MONDO GROSSO大沢伸一との再会 ~野村雅夫のラジオな日々 vol.4

現在、大阪のFM802を中心に、ラジオDJや翻訳家などさまざまな顔を持つ野村雅夫さん。この連載は、野村さんのラジオというメディアでDJをすることの醍醐味や、ラジオで出会ったアーティストとのエピソードを披露してもらう。今回は『ラビリンス』で歌とダンスに女優の満島ひかり起用し、話題を集めたMONDO GROSSOをフィーチャー。大沢伸一さんに新作『Attune / Detune』について話を聞いた。

Ciao! MUSICA(チャオ・ムジカ)からCiao Amici!(チャオ・アミーチ)へ

ラジオで喋るようになって、ちょうど10年。このタイミングでMONDO GROSSO大沢伸一氏に再会できたのは、僕にとって大きな出来事だった。

大阪FM802は4月に久し振りの大きな番組改編を行い、金曜正午から18時まで放送していた僕の番組Ciao! MUSICA(チャオ・ムジカ)は終了。今度は月曜から木曜、17時から19時までのCiao Amici!(チャオ・アミーチ)を担当することになった。

週の終わりから、1日の終わりへ。生活密着型の習慣的なメディアであるラジオのリスナーからすれば、僕が平日夕方に登場することに違和感が拭えないようだが(そういうメッセージがわんさと届いた)、不思議な気分を味わっているのは当の僕だって同じだ。

もう緊張することなんてないと思っていたのだが、冷静に考えればそんな訳もなく、5年ぶりにホームグラウンドが変わるとあってか、初回の放送は自分でも驚くほどガチガチだった。

Ciao Amici!のアミーチとは、イタリア語で友達のこと。「やあ、みんな」と気さくに話しかける時に使う言葉なのだが、FM802の放送はDJの一人喋りが基本。だからこそ、「アミーチ100人できるかな」の発想で、誰かの声を毎日聞きたい。

リスナーは僕の声を聞いてくれているけれど、僕も誰かの声を聞きたい。そんなわがままに対応してくれたスタッフは、1週目の4日間、新番組スタートにあたってのお祝い肉声メッセージをたくさんもらってきてくれた。

大沢伸一氏との再会

back number、Dream Ami、三浦大知、家入レオ、そして木村カエラ。それぞれに僕とのつながりや番組への期待を語ってくれたのは小躍りするほど嬉しかったが、一日も早く誰かにスタジオへ来てほしい。そんななかお越しいただいたのが、MONDO GROSSO大沢伸一さんだったというわけだ。

1991年に京都で組んだバンドとして始まり、'95年には大沢伸一ソロ・プロジェクトとなったMONDO GROSSO。birdをフィーチャーして2000年に一世を風靡した『LIFE』など、僕も何度もラジオでオンエアしてきた。

ただ、2003年にはこのプロジェクトとしての活動を休止していたので、大沢さんのメディア出演は少なくなり、僕としてはお会いしたくてもなかなかかなわずにいた。

状況が一変したのは昨年。全曲ボーカル入り、しかも全曲日本語詞という14年ぶりのアルバム『何度でも新しく生まれる』をリリースしたのだ。それを機に、僕はまさに念願の邂逅を果たすことができたのだった。

そして、3月、前回は14年も間隔が空いていたにも関わらず、たった9ヶ月のスパンで『Attune / Detune』というアルバムを発表し、光栄なことに新番組Ciao Amici!初のゲストとしてまたお迎えすることになった。

実は僕は大沢さんと同郷で、滋賀県大津市出身。しかも、MONDO GROSSOはイタリア語。昔から勝手に親近感を覚えて憧れていたと開口一番に伝えると、「シンパシーというわけですね」と、BiSHのアイナ・ジ・エンドを招いた新曲『偽りのシンパシー』になぞらえて粋な回答をしてくれた。そんな僕の「本物のシンパシー」表明が功を奏したのか、大沢さんとの会話はどんどん弾んでいった。

今でこそ、ひとりで活動しながらも、ソロ・プロジェクトという形式で名前を付けて活動するミュージシャンは珍しくないが、彼の場合は大沢伸一名義での活動もDJだったりプロデュースだったりCM音楽の制作だったりで行っている。その住み分けについてはどうなっているのかを聞いてみた。

「もともとはバンドだったという経緯もあるんですが、もっと紐解くと、本当はバンドを組むつもりもなくて、セッション的に色んなメンバーとプレイしていたのがMONDO GROSSOでした。それが90年代に上京してデビューするタイミングで、見え方をバンドっぽくするということがあり、時代によって見え方も語られ方も変化していったんですが、基本的にMONDO GROSSOというのは僕と誰かがコラボレーションする場であって、バンドではないんです。対して大沢伸一ソロ名義の場合には、僕一人で何かをクリエイトしていく。必要であればボーカリストを迎えることもありますが、コラボレーションというよりも僕の音楽に乗っかってもらうということになります」

