ファッショニスタ小木"POGGY"基史が仕掛ける、新しいスナックの形【インタビュー】

2G TOKYOファッションディレクターとして、そして、Instagramフォロワー14万人超えの"アイコン"として、国内外のファッションシーンに多大な影響を与える小木"Poggy"基史。キュレーターとしても多岐にわたるジャンルで活躍してきたが、次なる一手として仕掛けたのは日本を代表するエンターテインメント集団、LDHと組んだスナックだった。1970年代の名作映画『トラック野郎』にオマージュを捧げた「スナック野郎"POGGY"」を都内某所にオープン。店内に本物のデコトラを置いた"唯一無二"のスナックには、日本を代表するファッショニスタとしての哲学が込められていた。本人への独占インタビューをお届けする。

『トラック野郎』の時代にしか出せない人間味がある感じを出したかった  

――まずは、基本的なことからお伺いしますが、なぜスナックをプロデュースをすることになったのですか?

「去年、LDHのHIROさんとVERBALさんから突然電話がかかってきて、“Poggyさん、スナックやりませんか?”って言われたんです。僕、最初ちょっとびっくりしたんですけど、まあVERBALさんほどではないんですけど、海外のゲストが東京に来た時におもてなしをすることが多くて、ちょっと面白いかもと……。海外の方って東京の新しいスポットも好きですし、ディープ東京っていうか、ちょっと場末感があるようなところを求めていたりする。これまでも、VERBALさんと場末スポットを互いに紹介し合うってのを、実は陰でやってたんですよ。そういうのもあって、海外の人が来た時に、ちょっとクスっと笑えるようなところをLDHさんとご一緒できたらいいなって思って。本当は桜の咲く時期にオープン予定だったんですけど、ちょっとこういう社会的な情勢もあって遅れちゃったんです」

――そのスナックのコンセプトが、なぜ『トラック野郎』だったのでしょうか?

「数年前に『THE PARK・ING GINZA』で、デコトラを使ったポップアップショップをやらせてもらったんですよ。その時は、ただただ面白いなと思って軽トラのデコトラを入れさせてもらったんですけど、それがキッカケでいろいろ調べていくうちに、すごい面白い日本のカルチャーだなって思ってですね。やっぱりデコトラに乗っている人って、他の人と同じトラックに乗りたくないんで、何千万円もかけてカスタムするんですよ。自分も洋服に携わっている理由として、やっぱり人と同じ格好をしたくないから、普通の人からしたらバカみたいな金額を使ってファッションに全力を費やしてきた。そういうところが共感を持てるんです。あと、僕自身、『トラック野郎』の映画がすごく好きで、なんかあの時代にしか出せない、人間味がある感じを出したかったんです。一応、裏のコンセプトとしては、僕より10歳くらい上の人が、小学生の時にお父さんに連れて行ってもらって観た映画『トラック野郎』の衝撃が忘れられずに、30歳の時に脱サラしてトラックを買ってカスタムして、それを見ながら飲めるお店をオープンさせたみたいな……」

デコトラの運転席に座って、お酒を飲むこともできる。

――本物のデコトラを店の中に入れてしまったのは、Poggyさんのこだわりですか? やるなら徹底的にやろうっていう。

「やっぱりLDHさんとご一緒させてもらうのであれば、エンターテイメント性というか、ちょっと笑っちゃったり、“えっ!”みたいなところって大切だなって思ったんです。バカげた要素みたいのを入れたくて」

――スナックの魅力って、どこにあると思いますか?

「ファミリー感みたいのもそうですし、あとはこういうご時世っていうのもあると思うんですけど、スイッチをオフできる場所が意外とないので、そこは心がけました。そういうところが自分も好きなので」

――今まさに、店内にはチェッカーズがかかっていますが、音楽にもこだわっているのですか?

「ここはなんか80年代、90年代くらいの、自分たちが聴いてキュッとなるような音楽がかかっていますね。このチェッカーズもそうですが、基本的には、ママが好きな曲をかけていますね。僕がセレクトすると、それこそ、最近日本の和モノのレコードが海外でも流行ったりしているんですけど、逆にそういうのをかけたくなっちゃう。でも上には上がいますし、自分たちはあんまりマニアックになりすぎてもだめだと思うので……」

――お客さんのターゲット的には、どういう人に来てほしいですか?

「そうですね。お客さんは、僕みたいな40代が中心ですが、若い人も結構多いんですよね。20代とか。そういう若い世代とおじさんが交流できる場所になればなって」

――デコトラのほかに、こだわりポイントはありますか?

「懐かしい雰囲気を出すことにはこだわっています。店内で物品の販売も行っていて、これは大阪に“十四才”っていう古着屋があって、そこから委託で預かっています。そこのセレクトがすごい好きで。この、懐かしい感じが。あとは、料理も少しこだわっていて、子供の頃、地元の北海道で食べていた“ホンコンやきそば”を出したりとか(笑)」

名物のホンコンやきそば

――スナックはサービス業であり、今回はLDHさんと組んでエンタメの要素もあると思いますが、本業のファッションについては、今はどのような捉え方をされていますか?

「どの業界でもそうだと思うのですが、ファッションもやっぱりコミュニケーションが大切だと思います。クリエイティブとコミュニケーションって、ちょっと違う感じで捉えられると思うんです。例えば、僕の友人でボルサリーノが使っている工場で帽子を作っている人がいて、“こういうデザインを入れられないか?”って言うと、はじめは“ボルサリーノはそういうことはやらないからできない”って言われるんですけど、何回も通って飲みに行ったりを繰り返すと、“じゃあちょっとやってみる”って話になるんです。だから、コミュニケーションがクリエイティブだったり、デザインに繋がっている」

――withコロナ、afterコロナの時代に入り、なにか考え方は変わりましたか?

「確かに、以前のように人と会えなかったり、コミュニケーションが必然的に減ってきているのは事実です。ただ、自分たちって、“面白い人たちと繋がったら、何か面白いものが生まれるんじゃないか”っていうのが、仕事。逆にこういう難しい時こそ、以前と方法は違うけど、面白い人に会う努力をして、次のパッションの可能性を高めていく っていうのは、ちゃんとやりたいことなんです。元気のないファッション業界を次に盛り上げるための準備をしないといけない。若い人はファッションに興味がないって言われているけど、興味を持つ入り口をなんとか作りたい。このままじゃ、ファッションがやばいと思って動いてる一人なので」


スナック野郎 POGGY
住所:非公開
TEL:非公開
営業時間:非公開
※紹介制

小木"POGGY"基史
1976年北海道札幌市生まれ。ファッション・キュレーター。'97年からユナイテッドアローズに在籍し、Liquor,Woman&TearsやUNITED ARROWS & SONSを立ち上げる。2018年に独立し、自身の会社を設立。'15年、'16年、'19年とHYPEBEASTが選ぶ100人「HB100」に選出される。現在は渋谷PARCO内に昨年オープンした、スタジオ2Gのファッションディレクターを務めている。

Text=ゲーテWEB編集部 Photograph=鈴木規仁