前代未聞の「プロ野球×地域創生」物語 喜瀬雅則『牛を飼う球団』 奇策を連発して過疎地にプロ野球を根づかせた男

なりふり構わずに努力する姿こそ究極のスマートなのだ。スカッとした読後感とともに、そんな青臭いことを思いださせてくれた良書である。

『牛を飼う球団』 喜瀬雅則 著 小学館 ¥1,400

四国にプロ野球独立リーグ4チームができたのは2005年。プロ野球を名乗っているが、実際はNPB12球団には入れない(あるいはいられなくなった)選手たちが、野球を諦められずに最後のチャンスを求める場所である。チーム予算は12球団の100分の1程度で、当然台所事情は厳しい。なかでも過疎と高齢化が進み、県民所得も下から2位、3位あたりという高知県の「高知ファイティングドッグス」は、メーンスポンサーも見つからず、他県に移転か? という危機にさらされていた。

そんな時、球団オーナーに名乗りを挙げたのは地元出身の北古味鈴太郎。当時まだ30代ながら不動産業で成功を収めていた北古味は、私財をなげうつ覚悟で球団再建に乗り出す。

北古味が目指したのは真の意味で地元に密着した球団を作ること。そのため敢(あ)えて高知市中心部ではなく山間部の過疎地域にホームを作り、選手には練習後に畑仕事を課し、チームのマスコットとして子牛を飼い、なんとその子牛を食肉として販売するのである。それらは単なる話題作りではなく、野球チームが地元に貢献できることは全方位的に行うという姿勢の表れだ。

結果、球団は黒字化に成功。課題はまだ残るものの、現在も地元でファンを増やし続けているという。

北古味には洗練された経営哲学はひとつもない。あるのは自分が何とかしなくてはという責任感と、逆境すら楽しむことができるという信念だ。この泥だらけの小さな革命から、私たちが学ぶものはかなり大きい。