MONDO GROSSOは「大きな世界」と紹介されることが多いのだが、ニュアンスとしては、ただ大きいというよりも、もっとゴツい「巨大な世界」という意味が正しい。そこに大沢伸一が才能に恵まれた表現者を巻き込んで共同作業をするのがMONDO GROSSOという認識で良いのかもしれない。僕がそうまとめると…

「じゃ、そうします」

軽い! ただ、この軽やかさがとても大事なのかもしれない。そう思わせる方向に話が転がった。

前作『何度でも新しく生まれる』は、昨年僕の番組にも登場してくれて大いに盛り上がった満島ひかりを始めとして、乃木坂46齋藤飛鳥、おなじみのUAやbird、さらには無名の主婦までをもボーカリストに招いて話題を振りまいたのだが、実は大沢氏はキャスティングを主導してはいない。

「MONDO GROSSOに関わっているスタッフのチームワークです。スタッフというよりはメンバーに近い。そういう人たちが、この曲は誰を呼ぼうかとか、ビデオはこうしようとか、それぞれの想いを提示してくれるんです。ちょっと違う言い方をすると、僕は音楽を作っているだけですよね」

え? 本当は口を出したいのに?

「まあ、でも、いいかな。やってもらっていて楽だし、そっちの方がいいです。『ラビリンス』の映像も他人事ですもの。すごい、これはすごいって」

今回のアルバムタイトルは耳慣れない英単語かもしれない。『Attune / Detune』。その意味を聞いてみた。

「Attuneは『調律、調整』で、Detuneは「ずらす」ということなんですが、大きな意味で、『調整をずらすということも調整のひとつ』なんで、できあがった前作を微調整したり再調整をしたりしながら、新しいものを構築するという意味を込めました」

今作に収録された『ラビリンス』を聴けば、この意図はストンと腑に落ちるはずだ。インストゥルメンタルになっているし、ピアノと弦楽器で大胆に再構築された繊細なアレンジが楽しめる。これぞ、『何度でも新しく生まれる』し、「調整をずらす」ことを体現した1曲だと言えるだろう。

大橋トリオ、BiSHアイナ・ジ・エンド、ACO、やくしまるえつこなどなど、今回もボーカルのキャスティングを大沢氏は主導していないという。しかし、曲を作りながら、こういう声の人に歌ってもらいたいなというイメージはないのだろうか?

「前はあったんです。それって、自分の頭に描いたものを再現するということでしょ? それは今までやってきたことなんですが、前回からは自分の想像し得ないものを生み出したいという欲求のもとから、あまり選ばないことにしたんです。誰かの提案を受けた結果、僕のビジョンを大きく離れて面白いものになったとしたら、それは成功ですよね。そうじゃなかったら、またそこで考えればいい。失敗するリスクもあるんですが、好きでこのプロジェクトに関わっているメンバーが提案して、そんなに間違ったことにはならないと信じているので。下手したら、メンバーには僕より愛情を持ってくれている側面もあるわけですから」

話はまだまだ続き、新生MONDO GROSSOのリズムの多様化、そしてMVでまさかの全編滋賀県ロケをした『TURN IT UP』について郷土愛混じりに盛り上がったのだが、新番組を始めたばかりの僕にとっては、チームを信頼して自分の想像を上回る成果を目指す姿勢に感銘を受けた。

FM802は確かに一人喋りだが、たとえば僕のCiao Amici!は、僕の他に10人ほどのスタッフが直接的に関わってくれている。そして、出演してくれるゲストと、何より大勢のリスナーが参加してくれる。Ciao Amici! やあ、みんな。僕もラジオに大勢が集えるMONDO GROSSO、「巨大な場」を生み出したい。そう思わせてくれた大沢伸一さんを番組初のゲストに迎えることができて、本当に良かった。

大沢伸一 Official Website

FM802 Ciao Amici!(Mon-Thu. 17:00-19:00)番組Website  

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野村雅夫
野村雅夫
ラジオDJ/翻訳家。1978年、イタリア生まれ、京都在住。大人のためのミュージック・ステーションとして人気を博すFM COCOLOで、モーニングショーCIAO 765(mon-thurs. 6:00-11:00)を担当するほか、イタリア文化を紹介する京都ドーナッツクラブの代表を務め、映画や小説の翻訳を行う。訳書や映画評、エッセイなど多数。
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