ゴール裏から見た川崎フロンターレ。なぜ勝てず、なぜ負けなかったか【岩政大樹の視点】

勝利のほしかったACLグループリーグの1戦を引き分けで終えたJリーグ王者・川崎フロンターレ。3連覇に加え初のアジア王者を目指す「大本命」は今シーズン、絶好調とは言えない状態だ。その理由とは? "岩政先生"の愛称で親しまれる頭脳派サッカー解説者・岩政大樹は蔚山現代戦をどう見たのか? 


川崎フロンターレのすごさは「ロンドの連続」にあり

ACLの各グループリーグも佳境を迎えています。サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズがラウンド16に王手をかける一方、川崎フロンターレと浦和レッズは踏ん張りどころといえるでしょう。

先日、その川崎フロンターレの試合を「ゴール裏」から観ました。私がメルマガとLive配信、そしてイベントなどを行っている『PITCH LEVELラボ』の企画で、20人弱の方に解説をしながらの一戦だったのですが「ゴール裏」での観戦には理由がありました。

一般的に、取材ではピッチサイドから試合を観ますので、「横方向」で試合が動いていきます。今回、それをあえて「ゴール裏」の「縦方向」にしたのは、川崎フロンターレの持つプレー原則がより明確に視認できるだろうと思ったからです。今回は、そんな「ゴール裏」からの視点で、川崎フロンターレ対蔚山現代の試合を振り返ってみたいと思います。

結果は2対2の引き分けに終わりました。

アジアチャンピオンを目指すフロンターレからすると、勝たなければいけない試合でした。勝ち点3で3位という現状でホームゲーム、残り3試合で首位の相手……そこで勝ちきれなかったことは痛恨です。試合の感想として言えば2失点目が痛かった、となるでしょう。それでも、2位の上海上港とシドニーFCが引き分けたため、自力突破の可能性が残されました。まだチャンスはあります。

一方で、「ゴール裏」の視点で見ると、川崎フロンターレが作り上げてきた、いい面も見られていました。

フロンターレのすごさは、サッカーの原則が徹底して共通化されていることにあります。特に攻撃においては、4対2の場面をつくる「ロンドの連続」が秀逸。昨シーズンよく見られたシーンは、例えばDFの奈良選手から谷口選手へとボールが出た場合、ボランチの大島選手や守田選手といったボランチが、ボールに寄っていくのではなく開いてトライアングルを形成する。常に相手を見て、攻撃ができていて、その判断のスピードがずば抜けて早いわけです。

その点で、今回の試合も「その形」ができているシーンが見られました。加えて、小林悠選手の見事なゴールに代表されるような、一流の技術と質が散見され結果的に2点を取ることができたと言えます。

ただ、一方で勝ちきれなかった部分というのは、選手の入れ替えなどもあり、サイドの使い方がチームとして定まっていないことに理由があることもみて取れました。先に書いたトライアングルの基点をサイドに作ることが多かったこの試合、トライアングルまではできていても、その先で有効な手を打てないのは、新しいメンバーが加わったことなど「組み合わせ」による完成度の問題と言えるでしょう。それは、昨シーズンまでの中心メンバーであり、欠かせない存在であった中村憲剛選手、家長選手、大島選手といった面々が輝けていない理由と裏表に見えます。もちろん、(昨シーズンほど輝けないのは)コンディションなどの問題もあるとは思いますが、それでも個々では大きくパフォーマンスを落としているようには見えませんから、メンバーの「組み合わせ」が影響していると言えるでしょう。

特にこの試合、蔚山現代は中を締めてきたため、フロンターレはサイドで起点を作らざるを得ず、そこで有効な手を打てないために、中を空けられない悪循環に陥っていました。蔚山現代からすれば、サイドに追いやることをファーストチョイスにしていればいい、と割り切れていたと思います。

どうしても昨シーズンとの比較をしてしまいますが、好調時のフロンターレというのはサイドが有効であるがゆえに、中のスペースが空き、中も外もケアしなければならない――相手はお手上げといった状況を作り上げていましたから。

では今後のフロンターレはここからどうチームを構築していくのか。

もちろん、昨シーズンのようないい形に近づけたいという思いはあるでしょう。細かく繋いでいき、ロンドの連続を作りながら得点力を高める。そのためには、サイドの修正または組み合わせに改善が必要なことは明白です。

一方で、シンプルに選手のポテンシャルを生かすという方法もあるでしょう。先にも書いた通り、小林選手のシュートはとても高い質を誇っており、ほかにも知念、レアンドロ・ダミアンといった違いを生み出せる選手が前線に揃っています。そこで、彼らにボールを渡す回数を増やすのも、チームが勝っていく上では手段の一つとなり得ます。ただし、その場合には、全体的に大味な展開になってしまうというジレンマを抱えることになりますが……。

2連覇を果たしたことで、国内でも川崎包囲網が敷かれているなかで、どのようなチームになっていくのか、楽しみであり、また「ゴール裏」から見てみたいと思わせる一戦でした。

DAIKI IWAMASA
1982年山口県生まれ。センターバック。鹿島アントラーズのJリーグ3連覇に貢献。2018年、現役引退。J1通算290試合出場35得点、J2通算82試合で10得点。日本代表国際Aマッチ8試合出場。著書『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』は「サッカー本大賞」を受賞。
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構成=ゲーテWEB編集部