服から着想を得たブラックを基調とするコレクションは、スポーティかつ都会的で素材の制約を感じさせない完成度。その高いクリエイティビティには脱帽だ。

8.ランウェイとして再利用持続可能なショーの在り方

エルメネジルド ゼニア XXXの2020年春夏コレクションショー
世界中からジャーナリストやバイヤーが航空機で乗りつけ、数分間のショーを観覧する。こうしたコレクションショーに、疑問が投げかけられている現在。エルメネジルド ゼニアXXXの2020年春夏コレクションショーは、持続可能なショーのひとつの在り方を提示した。ミラノ郊外の製鉄所の廃墟を最小限整備し、インダストリアルな会場として再生させたのだ。他にもリサイクルウールを用いるなど、同社の多彩な取り組みに期待したい。

 Yuko Hirota
『WWDジャパン』編集部。2006年『WWDジャパン』を発行するINFASパブリケーションズに入社。海外コレクションのトレンド分析やデザイナーへの取材担当を経て、’18年よりサステナビリティ担当記者として取材・執筆を行う。

Direction=島田 明 Text=竹石安宏(シティライツ)Photograph=隈田一郎 Styling=久保コウヘイ Illustration=三上数馬