世界一リッチな街に住む女たちの苦悩 ウェンズデー・マーティン『パークアヴェニューの妻たち』


世界一リッチなエリアで独自の進化を遂げた女たちの苦悩

『パークアヴェニューの妻たち』 ウェンズデー・マーティン 著 佐竹史子 訳 講談社 ¥1,600

アッパーイーストサイドの大金持ちの主婦たちの生態をレポートした本書。東京在住のオジサンである私がそんなこと知る必要がないかもしれないけれど、今年に入って世の中からかなり遅れてドラマ『ゴシップガール』に夢中になった身にとって、舞台であるアッパーイーストサイドはニューヨーク中で、いや世界中でもっともリッチでオシャレな人たちが闊歩(かっぽ)する、憧れのエリアだったりする。恥ずかしながら。

いったい、どんだけ素敵な暮らしをしているんだ? という覗(のぞ)き見趣味で読み始めたものの、私の期待はあっさりとはっきりと裏切られた。

確かに桁外れな資産を持つ者だけが住人として認められるアッパーイーストサイドでは、夜毎華やかなパーティが繰り広げられ、シャンパンが水のように消費されている。リムジンは単なる生活必需品で、自家用ヘリやジェット機だって珍しいものではない。

しかしその暮らしを謳歌しているはずの主婦たちが少しも楽しそうではないのだ。エルメスのバーキンをTPOによって使い分け、バカンスには家族揃って別荘に出かけ(子守りつき)、美容と健康に年間1000万円も費やしているにもかかわらず。彼女たちの多くは抗不安薬をアルコールで流し込まなくてはならないような精神状態だという。

素敵に暮らしたい。子供にいい教育を受けさせたい。いつまでもキレイでいたい。そんな先進国の主婦たちにとって当たり前の願望も、アッパーイーストサイドで他の女たちに馬鹿にされないレベルの、という但し書きがつくと、もはや何かの修行とでもいうべき、困難と苦痛が伴うのだ。

なんだか人類の洗練とか進化とかの成れの果てを見てしまったような気分。