「ブルガリ ホテル 上海」に時代が求めるホテルの源泉を探る

世界中のアート、ファッション、経済が集まる、熱気に満ちた都市・上海。そんな街をさらに魅惑的にする「ブルガリ ホテル 上海」が、2018年6月にオープンした。ブルガリといえば、19世紀にローマに創業して以来、世界中のセレブを虜にしてきたジュエラー。類を見ないそのリュクスなスピリッツを体現したブルガリ ホテルズ & リゾーツが、今、世界中にその遺伝子を広げようとしている。その勢いの理由を知るべく、ブルガリ ホテル 上海を訪ねた。


歴史あるジュエラーが展開する真のラグジュアリー

洋館の3階に位置するチャイニーズレストラン。壁にはジュエリーの原画が飾られ、個室には、それぞれ宝石の名前がつけられている。

ブルガリ ホテル 上海は蘇州河の岸辺の、アイコニックな外灘(バンド)や浦東(プートン)港を見下ろすヘリテージエリアに建設された。そこは、かつて栄華を誇った特別な土地であり、1884年にローマのシスティーナ通りに創業した、ブルガリらしい選択といえる。なぜなら、土地の持つ力は、何ものにも代えがたい資産だから。2022年開業予定の東京・八重洲など、今後展開するホテルについても同じ考え方が貫かれていくはずだ。

48階建ての壮麗なタワーの向かい側には1913年に建てられた上海商工会議所を修復した洋館が対峙し、グループ内でも初めての試みとなる中国料理のダイニングが置かれている。

ホテルはエントランスを含む3階までのフロアと上部9フロアに位置。タワーの下層部はブルガリ レジデンス48が占有する。ブルガリというと、どんなにきらびやかなホテルだろうと思うかもしれないが、一歩館内へ入ると、テーマカラーともいうべきチョコレートブラウンを基調にしたインテリアに落ち着く。ロビーラウンジというよりも、邸宅のリビングルームに迎え入れられたようだ。館内の設計、インテリアは、これまでのブルガリ ホテルズ & リゾーツ同様、すべてアントニオ・チッテリオ・パトリシア・ヴィールが手掛けている。

華やぎのあるロビーフロア。壁面にはブルガリのジュエリーをまとった女優のポートレートが。半世紀も前のものとは思えないほどスタイリッシュ。

ゲストルームは上部8フロアに82室。19室のスイートルームを含め、平均60㎡以上と、上海屈指の広さを誇る。洗練の中にも、住居のような温かみと落ち着きのあるデザインが魅力だ。B&B、マクサルト、フロスなど、イタリアを代表する名家具ブランドのオリジナルがしっくりとなじみ、コンテンポラリーななかに漂う品格を感じさせる。

壮麗な洋館の1、2階は500人規模のパーティやイベントを開くことのできるボールルーム、3階はウィスキーバー、そして香港からシェフを招聘し、伝統的な広東料理にモダンなエッセンスを加えて供するチャイニーズダイニングが広がる。ブルガリオリジナルの食器も典雅で、エレガントなサービスの中での食事は、まさに1930年代の上海の栄華が思い起こされる。これまでのイタリア料理主義ではなく、その土地に根づく料理に力を注いだこちらは、今後さまざまな国にホテルを展開していく上での試金石となるであろう。モスクワ、フランス、日本でのレストランに期待が高まる。

上海のアイコニックなエリアを見下ろすゲストルーム。コンテンポラリーな家具のデザインと大都市の景観が見事にマッチ。

ブルガリ ホテルが目指すホスピタリティとは?

ブルガリ ホテルのステイを満喫したあとに、ジェネラルマネージャーにインタビューする機会に恵まれた。世界を制する勢いのブルガリ ホテルズ & リゾーツが目指すホテル像とはどんなものなのであろうか?

「一般的なホテルとの違いは、客室が少ないことでしょう。上海というメガシティにあってわずか82室。それは、ゲスト一人ひとりを知ることができる数なのです。つまり、intimateでprivateなサービスを実現することが可能な規模だということ。それがホテル全体の空気感となり、大都会でありながら、館内に入れば家に帰ったように落ち着き、寛ぐことができる。東京も同じくらいの客室数を予定しています。

ラグジュアリーをどのように体感させるか。それはまず、設計やデザインに由来するものが大きいですね。19世紀以来のブルガリの伝統とコンテンポラリーが共存するデザイン、そしてイタリアのクラフトマンシップが生きた家具や照明が、ブルガリのゆるぎない世界観を実現しています。しかし、何よりもジュエラーを出発点とする伝統が支える、対個人の、オートクチュールな空間ともてなしが大切と考えています」

本館のエントランスと洋館の間にはめ込まれた、重厚なブルガリのシンボルマーク。比類なきラグジュアリーを表現している。

上海スタイルの朝食のメインディッシュは、たくさんの薬味がついたお粥だ。そのうちの一つの中国の漬物(ガンランカイ)がとても美味しく、これはどこで買えるのかとスタッフに聞いたところ、気に入ってもらえてすごく嬉しいと、ジプロックのコンテナに入れて持たせてくれた。そのことをGMに話すと、「それこそが、ゲスト一人一人の体験を大切にする“bespoke”なサービスであり、目指すものなのです」と喜んでくれた。

パリ、モスクワ、そして東京、どんなブルガリ ホテルが展開されていくのか、楽しみでならない。


Text=小松宏子